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⑷『或る一つの、部屋』
⑷『或る一つの、部屋』
㈠
過去を顧みない我々は、過去から復讐を受けるかもしれない。例えば俺は、部屋の乱雑の中に、忘れてしまったものから、怨念を持たれているかもしれない。そっと、部屋に入り、その本質を掴まえた時に、本質は成仏するだろうか。依然として、部屋はその暗質を保っている。
㈡
この小説だって、パソコンの中に置き去りにされて、発見されない状態で、俺が死んだら、誰が書いたのか、所在不明になるとしたら、俺は一刻の猶予もなく、世に出なければならない。しかし、方法が分からないんだ、或る一つの、部屋に埋もれているのは、俺自身かもいしれない。
㈢
夜に電灯をつけて、部屋を見ると、昼の光で部屋を見るのとでは、どこか異なる気がする。或る一つの、部屋よ、俺を解き放ってくれと、言おうとも、俺は社会の底辺で、部屋の価値を知っているから、宝物の本質を、失いたくないのだ。