4/28 佐野 美月は天文部員?
「嫌われたことしたかなぁ...」
「え、なに?」
ボソッと呟いた言葉に幼馴染の澪が反応する。
「なんでもない。」
佐野さんへの好意を人に話したことはなく、幼馴染だとしても教えるわけにはいかない。
僕の秘密は僕だけのものにしておきたいから。
澪とは家が近かったこともあり、昔から仲がいい。本名は鈴峰 澪。きれいな名前だ。
澪も久野里学園に小学生の時から通っていることもあるし、僕の秘密の一つや二つを分かっていそうだから怖いな。
今日で、四月は終わる。結局、佐野さんと電話できていないままだ。LINEの返信もそっけないから不安が募っていく。
もういっそのこと佐野さんに話しかけてみようか。人が少ない放課後がいいかな。
嫌われていなければいいけど。
放課後になって、佐野さんの姿を探す。見当たらないな。帰ったのかもしれない。
はぁ...僕はだめだな。行動しようとしても機会を逃してしまう。
今まで彼女がいなかったのも納得がいく。
「結城、部活に行こう。」
イケメンが来た。同じ部活に入っている数少ない同級生だ。
イケメンこと、高崎 斐は面倒見がいいから、こうやって毎日のように僕のところに来る。ありがたいな。
「やっぴ~」
「こんにちは」
部室の扉を開けるといつも通り先輩が挨拶してくれる。東条 かなめ先輩と橘 一華先輩だ。
かなめ先輩は明るくて、一華先輩は落ち着いた雰囲気という異色コンビなので、一緒にいて楽しい。
僕たちは天文部に入っていて、部員は僕と斐を含めて五人。去年作られた部活のようで、一年生が三人、二年生が二人という構成だ。
僕と斐は最近この部活に入ったばかりなのだが、もう一人の一年生が誰だか分からない。
先輩たちに聞いても、まだ一回挨拶に来ただけで名前までは覚えていないようだった。
顧問がなかなか来てくれないので、顧問にも聞けないし...
顧問がいる職員室に行こうかと話していると、扉が開く音がした。
誰だろう、と思いながら扉のほうを向くと顧問が立っていた。
「あ、せんせ、、、??」
言葉に詰まったのは、顧問の後ろに佐野さんが立っていたからだ。
え?佐野さんがこの部に?
「佐野だ。」
それだけ言って顧問は帰っていった。
佐野さんは入口付近で立ち止まっていたが、かなめ先輩が口を開いた。
「あ、この子だ!」
「もう一人の一年生」は、佐野さんだった。
佐野さんは天文部に入ったものの、病気にかかっていた弟の面倒をみるために、授業後に帰宅していたらしい。
「改めて、よろしくお願いします。佐野 美月です」
簡単な自己紹介を済ませた後、少しだけ目が合った。たぶん。
「天文部の活動予定表配るわね。」
一華先輩が渡してくれた活動予定表には、六月にアストラ流星群を観測するといった内容が書かれてあった。なにそれ素敵。
「七月に段取りを決めていくから、それまでは星の知識でも身に着けておいて。部室で雑談してもらって構わないわ。」
一華先輩が言いそうにないことを言うものだから、一瞬聞き間違いかと思ってしまった。
「つまり、普段は雑談していて、頃合いになったら星を眺めるということですね」
斐は読み込みが早かった。
「基本自由ってこと~♪」
...絶対かなめ先輩がこの部の方針決めたな。
何はともあれ、佐野さんもいるし、天文部最高!!
部活が終わると、佐野さんからLINEが届いた。
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電話できなくてごめんね。
ゴールデンウイーク中にでもどうかな?
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ウレシックス、シゲキックス。(『とても嬉しい』の意)
いい一日だ。早く帰ろう。
閲覧いただきありがとうございます。
感想など、お待ちしております。
幼馴染の澪ちゃん、まだ影が薄いですが次話で活躍してくれます。
お楽しみに。