序章 辺境地からの旅立ち
これからがんばって書こうと思います!よろしくお願いします!
数十年前に魔王が生まれた。
それまではたびたび魔物が人間界に来ては人を襲い、少なからず被害が出ていた。
しかし、魔王が生まれてからはそんなことが行われずに平和な日々が続いていた。
平和はいい。誰もがそう思うだろう。だが、彼は違った。
シャルティア・ローウェン
彼は人間界最上位の魔工具を作る職人であり、町の中には魔物の生態を生かした魔工具が多く、人々の暮らしを豊かにしてくれた。
そんな彼は魔物が入ってこない数十年間退屈に過ごしており、人間界も文明の発達をすることは無かった。
そのことに耐え切れなくなった彼は人間界を出て魔界へ行き、一人暗礁の中へと消えていった・・・
今日もいつもと変わらない朝が始まる
外では鶏が鳴いていて早く飯をくれといっているようだ。
体に反動をつけ勢い良く飛び上がった俺はそのまま鶏小屋へと向かった。
俺、ロンド・ベルはこの村の農家の息子として生まれた。
村は決して大きくは無いが食べるものに飢えることは無く、みんな優しいし、村唯一の同い年のリズ・シーンはかわいいと特に不満は無いのだが・・・
たった一つ、俺にはみんなに言えない不満がある。それは・・・・
リズにはこの村ではカップリングの相方がいないことだぁぁぁ!!!!
俺はどうやらこれっぽっちもリズを恋愛対象としてみれないらしい。
周りからは俺とリズが一緒にいるとあらあらまあまあといった視線を送ってくるが俺は別にドキドキしてないし一線越えて愛情なんかも感じていない。
ただ俺はリズが百合百合しているのを見たいただそれだけなんだ!
・・・だが、生憎俺はこの村を出るような用事はないし都会で働く気もない。
一体どうすれば・・・
そんなことを考えつつ俺は鶏に餌を与え、ついでに掃除を済ませたので家に戻り母さんの作っているであろう朝ごはんを食べようとしたそのときだった!
チュドォー-ン!!
と、いきなり大きな音が村の中央のほうから響いてきたのだ!
やばい・・・あそこにはリズの家が・・・!!
そう思ったころには俺は手に持ってある鍬を捨てて走り出していた。
村の中央に行くとそこには昨日までには無かったクレーターができていた。
周辺にあった建物は崩壊し、怪我をしている人も見えた。
ふと視界の端に桃色の髪が映った。・・・っあの髪は!
「リズのお母さん!大丈夫!?」
「ロンド・・・来てくれたのね・・・」
「酷いけがじゃないか・・・それに血も・・・」
「私のことよりもリズが・・・」
「リズがどうしたの?」
「魔物たちが狙ってるみたいなの・・・だから・・早く・・・」
リズのお母さんが口を閉じるよりもさきに俺は一歩を踏み出していた。
リズが狙われているならこれ以上この村には被害は出ないはずだ。あいつはそういうやつだからな・・・
村から少し出ると森が広がっている。
そこは日ごろから薪用の木材や木炭を作るためにある伐採所があり、そこから獣道を進むと俺とリズがよく遊びに来ていた秘密基地がある。きっとそこに・・・いた!
「はあ・・・はあ・・・ここまで来れば村に戻るまでに時間がかかるわよね。」
「はっはっはっ、流石勇者様だ。自分が狙われているのを分かって一人でこんなところに来るとは」
リズの言葉に反応したそいつは俺が今まで本でしか見たことの無いような姿をしていた。
顔は鷹のように鋭く恐ろしい眼光をしており、体は村一番の怪力の父さんを遥かに凌駕するような筋肉が膨れあがっていた。爪は尖っており人間くらいなら容易く切ってしまいそうだ。
「あなた、私の命が欲しいんでしょ?ならあげるわ。その代わり・・・村の人には手を出さないで!」
「ほう?分かっているじゃなですか。よろしい、この紳士イーグルガー約束は守ろう」
そう言うとリズは目を閉じ、イーグルガーと名乗ったやつは腕を振り上げそして・・・・
笑った
その瞬間俺はリズに向かって走っていた。化け物の振り下ろす腕なんか気にせずリズのところへ一直線に。
次に感じたのは優しい温もりと熱を奪うような痛さだった・・・
「ぐぅぅぅぅ・・・・・!!!」
歯を食いしばりながら痛さに耐える。よかった・・・リズは無事だ・・・・
「っ!?ローあんた何で!?」
「お前が狙われてるって母さんから聞いてな・・・」
「違うそうじゃない!ローがなんで・・・なんで!?私が死ねばみんな助かったのに、ローもこんな・・・」
「バーカ・・・だからお前は俺に居場所がばれるんだ・・・」
そういって体を起こす。どうやらあいつは急に現れた俺にびびってる訳ではなくただリズに言った紳士を守ろうとしてるみたいだな・・・まあいい、どうせその紳士の化けの皮をはいでやるんだからよ・・・
「なあリズ、お前は逃げろ・・・」
「何言ってるの・・・そんなことしたら・・・」
「こいつはお前を殺したら今度は村も襲うぞ!」
ぴくっとくちばしが動くと一瞬だが背筋が凍るような寒気がした。
「・・・何を言っているのですか貴方は。私が狙ってるのはその」
「はっ!いまさら紳士ぶるのかよ!お前リズを殺そうとしたとき笑っていたぞ?」
はぁ・・・はぁ・・・さっきの傷が痛むがもういい・・・どうせおれは・・・
少し自分のことを考えすぐさま正面の敵を見た。するとどうだろう、さっきまでの取り繕ったような笑顔はなく、ただただ俺たちを殺すといった表情にかわっていた。
「リズ早く逃げろ!」
「でもローが・・・みんなが・・・・」
「はや・・・・っ!」
早くいけなんて叫ぶ時間も与えてはくれなかった。
俺の腹はターキーくらいはありそうな腕に貫かれ、目の前には目を血走らせた獣がいた。
幸い傷みはあんまり無かった。これが神様がくれる最期の慈悲ってやつなのかなぁ・・・
「リ・・・・ズ・・・・」
まだ後ろにいるであろう彼女に生きて欲しい。その思いを振り絞って口を開いた。
「俺・・・のぶん・・・も・・・いき・・・て・・・」
目の前が段々と暗くなってくる、寒いし眠たい。でも・・・・
リズを生かすために今は1秒でもこいつを足止めしてやる!!!
引き抜こうとしたやつの腕を俺は指が食い込むくらい力いっぱいにつかんだ。
腹に力を込め、足を絡め自分の体を押しやる。
「こいつ・・・ええい!離れろ!」
頭をつかまれきしむような音がする・・・あっ、左目が見えなくなった
正直今俺は何をしてるのかも分からない・・・でもこの手・・・だ・・けは
・・・
光が見える・・・・
あったかい・・・・あれ?ここはどこだ?
俺を呼ぶ声も聞こえる・・・・ロー?いやおれはロンド・ベルって名前があんだよ、ローなんて・・・ローなんて呼ぶやつなんて・・・っ!
「ロー!ロー!」
「リ・・・・ズ?」
「っ!ロー!よかった!無事なんだね・・・」
「ぶ・・・じ?何を言ってるんだ?おれはさっき鷹みたいな化け物に・・・まさかここ天国じゃないだろうな?」
「違うよ、ここは私たちの秘密基地だよ。」
「そうか・・・で、あいつはどうなったんだ?それで何で俺生きてるんだ?左目見えねえし」
「うん・・・えっとね、私勇者みたいなの:
「は・・・・?」
「それでね、私がピカッって光っておりゃ!ってやってぐいっ!っとしたんだよ!」
「すまん・・・もっと具体的に答えてくれ・・・」
「えー、いつものローなら分かるじゃん!」
「いくらなんでもこの状態でいつもの俺って言い張るのはないだろ!」
「そうだね・・・。」
すこし反省したかと思うとリズは俺に抱きついてきた。
あたたかい・・・この暖かさは・・・・ああ、そういうことか。
「リズが助けてくれたんだろ?」
「うん・・・」
「ならありがとうだな。」
「っ・・・!でも!」
「俺は生きてるし、お前も助かった。それに村のみんなも守れた。万々歳じゃないか」
「だって・・・」
「俺はお前にちょっとかっこいいとこ見せただけなの。いいな?」
「ちょっと・・・じゃないもん」
「なら若干だな」
「ちが・・・そういう意味じゃ」
「ほら帰るぞ、早く帰らないとお前の母ちゃん心配してたぞ」
「う、うん・・・ってローふらふらじゃん!ちょ、私が支えるからまって!」
それから俺たちは村に帰り、リズの両親にさっきまでのことを説明した。
するとリズの両親から驚くべきことを聞かされた。
どうやらリズのお母さんは天界から降りてきたけど帰れなくなったドジな女神らしく、リズは女神と人間のハーフらしい。
それで勇者候補の1人だったらしくこんな辺境地で育てられたのだと。
俺も一回死んだしこれは夢かなと思ったが夢じゃなかった・・・なんて日だ。
勇者が力を手にしたときは人間界に危機が訪れる時だといわれているが、本音は天界に変なものが入ってこないうちに人間界で何とかしろという天界の指示らしい、うん、聞きたくなかった。
「しかしまあ、良く俺生き返ったなあ・・・勇者の力ってすげえ」
「それは勇者の力ではなく私たち女神の力です」
「女神〔笑〕ねえw」
「なんでこっち向くのよ・・・」
まあ、美少女だし分かるっちゃ分かるけどこいつ無鉄砲でお母さんみたいな淑やかさの欠片もないしなぁ・・・
「ふふっ、女神の力は勇者の力と違って自力でしか開放できないのよ」
「はあ、それをあの場所で開放したとなると・・・どうやったんだ?」
「ヒントは・・・愛よ!」
「哀・・・ですか・・・」
「ちょ////お母さん!!」
「哀か・・・そうか、お前肉団子みたいな俺を哀れんでくれたんだなぁ・・」
「え?哀れ・・・え?」
「ふふっ、あなたたちは本当にお似合いよね。さあ、ロンドさん、あなたも今日は疲れたでしょ?ゆっくりお休みなさい。」
「そうですね、では。あっ、でも村の修理は・・・」
「大丈夫。あなたたちのおかげで物置や倉庫が壊れたくらいで済みましたから。」
「よかった・・・」
「それとこれはほんのお礼です。」
そういってリズのお母さんは俺の顔を手で包み、唇を額に押し当ててくれた。
隣で女神と人間のハーフの勇者から発せられたとは思えない声が聞こえたが俺の頭にはそんなことは入ってこず、あることを一心に思っていた
勇者×女神のってよくね!!!!????
一週間後、リズは勇者として世界中を回るらしい。
そのための準備をするためにリズは村中を駆け巡り俺とは話す暇も無かった。
俺はなれない右目だけの視界に慣れるためひたすら村を歩き、なんとか走ってもふらつかないくらいにはなれた。
遠くからどんどん代わっていくリズを眺める日々が過ぎ、やがて出発の日が来た。
本当なら俺も行ってあいつのいいカプを見つけたかったが・・・単眼のお荷物になってまで行く気はなかった。
俺には鶏や野菜の世話もこの村を守ることだってしないといけないし、まあ、仕方ないよな!
ってなわけでついでにあいつの見送りもサボっている訳だが・・・盛り上がってるなぁ、そんなに人数いるわけでもないのにどうやったらそんなに盛り上がって・・・ってなんかこっち来る!?
「うわあああああ・・・・ってあれ?なんともない?」
「ちょっとロー!あんたなんでこんなとこにいるのよ!」
「失礼だな、俺の部屋をこんなとこ呼ばわりしないでくれ。というかここ2階だぞ?よくこれたなぁ・・・」
「もう!屁理屈ばっか!・・・・ほら!」
「なんだ?握手か?」
「違うわよ!あんたも行くの!」
「行くって・・・でも俺は・・・」
「ローがいなきゃ誰がこんなお転婆な私の面倒見るって言うのよ・・・」
「リズ・・・」
「ん・・・」
「お前本当は一人で行くの寂しいだけなんだろ?」
「ちょっ///違うし!」
「しょーがないなぁ!いってやるか!」
「もう!違うって言ってるでしょ!」
「はいはいっと・・・・ありがとな」
「ん///」
「でも俺片目ないからお荷物だぞ?」
「大丈夫よ、私が守るから」
「おおぅ・・・」
かっこよくなったなぁ・・・・流石勇者様なんて言わないがな。
「さ、さっさと行くわよ!」
「え?ちょ、俺まだ準備と挨拶が・・・」
「それバピューン!!」
「え?そ、空での移動かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
こうして俺たちは生まれてから出たことの無い村を後にした。別れの挨拶もできず俺は飛び出たが後悔は無かった。・・・まあ、させてくれなかっただがな。
だがどうにかリズをつれてこの村を出ることには成功したな。さてあとは・・・こいつの究極のカプを見つけるだけだ!!