#3 放課後①
「ごめん、待たせた!女子に捕まっちゃてさ」
「いいよいいよ、いつもの事だし」
いつもの事、というのも大河は週2で女の子に告白されている。
もう木曜日なのに今週はまだ1人目か、なんてつまらないことを考えながら昨日届いた真っ白な
スニーカーを下駄箱から取り出す。
「あれ、何その靴!かっけーじゃん」
「いいでしょ。昨日届いたんだ」
「俺部活でお金かかるからさ、親に新しい靴買ってくれなんて言えないんだよな。
仮に言ってもスパイクの事だと勘違いされるのがオチ」
「お前の親厳しいもんな」
他愛もない話をしながら駅前までの通いなれた道を一歩ずつ進む。
「タピオカ屋なんてこの辺にあったっけ?」
「あれ?タピオカ飲みに行くの?」
「大河が言ったんじゃん!」
「そうだっけ?放課後一緒に過ごしたかっただけだから適当なこと言ってたかも」
「なんだよそれ...」
大河はいつもしれっとした顔で俺の心臓をドキドキさせるような事を言う。
「なんか顔赤くない?照れてんの?」
「ちっ、ちげーよバーカ!」
「可愛い」
「...」
大河は事あるごとに可愛いと言ってくる。こんな地味な自分のどこがそんなに好きなのだろう。