#1 小倉隼
今までの17年間、自分の意志なんて持った事がない。
親、先生、友達。周りに流され続けて生きてきた。
俺は小倉隼。はやぶさと書いてしゅんと呼ぶ。
どこにでもいる平凡な高校3年生だ。
ある一点を除けば...だが。
「おーい、隼!飯食おうぜ!」
今俺に話しかけてきたこいつは須藤大河。
高身長でイケメン、更にはサッカー部でエースストライカーときた。
もちろんクラスでは人気者だし、友達だってたくさんいる。
対して俺は顔も学力も平均以下、運動なんてからっきし出来ない上にコミュニケーション能力も乏しい、いわゆる”陰キャ”だ。
そんな奴がなんで俺なんかと飯を食っているのかって?
俺が聞きたいくらいだ。
「なあ、昨日の南海オンエアの動画みた?」
弁当箱を広げながら大河が話しかけてくる。
「鋼王決めるやつでしょ?見た見た」
「鋼王ってなんやねんって感じだよな」
ニヤッとしながらタコさんウインナーを口に頬張る。
今日は高3になって初めての授業があった。
とは言っても午前中はクラスの会長を決めたり時間割の発表があったり...という定番のやつがあっただけ。昼からは3年生を講義堂に集めて受験に向けての決起集会をするのだとか。
(早く帰りてぇ...)
「なあ隼、今日放課後何してる?」
「特に何もないけど...」
「今日俺部活なくてさ、一緒にタピオカ飲みにいかない?」
「タピオカだあ?そんなJKみたいなことする柄じゃないだろ」
「まあまあ、いいじゃんいいじゃん!放課後ね!」
「ちょっ...」
いつもこうだ。言いたいことだけ言いやがって。
大河は弁当も早々に友達とどこかへ行ってしまった。
今日で38回目のデートか。