果し合い……17
それから一週間後。鋼は絶対安静が解除されると、屋敷をやたらとうろうろしたり、道場で業賢を素振りしていたり、そういうところをよく見かけるようになった。
そんな状態がさらに一週間続き、唐突に三日間ほど姿を消した。
「何でしょうね、何処にいったんでしょうね」
総史郎が道場の中で、鋼に変わって富重を素振りしている。
「落ち着けって。今日でもう百回くらい言ってるぞそれ」
座漸があきれたようにぼやいている。
「私は冷静ですよ。しっかり物事を考えています」
「おれは落ち着けって言ったんだぜ。冷静になれなんていってない」
よりによって座漸に揚げ足を取られるとは、夢にも思ってもいなかった。
「……」
「心配なんか無駄だぜ。あいつはおれより強いんだからよ」
そわそわと足を組みなおしたりしている座漸も、実は十分落ち着きがない。
「お館様、鋼さまがお帰りになりました。玄関においでです」
聞き終え玄関まで走った。
隣に座漸がいるのは、やはり彼女も心配していたのか。
玄関に到着すると、無表情な鋼が佇んでいた。ケガはなさそうだ。
「何処いってたんですか。心配しましたよ」
総史郎が極力冷静に、何時もと同じ口調に言う。
鋼は無表情だが少し疲れたような顔だった。
「ご心配おかけしました」
「咲さんが怒っていました」
「………それは、申し訳ありません」
顔が少し赤くなった。この赤面はどういう意味だ。
「とにかく、どうしてたんですか?」
「すみません。今は……」
鋼が少し俯き加減になる。
ぐ~~
誰かの腹が鳴った。
最初は座漸を疑い、総史郎は隣の座漸を見た。
「おれじゃねえよ」
首を横に振る。確かにさっき佐川愛の作った昼食を、おかわりまでして食っていたのだ。
残るは一人だけ。
鋼の耳が真っ赤になっていた。完全に俯いて顔は見えない。
「愛さん。ご飯をお願いします」
「承知しました」
佐川愛は一度頭を下げ、厨房へ消えた。まったく不良の家出娘だったのが、今では嘘のような働きぶりだ。
「し、仕方ないでしょう。わたしはお金を持っていないのですから!!」
「何も聞いてませんよ。って、あれ本当だったんですか!?」
顔面の毛細血管が、何本か炸裂しているのではないか疑いたくなる真っ赤な顔が、どうやら真実であることを証明している。
「さ、とりあえず上がってください。部屋で待っていてくださいね」
鋼はブーツを脱いで上がると、小首をかしげて固まった。
「この場合、なんと言ったらいいですか? お邪魔しますですか?」
「そうですね。私的には、」
「おれはいつもただいまだな」
座漸の問題発言である。
「貴女、居候なのに家主の総史郎殿より堂々としてますからね」
あきれて溜息をこぼす鋼に、総史郎は笑顔で答えた。
「ただいまですね。それで合ってます」
「それでは、ただ今もどりました」
「お帰りなさい。さ、ご飯にしましょう」




