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刀狩り  作者: 夜桜月霞
果し合い
29/48

果し合い……17

 それから一週間後。鋼は絶対安静が解除されると、屋敷をやたらとうろうろしたり、道場で業賢を素振りしていたり、そういうところをよく見かけるようになった。


 そんな状態がさらに一週間続き、唐突に三日間ほど姿を消した。


「何でしょうね、何処にいったんでしょうね」


 総史郎が道場の中で、鋼に変わって富重を素振りしている。


「落ち着けって。今日でもう百回くらい言ってるぞそれ」


 座漸があきれたようにぼやいている。


「私は冷静ですよ。しっかり物事を考えています」


「おれは落ち着けって言ったんだぜ。冷静になれなんていってない」


 よりによって座漸に揚げ足を取られるとは、夢にも思ってもいなかった。


「……」


「心配なんか無駄だぜ。あいつはおれより強いんだからよ」


 そわそわと足を組みなおしたりしている座漸も、実は十分落ち着きがない。


「お館様、鋼さまがお帰りになりました。玄関においでです」


 聞き終え玄関まで走った。


 隣に座漸がいるのは、やはり彼女も心配していたのか。


 玄関に到着すると、無表情な鋼が佇んでいた。ケガはなさそうだ。


「何処いってたんですか。心配しましたよ」


 総史郎が極力冷静に、何時もと同じ口調に言う。


 鋼は無表情だが少し疲れたような顔だった。


「ご心配おかけしました」


「咲さんが怒っていました」


「………それは、申し訳ありません」


 顔が少し赤くなった。この赤面はどういう意味だ。


「とにかく、どうしてたんですか?」


「すみません。今は……」


 鋼が少し俯き加減になる。


 ぐ~~


 誰かの腹が鳴った。


 最初は座漸を疑い、総史郎は隣の座漸を見た。


「おれじゃねえよ」


 首を横に振る。確かにさっき佐川愛の作った昼食を、おかわりまでして食っていたのだ。


 残るは一人だけ。


 鋼の耳が真っ赤になっていた。完全に俯いて顔は見えない。


「愛さん。ご飯をお願いします」


「承知しました」


 佐川愛は一度頭を下げ、厨房へ消えた。まったく不良の家出娘だったのが、今では嘘のような働きぶりだ。


「し、仕方ないでしょう。わたしはお金を持っていないのですから!!」


「何も聞いてませんよ。って、あれ本当だったんですか!?」


 顔面の毛細血管が、何本か炸裂しているのではないか疑いたくなる真っ赤な顔が、どうやら真実であることを証明している。


「さ、とりあえず上がってください。部屋で待っていてくださいね」


 鋼はブーツを脱いで上がると、小首をかしげて固まった。


「この場合、なんと言ったらいいですか? お邪魔しますですか?」


「そうですね。私的には、」


「おれはいつもただいまだな」


 座漸の問題発言である。


「貴女、居候なのに家主の総史郎殿より堂々としてますからね」


 あきれて溜息をこぼす鋼に、総史郎は笑顔で答えた。


「ただいまですね。それで合ってます」


「それでは、ただ今もどりました」


「お帰りなさい。さ、ご飯にしましょう」

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