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刀狩り  作者: 夜桜月霞
果し合い
27/48

果し合い……15

 ちなみに総史郎が全裸にしたことは、二人で黙っていることにした。もしも知られたのなら、この赤面症のある娘は、顔面の毛細血管が全破裂して大惨事になりかねない。


「ダメです。けが人は大人しくしいてください」


 さりげなく体を撫でるなどセクハラ攻撃を仕掛けても、それどころじゃない鋼は気付いていない。


 しめたものだが、咲が静かに総史郎に耳打ちする。


「あたしって、意外と凶暴なのよ」


 背筋にぞくぞくと寒気が走る。


 脅しに艶声を使うのは、なかなか凶悪であると総史郎は生まれて初めて理解した。


 今まで大人の女性とお付き合いがなかったので、こうした経験は少ない。


 セクハラは中止である。


 両手が塞がっていては、刀は使えない。離したら鋼を落としてしまう。


 それからは静かにおとなしく鋼を部屋まで運び、ベッドに寝かしつける。


 後は咲がてきぱきと鋼に点滴をつけたりして、全工程を終えた。


「じゃ、何かあったら呼びなさいね。昨日みたいに我慢したら、承知しないわ」


「わ、分かりました」


 顔を真っ赤にして、鋼はこっくりと肯く。なにがあったのだ昨日。


 部屋を後にして一階の居間に咲を通す。


「あのクソ重たい刀とか、あとで取りに来てね。あんなの重たくて運べないわ」


 始めてきた他人の家で、当たり前のように二人がけソファを独占した咲。鋼の荷物について説明している。


 しかし総史郎は右から左だった。珍しく紅茶の気分になったので、紅茶を淹れることに夢中になっていた。


「はい」


 それでも返事ができるのは、人間の不思議なところだ。


「それと、あたしの患者に変なことしたら、承知しないわ」


「分かりました」


 コレだけはしっかり耳に入ったし、脳にも記憶された。


 ついでに何かいやな予感がするので、カップを三つ暖めておく。


「おい。なんかないのかよー」


 予想的中。


 穀潰し一号が冷蔵庫に頭を突っ込んで、食べ物を探している。買い物袋に頭を突っ込んで、食べ物をさがす子犬と動作が酷似している。


「これから咲さんとお茶にしますけど」


「菓子はあるか!?」


 勢いよく頭を上げようとして、冷蔵庫の中から鈍い音がして、くたと座漸から力が抜けた。ゆっくりと出てきた座漸が頭を押えてうずくまる。


「大丈夫ですか?」


「いってーーーーッ!」


 ぶつけた箇所を押え込み、絶叫を上げた。ちょんまげがわなないている。


「あとで咲さんに見てもらうといいですよ」


 うずくまっているせいで露出している足を総史郎が見つめているのに、座禅は気付かれていないようだ。


 そのまま手と目を別々に動作させて、カップの水をよく切る。ソーサーやお菓子の入った缶を、ワゴンに搭載して居間へ向かう。


「咲さん。台所に頭打って悶えてるお馬鹿さんがいるので、後で見てあげてください」


 総史郎のレスキュー要請に、咲はふんと鼻を鳴らして腕組みする。大きなバストが強調されて、なかなかの見ものである。


「お馬鹿さんには、医者は何もしないわ。何たらにつける薬はないもの」


「そうですか」


 それならばしかたない。総史郎はテーブルにカップを並べて、ゆっくりとポットから紅茶を注いでいく。


 そしてお菓子の缶を開けるかぱんという音が発生すると、


「おお。三六合屋のクッキーか!」


 なんと恐ろしい。噂のお馬鹿さんは、総史郎から離れた席に座って、クッキーをふんだくっていた。


「言ったとおりでしょ?」


 紅茶のカップを上品に持ち、口元へ持っていく咲が呟いた。


「取り越し苦労でした」


 総史郎が溜息をもらして、ばりぼりとクッキーを貪っている座漸を横目で見た。


 それとは正反対に優雅といってもいい挙動で、咲は紅茶を飲んでいる。まったくこのワンこにも見習わせたいものだ。花は同じ程度なのに、立ち居振る舞いでここまで変わるものか。


「ナに見てんだよ」

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