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刀狩り  作者: 夜桜月霞
果し合い
26/48

果し合い……14

「なあ、よお。あいつ大丈夫なのかぁ?」


 離れた所から座漸が総史郎に話しかけている。警戒態勢であるが、なんともへっぴり腰である。狂犬嘆外座漸はどこに消えた?


「あいつとは?」


 分かってはいるのだが、座漸をからかうのは面白いのだ。


 座漸の顔に少し朱がさし、視線を外す。


「あ、あいつだよ。ほら」


「名前を言ってください」


「鋼だよ……」


 ぼそりと呟くように答え、くるりと総史郎に背を向けた。


「な、なんでもねえよ。うるせえ!」


 総史郎は何も言っていないのに、なぜかうるせえ黙れなどと暴言を吐き始めた。


 どうやら照れているらしい。まったく、照れ隠しで暴言を言うのはどうかと思うが。


「鋼さんは大丈夫ですよ。明日か今日には退院です」


 それを聞いて、座漸が肩から力を抜いたのが見えた。


「なんでえ。もう帰ってきちまうのか」


 何か言っているが、耳が赤い嘆外座漸。人切り座漸が人の心配をするなど何事だ。


 すると突然総史郎の懐からカンパネラが流れて、静かな道場に響く。


「うあ!」


 口から心の臓を吐き出す勢いで、盛大に飛び上がった座漸を無視して、曲名から誰か考える。


「あ、咲さんですね」


 懐から携帯電話を取り出して、通話を押す。


「はい、笹木です」


「お前、電話ないんじゃなかったのか?」


 座漸が驚きなっがら尋ねると、総史郎はにっこりと笑む。


「分かりました。住所は」


「おい。無視すんなよ」


 かまって貰えないワンこが、きゃんきゃん騒ぎ出した。


「はい。それじゃあ、お願いします」


 終話ボタンを押して、電話を懐にしまう。


「別に、私が持っていないとは言ってませんよ。ただ家にはないとは言いましたが」


 淡々とした態度で総史郎は言ってやると、座漸は顔を真っ赤にして憤怒した。


「騙したな!」


「騙してませんよ。それにどうしろこの電話で警察には電話できませんよ。ロックかけていますから」


「何でだよ!」


「貴女みたいな人に奪われて、通報されたら迷惑です」


「意味わかんねえ!」


 ワンこがきゃんきゃん騒ぐのを無視して、咲からの報告を告げる。


「そうだ。鋼さんが帰ってきますよ」


「ホントか!?」


 きゃんきゃんうるさかったワンこが、一瞬で尻尾を振って喜びだした。


「ええ。今咲さんの車でこっちに向かっているそうです」


 それを聞いて、不安垂れ流し状態になる。ころころとよく表情が変わる。


「……大丈夫なのか? 車?」


「ダメでしょう」


 それから三十分後、予想より早く咲たちは到着した。


 総史郎の予想通り、紅いポルシェ964に乗った鋼はぐったりしていた。


「なんで、あなたたちはこんなものに乗っていて平気なんですか?」


 蒼い顔の鋼が呻く。


「鋼さんが弱すぎるだけですよ?」


「ええ。ちょっと高速機動隊まいただけじゃない」


「それはちょっと……」


「普通よ」


「そうですか」


「それより、ちゃんと準備しておいたの?」


「はい」


 電話のあと直ぐに、総史郎と座漸は鋼の部屋を病室に改造しておいた。座漸は邪魔をしているようなものだったが。


「そ。じゃ、運んでちょうだい」


「了解です」


 助手席を開けてナビシートを倒して横になっていた鋼を、総史郎がそのまま抱き上げた。


「一人で歩けます。離してください」


 鋼の顔が面白いくらい赤い。

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