果し合い……14
「なあ、よお。あいつ大丈夫なのかぁ?」
離れた所から座漸が総史郎に話しかけている。警戒態勢であるが、なんともへっぴり腰である。狂犬嘆外座漸はどこに消えた?
「あいつとは?」
分かってはいるのだが、座漸をからかうのは面白いのだ。
座漸の顔に少し朱がさし、視線を外す。
「あ、あいつだよ。ほら」
「名前を言ってください」
「鋼だよ……」
ぼそりと呟くように答え、くるりと総史郎に背を向けた。
「な、なんでもねえよ。うるせえ!」
総史郎は何も言っていないのに、なぜかうるせえ黙れなどと暴言を吐き始めた。
どうやら照れているらしい。まったく、照れ隠しで暴言を言うのはどうかと思うが。
「鋼さんは大丈夫ですよ。明日か今日には退院です」
それを聞いて、座漸が肩から力を抜いたのが見えた。
「なんでえ。もう帰ってきちまうのか」
何か言っているが、耳が赤い嘆外座漸。人切り座漸が人の心配をするなど何事だ。
すると突然総史郎の懐からカンパネラが流れて、静かな道場に響く。
「うあ!」
口から心の臓を吐き出す勢いで、盛大に飛び上がった座漸を無視して、曲名から誰か考える。
「あ、咲さんですね」
懐から携帯電話を取り出して、通話を押す。
「はい、笹木です」
「お前、電話ないんじゃなかったのか?」
座漸が驚きなっがら尋ねると、総史郎はにっこりと笑む。
「分かりました。住所は」
「おい。無視すんなよ」
かまって貰えないワンこが、きゃんきゃん騒ぎ出した。
「はい。それじゃあ、お願いします」
終話ボタンを押して、電話を懐にしまう。
「別に、私が持っていないとは言ってませんよ。ただ家にはないとは言いましたが」
淡々とした態度で総史郎は言ってやると、座漸は顔を真っ赤にして憤怒した。
「騙したな!」
「騙してませんよ。それにどうしろこの電話で警察には電話できませんよ。ロックかけていますから」
「何でだよ!」
「貴女みたいな人に奪われて、通報されたら迷惑です」
「意味わかんねえ!」
ワンこがきゃんきゃん騒ぐのを無視して、咲からの報告を告げる。
「そうだ。鋼さんが帰ってきますよ」
「ホントか!?」
きゃんきゃんうるさかったワンこが、一瞬で尻尾を振って喜びだした。
「ええ。今咲さんの車でこっちに向かっているそうです」
それを聞いて、不安垂れ流し状態になる。ころころとよく表情が変わる。
「……大丈夫なのか? 車?」
「ダメでしょう」
それから三十分後、予想より早く咲たちは到着した。
総史郎の予想通り、紅いポルシェ964に乗った鋼はぐったりしていた。
「なんで、あなたたちはこんなものに乗っていて平気なんですか?」
蒼い顔の鋼が呻く。
「鋼さんが弱すぎるだけですよ?」
「ええ。ちょっと高速機動隊まいただけじゃない」
「それはちょっと……」
「普通よ」
「そうですか」
「それより、ちゃんと準備しておいたの?」
「はい」
電話のあと直ぐに、総史郎と座漸は鋼の部屋を病室に改造しておいた。座漸は邪魔をしているようなものだったが。
「そ。じゃ、運んでちょうだい」
「了解です」
助手席を開けてナビシートを倒して横になっていた鋼を、総史郎がそのまま抱き上げた。
「一人で歩けます。離してください」
鋼の顔が面白いくらい赤い。




