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刀狩り  作者: 夜桜月霞
果し合い
23/48

果し合い……11

「だから、家政婦になってくれて働けといってるのです。もしかして、そっちの仕事と勘違いしてました?」


 にっこりと笑顔で言うと、ぽかんとしていた座漸は、べそをかきながら総史郎の脛を思いっきり蹴り上げた。顔がリンゴよりも赤い。


「てめえッ!」


 厄神を抜いて切りかかる。顔が真っ赤でべそかいたままだと、大して怖くないが。それでも厄神の禍々しいシルエットは肝に悪い。


「なんですか。勘違いしたのはそっちですよ?」


「うるせえ。死ね!」


 座漸の盛大な大降りが直撃したら、おそらく頭どころか腰まで真っ二つになりかねないだろう。否、百パーセント左右で体が泣き別れる。


 これは困った。


 厄神の動きはよく覚えている。これを避けても燕のように動きが変形して、切り込みにかかるだろう。


 ならばしかたない。


 大降りの降下を避け、足を絡めて押し込む。


「きゃあ!?」


 間抜けな声を上げて座漸は盛大にひっくり返り、総史郎の下敷きになる。むしろ組み伏せる。


「落ち着いてくださいね。また借金増えますよ?」


 にっこりと人好きのする笑顔を見せ付けてやると、頬を染めながらも喉を鳴らして睨みつけてきた。幸いにも厄神は凌ぎを下にして落ちたので、床は無傷だ。


「うるせえ! ここでお前をぶっ殺したら借金はチャラだ!」


「なるほど。たしかに、そうですね」


 納得といって首肯すると、もう一度にっこりと笑む。


「じゃあ私はここで、貴女をたっぷりいじめますね。冥土の土産です」


 刹那座漸の顔が青ざめて固まった。


「なに、これでも私、”女の子”をいじめるのが得意なんですよ。どんな悪い子でもイチコロです」


 金魚のように口を開閉させ、それでやっと逃げようと暴れだした座漸は、反転してうつ伏せになり、総史郎と床からの隙間から抜け出ようと暴れている。


「やめろ! 離せ! 離さないとぶっ殺す! きゃあ!」


 べそをかいて手足をバタつかせているので、羽交い絞めにして腰を抱く。いちいち悲鳴を漏らすのが面白い。


「そんなに暴れると、脱げちゃいますよ。ほら」


 指摘しつつ浴衣をはがしているのは総史郎の性分だ、しかたがないことだ。


「やめろ! 脱がすなバカぁ!」


「さすが毎晩お風呂でマッサージしてるだけありますね。さわり心地がいいです」


 はだけた合わせから手を入れたり、首筋にほお擦りしたりと好き放題だ。


「はなせ! ってなんで知ってんだよ!」


「毎晩覗いているからですよ」


 総史郎の書斎から、母屋の大露天風呂は覗き込めるのだ。そうなるように部屋替えしたのだ。


「やめろ! 警察呼ぶぞ!」


「大丈夫です。この家に電話はありません」


「どんな家だよバカ! 緊急の時はどうするんだ!」


「その時はその時です。佐川さんが携帯持ってるので」


「ならそいつに」


「今日はいませんよ」


 使用人を毎日呼んでいたら、労働基準で処罰されかねない。そもそも毎日呼ぶ必要はない。


「意味ねえじゃねえか!」


 叫ぶ座漸は無視して、浴衣を少しずつ剥いていくと狙った訳でもなく、大きな胸に浴衣の襟が引っかかり際どい色気をかもし出した。


 脱がそうとした衣服が引っかかるとは、ただ事ではない。グラビアアイドル並みだ。


「貴女、いくつですか?」


「聞くな!」


 間髪入れずに答えたが、もう逃げるのはあきらめたのか、座漸は片腕でその大きな胸を隠そうともがくだけだ。


「こんなもん邪魔なだけだ」


 俯き呟き加減だが、それでも結構必死になるのは、胸がコンプレックスなのか。


「いいじゃないですか。大きいほうが楽しさ百倍です」


「うるせえ黙れ変態メガネ!」


「メガネは関係ありません」


 すこし憮然とすると、その隙に座漸が一気に脱出を謀り抜け出した。


 あっさり逃がしてしまった獲物を見つめ、総史郎は舌打ちを漏らす。


「ちぇ」


「舌打ちすんなバカ!」

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