第二十八話 神話と真実と現実と……
お久しぶりですございます|ω-`)
無言の休載と復帰と併せてお詫び申し上げますm(_ _)m
八重は後ろを着いてきた小さな鬼の女の子をまじまじと見つめてから溜息を吐く。
「はぁ~。可愛いよね~ 。この子ぜぇったい可愛いよね~。友達になりたいんだよね~」
八重は両手で顔を抑えながら体をくねらせている。対する鬼の女の子は自分の着ている白い軍服を体を捻りながら見回すと八重にドヤ顔を向ける。
「んっはぁ~ん! コレキターー!! ねぇ、ねぇっ!! 名前なんて言うの!? 私ね、八重って言うの!!」
興奮した八重は鼻息荒く問い詰める。
「真鬼……温羅はそう呼ぶ」
真鬼は表情をあまり変えずに答える。
「真鬼ちゃん! 私と友達になろっ!?」
「無理……」
間を置かずに真鬼は即答した。その返事に予想通りとはいえ八重は固まった。
「じゃあさ、じゃあさ!私が真鬼ちゃんと闘って勝ったらいいかな? いいよね!?」
真鬼の返事も待たずに八重は動き出した。そして、真鬼の背後に回ると首元に短剣をそっと添える。
「あはっ! これで私の勝ちだよね?」
八重はそのまま真鬼を抱きしめた。その時お腹に何か硬くて筒のようなものが当たるのを感じる。
「まだ終わりじゃないの。あなたもこれでは相打ちもしくはタイミングによっては私の勝ち。いぇい。」
無表情でブイサインをする真鬼。その姿すら可愛すぎるとその場にへたり込む八重。
「八重は……今、試練を与えられているのね? こんな可愛い女の子と仲良くなるのはやっぱりそれなりのリスクが伴うものよね……」
真鬼はその八重の様子を見て背筋が凍った。いや、本気の拒絶反応が出た。危険を悟った真鬼は逃げた。八重が小さな点になるほど距離を置いた。そのはずだが真鬼は左横から嫌な気配を感じ震えながら視線をその方へ向けるとそこには八重がだらりと両腕を垂れて立っている。
「ドコニイクノ? ワタシノカワイイ、コオニチャン……?」
恐怖に怯えながら真鬼は更に逃げようとしたが頭を八重に鷲掴みにされ捕獲されてしまった。八重の歓喜の絶叫が辺に響き渡った。
――広場中央
式は閻羅との決着の後、直ぐに中央へと戻っていた。静まり返った一番隊本陣には義勇軍の姿はなく、空っぽになったテントと野営の跡があるだけであった。人の気配を微塵も感じることは無いが式は気を抜くことは無く、双剣を携え周囲を警戒しながら一番隊の駐留していたテントを目指していた。恐らく桃也がいるのであればその場所の近辺のはずだと推測していた。駐留していたテントが見えた。そしてその傍らに横たわる人影も同時に確認した。傍らには見覚えのある大剣が垂直に突き刺さっている。
「隊長!? 桃也隊長!! 式、戻りました!」
式は閻羅の最後の言葉と桃也の知る話と色々と整理しなければならない事が頭の中で交錯していたが桃也の姿を見た途端全てが真っ白になり、驚嘆した。
「え? どうして……」
桃也は胸に大きな穴が空き血溜まりの中に倒れている。式はその場に立ち尽くし動けないでいた。
「どうして? それは彼より僕が強かったからだよ。式君。君は閻羅を倒したようだね。彼女、最後になんて言っていたのかな? いやいや、それより式君は僕の話を聞いてくれるかな?」
桃也の喪失により気力を失い立ち尽くす式に温羅はどこからともなく現れ話しかける。
「あー。残念だよね? 信頼していた上司のこんな姿見たら。僕もまだまだ他人の気持ちには鈍感なのかな。すまないね、今聞くべき事じゃないのかも知れない。気持ちの整理がつく頃にまたお邪魔する事にするよ。……そうは言っても戦場では時間はそう長くない。式君、君も決断は早い方がいい……」
そう言い残し温羅はどこかへ去っていった。膝から崩れ落ちた式は手をそっと穴の空いた桃也の胸に添える。まだ暖かい。いや、熱い。そう感じた式は意識を明確に取り戻す。
「これは! 隊長! 聞こえますか!? 隊長!!」
桃也の体は即死のダメージを受けているにもかかわらず熱を帯びている。瀕死の状態ではあるがかろうじて生きている。そして、吉備津家の生命力の強さが自己治癒力を極限まで高めている事により神気を体に留めている。奇しくもここは黄泉国。死と生を司る国。式は急いで伊邪那美の神庭宮を目指した。
入れ違いにそこに岩鬼と八雲が到着した。
「この血は!? 温羅の……って訳じゃなさそうね。岩鬼。さっきの話が本当なら禍津御霊って……私達、戦ってはダメ!!」
「八雲、恐らく温羅様は真っ直ぐには伊邪那美の元には行かないはず。吉備津から眼を取り戻したならば他の幹部クラスに接触するはず。少なくとも天津国の崩壊が最終目的ではないからな」
八雲は頷くと周囲を見渡した。するとテントに一番隊で使う暗号を見つけた。
「緊急事態。撤退する……式ね。隊長も一緒のはず。そしてこれが式の残した暗号という事は隊長がやられたのね……八重と合流しないと! 岩鬼。あの小さい子の説得頼むわね!」
八雲と岩鬼は八重たちと合流を目指し、その場を離脱した。
――少し時間は遡る
八雲は怪訝な表情で広場に設置されてあるブロックに腰掛けている。対峙する岩鬼は腕を組み沈黙している。
「あんたが話をするって言ったんでしょ? 早く喋んなよ。 ってゆーか座らない?」
岩鬼は向かい合うように並んだブロックに座り、話し始めた。
「先ず、そうだな君は……」
「八雲よ」
岩鬼が顔をチラチラ見るので八雲はぶっきらぼうに答えた。
「すまない。俺は岩鬼と言う」
「いちいち謝らないで! あー調子狂うなぁ。話進まないから私、話終わるまで黙るからね! 」
八雲はこの意外な展開に苛立っていた。これから闘う相手の話を聞くなんてどうかしていると思っていた。だが不思議と聞かないといけない気がしていたからだ。
「八雲。君は桃太郎の話を知っているね。広く知られる話は鬼が暴虐の限りを働きそれを桃太郎が退治するという話だ。しかし、実際の史実とはかけ離れている。」
八雲は真剣な表情で岩鬼の話に聞き入っている。
「事実だけかいつまめば、鬼の一族が桃太郎。吉備津に退治された。この事実は合っている。しかしそこにたどり着くまでの経緯は全く違う。そもそも鬼の一族と言うのは神族の一つだった。そして、その力はどの神族よりも神秘的で何より無限の可能性に満ちていた。当時、神の頂点と言うべき、伊邪那岐や造化の三神より完璧と言える存在であったのだ。理由としてはほかの神々が己を昇華する為に禊を行い、荒神を堕とすのに対し鬼の一族は禍の源たる禊による荒神堕としを必要としなかった」
八雲は話の途中、急に立ち上がり慌てて質問をした。
「待って!荒神って禊の時にそのまま封印されるんじゃないの!?」
「今はそうなのかもしれないが当時は荒神を避け天津国から遠ざけるだけだった。その証拠としては禍津御霊の主神だ。初代伊邪那美命の荒神、彼女がいる。今回の温羅様の切札であり、最大の交渉材料だ。この事実を知れば天津国への不信を煽り二分する、いやそれ以上の効果が有るだろう」
「そんな……じゃあ、今私達が戦っているのは……どういう事!? いきなりそんなこと言われて信じる訳にも……でも……」
八雲は知らされた事が事実じゃない可能性も考えながら思考を巡らせていたが今、ここで結論は出ない。ならば……
「岩鬼。分かったわ。一つだけ確信したことがある。あなたの話が本当にしろ作り話にしろ今戦うべきじゃないってこと!! 温羅もみんなも止めたい! 休戦協定って事でどう?」
八雲からの申し出に岩鬼も笑いながら頷く。
「騙されるとか思わないのか? しかし俺も温羅様を止めたい。あの人も一族を想いその為だけに生きている様なものだから。協力してくれるのであればありがたい」
八雲はニヤッと笑いお互い様でしょと言いながら親指をグッと立てる。そして、二人は広場中央を目指して走り出した。
――続く
久々の更新に頭が追い付かない……
あれ?今シリアス展開だっけ?え?ギャグパート?( ゜д゜)
どっちでも全力で書きます! またお願いしますm(_ _)m
 




