第16話 それぞれの決意と誓い
――黄泉国 西区 訓練所
秋津は心を落ち着けて空間に溶け込むように静かに立つ。身の丈より少し長い銀の杖を右手に持ち天に掲げる。
「風さん。力を貸して」
秋津の体かふわりと浮く。そして、秋津は訓練所の空中を自在に飛び回る。
「おぉ~。凄いね秋津ちゃんは~。将来有望すぎてクロさんは嬉しいなぁ」
クロは満足気に秋津を見上げながらニコニコしている。
秋津の入隊から五日が経っていた。クロは秋津の力がどんなものかと色々試した時に森羅万象属性ならば、秋津は全属性を扱える事が判明した。これにはクロも驚いたが使いこなせればと思い、まずは風を使った力のコントロールを訓練していた。
「秋津ちゃん! どうかな? 自分の体を思った様に飛ばせてる?」
黒の目の前に着地して秋津は頷く。
「はい! クロさんが親切に教えてくれるので今はもう自由に飛んだりスピードの調整とか出来ます! ありがとうございます!」
深くお辞儀をする秋津。少し離れたところで倫也と藍が立ち話をしている。
「藍。あんなに簡単に使えるように教えてくれるなら俺もクロに教えてもらった方が良かったんじゃね?」
かなり不満なようで倫也は膨れっ面だ。
「あれは秋津が優秀なだけだ。クロの説明聞いたか?あんな小さい子に飛び方は『スーッと浮いてぶわぁーって飛ぶ』とか言って教えてたぞ?」
クロの教え方が抽象的過ぎるのを聞いて秋津の優秀さを改めて感じた。同時に少し悔しさも感じた倫也は追い越されないようにと藍と直ぐに模擬戦へと戻る。
「あっちの二人も頑張るねぇ。これは嬉しい誤算だぁ。倫也も藍もまだまだ強くなるねぇ。いずれはこの国の守護柱や隊長になってくれそうだねぇ」
「クロさん? どうしたんですか? あ、藍さんと倫也君だ!」
二人の模擬戦を見て秋津は目を輝かせながらカッコイイと言っている。
「秋津ちゃんも二人みたいに成れるよぉ。なんて言っても力のポテンシャルはあの二人よりあるんだから」
クロは秋津の頭にぽんぽんと手を置く。そして、クロはももを一日でも早く治してやりたいと秋津にその願いを託し、訓練を続けた。
――天津国 天岩戸
天照大御神は二人の神を呼んで黄泉国との共同任務について説明をしている。
「邇邇芸命。貴方に人間界での監視の任を託すよ! 人間界に潜伏して生活して異変やこっちからの指示をこなしてね?あのぉ……聞いてる?」
天照がオドオドしながら正面にいるカップルの男に話しかけているのだが聞いているのかいないのかずっとイチャイチャしている。
「あ。ダイジョーッスよ! 自分に任せてくださいよ!! なんとかなるっつーか、何とかしますよ!ね~っ?サクヤぁ~」
緑色の髪で髪型はアシンメトリーになっており今時の風体をした男性は答えた。
「当たり前っしょ~! ウチの二ーやんなら余裕、余裕! 何ならウチも一緒だしぃ~。もはや、愛はパワーだよっ! 心配ムヨー! アマちん任せといて!! 」
女性の見た目は八頭身のスレンダー体型に整った小顔でまさに絶世の美女である。その長くストレートの黒髪は日本の女性の凛とした美しさをきわだたせている。
「貴方達!! 天照大御神に対してそのような態度認められると思っているの!? 神としての尊厳を持ちなさい!! 」
天宇受賣は激しく説教をするが乗り出した身を天照は腕を差し出し制する。
「言葉遣いは変だけどね。ウズメ。この子達なら人間界にうまく溶け込めると思うの。それに禍津御霊もこの子達に気付くまで時間がかかるはずだから……」
天宇受賣は目の前の二人を冷たく眺めながら座り直す。
「ウズメさん。俺も任務はしっかりこなしますよ。確かに自分には戦力と言える力はないですけどね。それでも天津国が大事な場所には変わりないので」
邇邇芸命は先程とは別人のように落ち着き払った態度で意思を伝えた。天宇受賣は邇邇芸命の意外な対応に驚いたが邇邇芸命もやはり、神族である事を認めざるおえなかった。
「そういう事でぇ、俺たち人間界に生きますのでよろしくお願いしま~す」
そう言うと邇邇芸命はサクヤを連れて黄泉比良坂へ向かっていった。
「そう言えば、横のサクヤと言った娘も神族なのですか?」
「そうだね。木花咲耶姫命と言って水を司る神になるの。霊峰である富士山に祀られているだけあってあんな感じだけど実力は本物だから安心して」
天照とウズメは二人を送り出し、天岩戸で次なる手を模索し始めた。
――黄泉国 西区 訓練所
さっきまで第三部隊は全体訓練を行っていた。
秋津の成長は目を見張るものがあり神気のコントロールで言えば倫也に追いつきつつあった。倫也自身もオロチの指導もあり実際はコントロールだけなら黄泉国の中でもトップクラスである。
「んー。上手くいかないなぁ……やっぱ武器の量を多くするとコントロールがなぁ。威力を重視するとコントロール効かないし」
倫也は自主訓練を居残ってやっていた。今の倫也でいっぺんに扱える武器の数は二十本前後。召喚だけなら千本近く行けるがまだコントロール不足のため実践では使い物にならない。
ぼーっと空を眺める倫也の首に冷たいものが当たる。
「冷たっ!! え? あぁ。秋津か! お疲れ様」
「お疲れ様です!倫也君居残り?」
秋津が冷たい水を差し入れに持ってくると倫也の横に座り込む。
「そ! あんな力見たらもっと頑張らないとって思ってさ!」
秋津は下向き口を噤む。照れているのか横から見る秋津の顔は真っ赤だ。
「で、でも倫也君の召喚もカッコイイよ。すごく強そう。……私がピンチになったら助けに来てくれる?」
「もちろん行くよ。」
秋津は嬉しくなって膝を抱えて顔を隠す。
「クロも、藍も、イザナミ様も! 仲間がピンチなら絶対に助けるよ。」
みんなか……秋津は少しだけガッカリする。連日の訓練や歳も近い為行動を共にすることの多い倫也に秋津は惹かれていた。
「秋津……ももちゃんの事は秋津しか助けられないからさ。頼むな。」
「ももさん……私が必ず呪を浄化してみせるよ!織姫ちゃんとも約束してるもん!」
倫也と秋津はまだ第三部隊での歴は浅いが皆の期待に応えたいと互いを奮い立たせていた。
「倫也! 倫也! 千葉にマガモノ発生した!急行するぞ!!」
倫也の勾玉に藍から通信が入った。
「分かった! 直ぐに向かう! 秋津も居るから一緒に行く。黄泉比良坂で集合でいいか?」
了解したと藍は言うと通信を切った。クロは今回別行動のようだ。
「秋津! 初任務だってよ! 行こう。」
「うん。私、頑張るね!」
二人は東の神木に向かっていった。
――続く
本日は更新二本立て( *˙ω˙*)و グッ!
色んな方からアドバイスを貰いました(*´ω`*)
ありがとうございます!
今回から参考に文字数を減らしてみました!どうかな読みやすくなるのかな|゜Д゜)))




