おいでませ異世界
ダンジョン作りはもうすこし先です。
「・・・・・」
目を覚ました私は言葉を失った。
一面に広がる緑、緑、緑!都会で暮らしていた私にとって人生で一度も見たことがないだけにその破壊力は強烈だった。
「・・・ここ、どこ?」
こんなに綺麗な森なんて前世にあっただろうか?なんか虹色の蝶々が飛んでるし・・・。まさかとは思うけど、ファンタジックな世界に来てしまったというのであろうか。だとしたら少し残念だなぁ・・・、せっかく元の世界の知識を生かして活躍してやりたいと思っていたのに。
「とにかく、ここがどこかをしらないとね!」
まだここが前世と違う世界と決まったわけじゃないしね!と自分を奮い立たせて歩き出す。
「そういえばあの女神が力を授けるとか言ってたけど、なんだったんだろう?」
しばらく歩いたところでそんな疑問が浮かんだ。てっきり身体能力が超人的になるとかそういうのだと思っていたのだけれど、そんなことはなかった。普通に疲れるし今現在足が痛い。魔法みたいなものが使えるのかとも思ったがそんなものは1mmたりともつかえなかった。
「ゲームみたいにパラメーターみたいなのが出てこないのかなーってうおうっ!?」
突然現れたタブレット程の大きさのディスプレイに頭をぶつけてしまった、痛い。
「なにこれ・・・」
姓名不明 種族 人族 Lv 1
基本ステータス
攻撃力 10
守備力 10
魔法攻撃力 10
魔法守備力 10
速度 10
運 5
「これが私のステータスかー・・・ってザコッ!なにが力を授けるよ!こんなんじゃ人類を救うなんて無理だよ・・・ん?特殊ステータス?」
ディスプレイに表示された文字に目がいく。
特殊ステータス
《不死》 S
《ダンジョンクリエイト》 ?
「はぁ!?」
不死って、え!?強っ!というかこの世界って現実のものなのにステータスってどうゆうこと?あとなんだろうこのダンジョンクリエイトって・・・。
気になったのでディスプレイをタッチしてみると・・・。
《ダンジョンクリエイト》
ダンジョンの主となり自由にダンジョンを創造することができる。このスキルにはレベルがあり、スキルの発動時間より上昇する。それによりトラップや宝箱、属性などを配置することができるようになり、ダンジョンを超えて、ダンジョンタワーを創造できるようになる。現在のLVは1。
・・・。ダンジョンの主になる・・・?
「はぁ!?どうゆうことよこれ!?基本ステータスから特殊ステータスまで勇者の要素皆無じゃない!・・・ん?」
ふとここで女神との会話を思い出す。そして同時に疑問を覚えた。そういえばあの女神は勇者になれなんて一言も言ってなかった。・・・あれ?どうゆうこと?考えども考えども答えは見つからずその場に私は立ち尽くした。
だがその思案は突然の轟音によって遮られた。
「な、なになに!?」
慌てて視線を音のなった方向を見てみるとそこには・・・。
「猪・・・?」
それ以外に形容のしようがないくらいの前世で知っている猪だ。見た目からするとあれは二ホンイノシシだろうか。・・・って冷静に分析してる場合じゃない!
「グァァァァ!!」
「・・・!」
猪がこっちに向かって突進してきやがった!ど、どどどうしよう!
「うおぉぉぉ!」
咄嗟に横っ飛びで突進を回避する。正に間一髪、猪が突進した方向を見てみるとなんと大樹が一本ぶっ倒れていた。
それを見た瞬間冷や汗が背筋を伝い、恐怖と同時に逃げなくてはという衝動にかられた。
「グルァァァァァァ!!!」
「・・・・!!」
だが一歩行動に移すのが遅かったようだ。猪はもう目前まで迫っていた。回避はもう不可能、・・・殺される!
いや、《不死》があるから死ぬことはないか。ならなるべく痛くないように殺してくれるとうれしいなぁ・・・。
覚悟、というか諦め私は目をとじた。
「・・・あれ?」
一向に猪の衝撃が来ないので恐る恐る目をあけてみると・・・。
「・・・へ?」
首から上が胴体とサヨナラしている猪の姿があった。
「ほっほっほ、嬢ちゃん運が良かったねぇ、儂が一歩遅かったら死んでたよ?」
声のする方向へ視線を向けると、猪の首を持ちながら若干のドヤ顔をキメて微笑んでいる初老の男性がいた。妙にハイカラな服を着ているあたり貴族かなにかなのだろうか。そしてそれが微妙に似合ってないあたりが笑いを誘ってくる。
「む?いま命の恩人に対して失礼なことを考えなかったかい?」
あれ?心よまれちゃったかな・・・?まあこの考えは終わりにしよう。
「あ、ありがとうございます」
「そんな堅くなりなさんな、ここで会ったのもきっとなにかの縁、嬢ちゃん名前は?」
うっ・・・しまったどうしよう、私まだ名前ないんだった。どうする・・・ここで今適当につけてしまおうか。あるいは正直にいうべきか・・・。
そんなふうに私が言葉を発せずにいると・・・。
「・・・そうか、悪いこと訊ぃちまったな」
どうやらあっちのほうがなにか勘違いをしたらしく予想外の答えが返ってきた。奴隷か家出娘ってところかな?よく見ると着てる服ボロボロだし、そう勘違いされてもおかしくないかも。
「・・・ついてこい」
「・・・?」
そう言うと初老の男性は踵を返して歩き始めた。
どうするか・・・。よく知らない人間を簡単に信用するのは軽率だとは思うけど、このまま森を彷徨っても何の進展がなかったわけだし・・・よし、この男についてってみよう。
私は男の後を駆け足で追いかけた。
しばらく歩うといつしか森を抜け、草原に差し掛かってていた。全く都会暮らしの私にはこの景色が新鮮てならないよ。こんな景色が見れるのなら田舎もいいかなーとも思ったが、やっぱり無理かな、きっと3日ぐらいで都会の便利さが恋しくなってのたうち回る姿が容易に想像できる。
「もう少しじゃよ、だから辛抱せい」
「はい・・・」
まだなのか・・・いい加減足が限界なんだけど。
歩く・・・・・まだ歩く・・・・・まだまだ歩く・・・・・ひたすら歩く・・・・
「ここじゃよ」
いい加減ぶっ倒れるかと思った時、ようやく目的地に着いたようだ。顔を上げてにると・・・これは・・・学校?私が知っているものより少し小さいが、これは誰がどっからどう見ても学校だ。学校があるということはそれなりに文明は発達しているみたいだ。
だがここに私を連れてきてどうするつもりだ?もしや雑用として働かされるとか・・・。そうだったら困るなぁ、まぁそうなったら逃げればいいのだけれど。
「これから嬢ちゃんにはこの学校に通ってもらう」
ああ、この世界に生を受けて早々、こんなことになるなんて・・・やはり神は私に平穏を許してくれないらしい。