プロローグ
「ここは・・・?」
目を覚ますと見知らぬ場所に私は座っていた。
そこは酷く閑散としていて、私が今座っている椅子以外に家具はおろか物という物が全く存在していない。そのくせ部屋だけは妙に広い。
「誘拐でもされたのかな?」
それならばこの部屋の奇妙さや目が覚めるまでも記憶がないのも頷ける。・・・そうだったら最悪なのだけれど。
「んん?」
何か・・・おかしい、違和感を感じる。何だろう?
しばらく部屋を見渡すとやがて違和感の正体にたどり着いた。
「ない・・・」
そう、この部屋にはないのだ、部屋には絶対なくてはならない・・・扉が。
どどど、どういうこと!さすがにこれは・・・おかしいでしょ!出られないじゃん私、誘拐の方がまだましだったかも知れない・・・どうしよう・・・。
「ようやく目が覚めたようね、待ちくたびれちゃったわ」
・・・!
突如目の前にどこからともなく人?が現れた。歳は20代前半といったところだろうか・・・ってこいつどこからでてきてんの!?
「これからあなたには転生してもらうことになるんだけど・・・」
と、とにかく色々訊かないと・・・ってこいつ今なんて言った?転生?私、もしかして死んじゃったの?
「あの・・・」
「なんですか?」
「私、死んじゃったんですか?」
恐る恐る尋ねてみると・・・
「はい。そうです」
なんと顔色一つ変えずにそう答えやがった。少しはこっちの身にもなってほしいよ・・・。
「あっ、もしかして記憶がなくなっちゃたの?」
確かに私には目覚めるまでの記憶がないけど・・・あれ?よくよく考えると私、目覚める前の記憶どころか、ここに至るまでの全ての記憶がない。つまり、自分の名前すらわからない。あれ?本当に私死んじゃったの?
「ま、いいか」
え?
「どうせ転生するんだし、むしろ古い世界の知識なんて足枷でしかないもんね」
「ちょっと待って!」
「何?」
話がどんどん進んでいたので慌てて止めると露骨に眉間に皺を寄せられた。いや、そんな「お前何言ってんだよ早くしろよ」みたいな顔しないでよ、この状況なら誰だってこうなるでしょ。
「まずあなたは何者なんですか」
「私は神よ」
神って・・・いや、今までことを考える大して驚かないっていうか知ってたというか。
「これから私はどうなるんですか」
「何回も言わせ言わせねいでよ、転生よ。て・ん・せ・い!」
・・・まさか私が転生することになるなんて・・・この神の言い方だと私に拒否権はないみたいだし。ただまあ、今の私には元々いた世界の記憶がないわけだし、むしろ再び生を受けることができるのだからこれはチャンスじゃないの?・・・そうだよ、これは私にとっていいことしかないじゃない!
「納得してくれたみたいね。じゃあ早速と言いたいところなんだけど、その前に一つ頼みがあるわ」
「・・・なんですか?」
やはりそう簡単にはいかないか、とは言え頼みとは一体なんだろう。私は今度こそ普通に生きて天寿を全うしたいのに命がけの頼みなど御免こうむりたい。
「人類を救ってほしいの」
「・・・は?」
え、どうゆうこと?私に勇者にでもなれというの?正に命がけじゃん!?
「無理です!」
「大丈夫よ、ちゃんと力を授けてあげるから」
「そうゆう問題じゃなくて!」
私に人類の命運を背負えと?無理無理!そもそも戦うってことはたくさん生き物を殺すってことじゃない、人間はその殺されたのを食べてるとわいえ自分の手でなんてできないよ・・・。
「安心しなさい、あなたが実際に戦う必要はないわ」
え、どうゆうこと?というかいま心よんだよね?
「詳しいことは・・・」
・・・!!
急に視界が湾曲し、同時に世界が傾いたような衝撃に襲われて体大きく跳びはねた。
「ちっ・・・もう時間みたいね」
へ?時間ってなにどうゆうこと?私どうなるの!?
「私から説明できるほどの時間はもうないわ、悪いけどあとは自分で頑張って頂戴」
「え!?ちょ、ちょっと待・・・」
その言葉を最後に、私の視界は完全に闇に染まり、暗闇の中に私の意識は落ちっていった・・・。