序章 *夢の形 そのままじゃ変われない自分*
夢をかなえるゾウに感化されてだいぶ前に書いていた小説、現時点で未完成ですが同ジャンル小説便利屋来訪赤子と比較し 人気な方を書き進められたらなと思っております。
好き嫌いがはっきり分かれる小説らしいので、皆様の助言、苦情や絶賛のお便りいただけたら励みになります。
序章
*夢の形 そのままじゃ変われない自分*
「やりました、社長!
アメリカにも支部作れそうです。
ついでにアメリカで有名なK氏とのアポもとれ、
此方の企画に快諾してくれ……」
「社長、ゲーム化の話ようやくアポとれました。
さっそくA案の企画から取りかかって……」
気がつけば多忙。
睡眠時間すら削っている毎日。
でも毎日が充実していた。
貯金をためにため、会社を興し、
日本に新しい風を吹かせた。
第一人者、それがボク。
雑誌、グッズ、ゲームにアニメ…。
この会社の存在を知らない人は老若男女問わず殆ど居ないといっても過言ではない。
正に人生の勝ち組まっただ中だった。
「よくやった! アメリカは日本より
大きいからな、忙しくなるな!」
今最初に話しかけた人の名前は……誰だっけ?
ふと首に下げている社員証が目に入る。
『国際課取締役 野中 慶介』
そう、野中だ。
ん……?
なんで名前忘れていたんだろう。
大事な右腕的、仕事の相棒なのに…。
「の、野中君?」
「はっ、はい? 何でしょう?」
「あっ、いや……」
自分は何故、しどろもどろに言っているんだろう。
社長なんだからもっとビシッと!威厳のある態度で接しないと。
まずは、ビシッと(顔を)決めて……。
「ひっ、引き続き頼む」
「はい」
引きつった顔になっていないかが心配だった。
そんな中、もう一人の方が身振りをはじめたのでそっちを向いた。
「えーっと、社長、わ、私の方は」
「うん? 君は……」
アレ……?まただ、この人の名前すら分からない……どういうことだ?
そして、自然に胸元にある社員証に目が行く。
『外務課取締役 中川 敬也』
「な、中川君も宜しく頼む。
A案も良いが、中川君も音楽ゲームは好きだったよね?
※音楽ゲームというのは、リズムに乗るゲーム
ポピュラーなもので言えば、太鼓の達人もその一つである。
その会社ならM案に関して、全面的に相談やら
出来るんじゃないかな?」
名前が分かると同時に、その人の性格もすっと頭に入ってきた。
「で、ですね、社長!
そう言えば、忙しいかもしれませんが、きぐバンのライブ参加されますよね?」
きぐバン?何だろう、何の略なんだろう。
聞きなれない言葉…そう思った時、きぐバンの
『きぐ』が何の略か、すっと頭の中に入ってくる。
そう言えば、そのイベントには以前参加した気がする。
頭の中に思い出されるその光景はとても楽しい。
ワクワクする。
「おぉー、絶対行こう。
ひと段落ついたし、皆で参加しようか?
煮詰まっても良いこと出来ないしさ」
「腹が減っては戦は出来ぬみたいに、
ストレス溜まってはやる気が沸かぬみたいな感じですね」
「良いですね。そう言えば取引先にもライブとか良く
参加している人がいましたし、チケット送るってのは…。
あっ、慶ちゃん、社長用にアリーナ席あるよね?」
「勿論、社長用のアリーナ席とその左右も確保してます!」
「おっ、流石、慶ちゃん!」
会話は盛り上がり、きぐバンに関する雑談が続いた。
「紫苑ちゃんも良いけど、RIDE君も……」
中川の話を聞きつつ、以前に見た
ライブ光景を思い出して思わずやけてしまう。
うんうんと会話に同意しているボクがいた。
「やっぱ紫苑ちゃんよりRIDE君だよねぇ」
「ちょっ、あんたら、男なら紫苑ちゃんを支持……」
「んっんん"っ!」
野中のタメ愚痴に、
中川の『社長に失礼だろう』という視線が送られる。
「……あっいや、社長失礼しました!」
慌てて謝る野中、一瞬何故謝られるか分からなかったが、
ボクの身分を考えると同時に
『親しき仲にも礼儀あり』という言葉が過った。
確かに、立場ではボクの方が上だ、
でも、こんな話題だからこそ立場なんて関係無く、本音で喋りたかった。
「いやいや、大丈夫よ。
こういう時はタメ(本音)でいかんと。
好きな気持ちは分かるよ。
オレらの好きな気持ちも多分、
野中と似たようなもんと思うよ?」
「さ、流石社長。
でもなるべく失礼な口調に
ならないように気をつけます」
「なるほど、なるほど。
しかしながら、最初から付き添ってきた
自分達ですが、資本金や行動を起こしたのは
全て社長なので自分達は社長に頭があがりません」
「良いって! 気にすんな!
堅苦しいこと抜きで本音でぶつかる時も大事。
えーと、TPOだっけ?時と場合をなんちゃら…」
そんなことを話していると野中が話題を元に戻そうとする。
「なるほど、大事なことだと思います。
何にせよ楽しみですね、今度ある、きぐバン」
「ですね、紫苑ちゃんやRIDE君に早く会いたい」
野中と中川はきぐバンのことを想像してにやけている。
ボクはちょっと意地悪を思いつき、新たに話をふった。
「きぐバンの後の打ち上げはどうする?」
「「う、打ち上げ!!?」」
野中と中川が何かに期待をするかのように
驚いて返事をする、予想通りの反応だ。
「あ、ごめん、今の忘れて。
ボクは一人で(きぐバンの)皆からお酌してもらうから、
んで、酔ったのを口実に、あんなことやこんなこと……」
「だぁあああ!! だ、駄目ですよ! 一人占めだなんて」
「プライベート用の録画にカメラ回しますんで
ついて行っていいですか?」
「お前らなぁ……」
「「……へっ?」」
突然のボクの発言に二人は驚く。
「一人で行くのは冗談だ。
仲間だろ!? 喜怒哀楽、仕事関係も、
一部のプライベートも共にするって約束したろ?」
その発言にきょとんとしていた二人の表情が尊敬の眼差しに変わる。
「社長っ! 最高です!」
「社長、人として愛してます!」
二人が抱きついてくる。
例えるなら、試合の勝ち負け云々で指導してくれた
顧問の先生の胸に飛び込むみたいに?
?とついてるが、先生側も指導された側も
やったこと無いのであくまで予想という意味でつける。
数秒後、彼らが落ち着いたのを見計らい、
ボクは二人の背中をぽんぽんと叩く。
二人はボクから離れて言った。
「社長、大成功させましょうね?」
「おぅ!」
「社長、オレ、社長に会えてから幸せです」
「ボクも、会社立ち上げて野中君と中川君に
会えて幸せだよ。あははっ」
「「あははっ」」
三人で目を合わせて、場が笑いに包まれる。
ボクは今が幸せだ。夢なら冷めないで欲しい。
そんな中、ポケットの携帯がバイブレーションを発する。
ジッジッ、ジジッ~~ジッジッ、ジジッ~~ジッジッ
「あ、電話みたいですよ、社長」
ジッジッ、ジジッ~~ジッジッ、ジジッ~~
「んっ?あぁ? うん分かってる」
見覚えのある使い古された折り畳み式の携帯。
鍍金が剥がれ、いかにも使い古されている感じで
お金持ちの社長には似合わない代物だ。
開くと同時に辺りが真っ白な世界になった。
画面を見ず、受話器ボタンを押し耳に当てる。
ボクは突然のことに少し驚きながらも、
電話越しに話しかける。
「……もしもし?」
「朝よーっ、起きなさぁー……」
「っへ?電話で何言うてんの?
起きてなきゃ電話でられない……」
ジッジッ、ジジッ~~ジッジッ、ジジッ~~
(アレ?)
今電話出ているのに、ふたたびバイブレーション音が聞こえる。
何故?と思った時、瞼が開いた。
目の前にはありきたりの天井、いつもと変わらぬ部屋。
それは夢と比べると天と地をひっくり返したような衝撃的な現実だった。
「……」
ボクは言葉を失った。
……夢かぁ……。
そう思うと同時に、天井を向いたまま
手探りでバイブレーション音の元をたどった。
手元に確かな感触。
掴んだ携帯を開き、電源ボタンと思われる所を長押しする。
そして……また眠りについた。
願わくば、さっきの夢の続きを見れないか……と
いつかビックになれるよね?……ボクも。
少しでもこの小説があなたやその周りの人の役に立てば幸いです。