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第59話 説得

お久しぶりです

周囲の今まで動きを止めていた魔物達が全て空に腹を向けている。

虫の魔物ばかりなので、節足動物特有の関節部分が非常に気持ち悪いが、事態はそれ以上に非常である。


おそらく、彼らの前言から推測するに、自身の最も弱い部分を相手に晒す腹を空に向けたこの姿勢は土下座と同じような意味合いなのだろう。


俺のみが《言語理解》によって分かっている今の状況……魔物が降参したのだ。


「突然なんだ⁈構えろ!虫どもが何かやってくるぞ!」


サッシさんの指示が飛ぶ。

明確に聞いたわけではないが、こういう時の対応からしても、ジョーカーズのリーダーはサッシさんのようだ。


「ちょっと待って下さい。信じてもらえないかも知れませんが、魔物が降参してきました。話をさせてもらえませんか?」


降伏を申し出ている敵を容赦無く攻撃するのは気がひけるし、彼らが大人しく帰ってくれるのならこれ以上のことはない。油断なくそれぞれの武器を構えるジョーカーズの人を止める。


「はぁ?あんた何言ってんの?さっきのデタラメなレベルに加えて魔物使い(テイマー)系のスキルを持ってるとでも言うの?」


テイムか。前にメイも似たようなことを言っていた気がするが、魔物と会話することが出来るものもあるのか。

ラノベの知識や、メイの発言から考えて、魔物を仲間にするようなやつだろうけど、今俺が持っているスキルは《アイテムボックス》、《言語理解》、《水面》、《絶倫》である。

テイムなど出来ないし、下手にごまかす必要もないので、正直に言おうと思う。


「いえ、《言語理解》で魔物の言葉を聞き取ったんです」


「いい加減にしなさいよ?あたしたちのことバカにしすぎよ!《言語理解》って言ったら辺境の民族とか、集落で共通語を使っていない相手に一部の単語を伝えられるとかいう使い道の無さすぎるスキルじゃない!」


杖を下す気配がないどころか今にも詠唱を始めそうなシェイさんを怒らせてしまったようだ。

サッシさんも信じてはいないようで、訝しげな顔をしている。

ミリーさんの表情は角度的に見えないが、俺の言葉を聞いた時、こちらをチラリと見た気がする。

ドラフさんはこちらの話に興味が無いという訳では無いだろうに、先ほどのサッシさんの言葉に応えてか、全く動じず戦闘に備えている。

全くもって個性豊かなパーティーである。


そのうちの一人であるシェイさんの発言の中には信じられない内容があった気がする。

《言語理解》が使い道の無いスキル?え?


「ハァ、シェイ。レベル3500何てバカバカしい話を一旦とはいえ信じることにしたんだ。シューヤが魔物と意思疎通できるというのは信じよう。第一、敵だったとしても俺たちでどうこうできる相手じゃ無いよ」


「ふ、フン!わかったわよ!」


「あぁ、シューヤ、手の内を隠したいのは分かるが、伝えられる限りは君の力を伝えて欲しい」


どうやら彼らの認識では俺の命を救ってきた《言語理解》は意味のないスキルらしい。

……いや、レベルか?そうだ。俺の《言語理解》はチートの名にふさわしく初めからレベルマックスだったのだ。

おそらく彼らの言う通り《言語理解》は初めは全く使えない(死に)スキルも同然であり、それがレベルアップを繰り返すことであの強さに至るのだろう。


だとしたらここで《言語理解》と言い張るのはいい策とは言えない。

別に俺に信じてもらう必要はないのだから。サッシさんの話に乗ることにしよう。


「下手すぎましたか。でも、このスキルについてはあんまり話したく無いんです。

もし、皆さんを危険に晒すことになれば、俺ごと焼いてもらって構いません!ここは俺に話をさせてください!」


頭をさげる。

ここはそうするしか無いだろう。

実際には、燃やされたところで大したダメージは無いのだが、誠意を見せるのが重要だろう。


「分かっーー」


「シェイ、お前が言うな。でもまあ、分かった。5分だけ待とう。それ以上はダメだ。シューヤ、君ごと燃やしてもらうよ。魔力は大丈夫だよな、シェイ?」


「……」


さっきまでよりもより真剣な顔のサッシさんに対して、言葉を遮られたのがよっぽど頭にきているのか不良のようにガンを飛ばすシェイさん。

あんた子供か!


「シェイ?」


「大丈夫よ!シューヤ、全力で燃やされたくなかったら何とかしなさい!」


2度目はちゃんと答えてくれた。

さて、やることは決まった。5分以内に魔物を説得するだけ。

相手は降伏を求めているようだし、大丈夫だろう。


「分かりました!ありがとうございます!」


〜〜〜


さて、腹を向けていた30程の魔物の長と話した訳だが、なかなかに可哀想な事情であったと言える。


何でも、俺が世界中の魔素を集めたことによって空気中の魔素濃度が低くなり、活動を抑えていた彼らの元に、件の魔王から徴兵の命が届いたらしい。


そもそも魔王はその地域の魔物の王ではあるが、統治や政治といった面倒な事は行わず、自らに障害となることが起きた時、何の見返りもなく周囲の魔物を利用するだけの存在であるのが普通ということだ。

俺が見た魔物の町の氷結の魔王は特殊な存在みたいだ。

周囲の魔物()を護ることさえしないのだから、夜警国家にも劣る。

これほど横暴な王もいないと思うが、魔物の中には知性を持たないものも多いらしく、力による独裁が行われるのは当然であるらしい。

魔物の社会は弱肉強食なのだ。


余談だが、俺の知識に夜警国家なんて言葉があったり、これだけごちゃごちゃした内容を5分で理解できたのは単にテスト勉強のおかげである。

詰め込んだ知識をいきなりここで使うとか、人生何が起こるか分からないね!


虫たちに話を戻すと、魔王とその直属の兵であるジャイアントたちを除けば、大した見返りもなしに今回の襲撃は行われているとのこと。


もっとも魔王の狙いはウェタンの人々、及び物資による魔素の確保らしいので、魔王がそれを得て、魔法などを利用することによって辺り一帯の魔素濃度が上がることは明白なので、彼等も恩恵に授かることは出来る算段だったのだろう。


その辺の意図を降伏の相手である俺に伝えないことは攻められることでも無いし、バカな俺にでも分かるような説明をしたところからも、彼等が切羽詰まっていることは伺える。


聞いた内容と推測を簡潔にまとめてサッシさん達に伝える。


「なるほどな」


「でもぉ、これだけの大群にぃ、向こうは撤退指示を出せるのかしらぁ?」


「あたしたちの方はあたしが《ミストレポート》を使えば相手側の降伏は伝えられるわ!」


「ハッ、お前の《ミストレポート》は霧が無いと使えない欠陥魔法だろうが」


「はぁ?自分で霧ぐらい出せるんだから関係無いでしょ!」


「はっはっは!ぼうず、本当に魔物を説得出来るとは思わなかったぞ!」


「はい、何とかできました。向こうは将軍が来るそうで、その魔物が指示を伝えるようです」


ドラフさんが説得出来ると思っていなかったのに、5分のタイムリミットで俺を送り出したことや、シェイさんの魔法が使いづらそうなことは置いておくとして、この辺りの魔物の長は先ほど話をした、ビットルの上位種ヘクトビットルである。


ビットルは自動車くらいはありそうなかなり大型の魔物だったのだが、その上位種というヘクトビットルは俺と同じ程度で二足歩行を行っている。


そのヘクトビットルが上空を指差し(実際は指は無いので足の先の鉤爪のようなものだが)ているのだ。


視線をそちらに向ければ数匹のドラゴンのような魔物がこちらに飛んできているのが見える。

大型の魔物や飛行型の魔物の戦力が弱まっていると言っていた割にはかなり大きく、その上飛んでいるが、将としてこれだけの魔物をまとめているというなら納得できる。


「おい、あれが将軍か?」


「そうであります。将軍であるドラゴフライと、その護衛であります」


ヘクトビットルの言葉を聞き、俺は気を引き締める。

俺が圧倒的に力を持っていて有利であるとはいえ交渉の場であるからだ。


ドラゴフライは近づくにつれてその異常な姿を明らかにしていった。

ドラゴンのようだと形容したが、あれは間違いだったと言える。

シルエットだけ見れば西洋のドラゴンと言い張れなくも無いかもしれないが、実体は全く異なる。

ドラゴンの羽があるはずのところには二対の半透明な翅が生え、腹の部分からは大量の細い足が見える。

ドラゴンならば鱗に覆われているはずのそのからだは、それこそ虫のような外骨格の装甲を纏っている。

何よりも異様なのはその頭である。本来ならば荘厳なドラゴンの頭部がイメージされるシルエットにはふさわしく無い赤い複眼が存在感を放っているのだ。


俺がその全容を認めたのとほぼ同時にサッシさんも、その姿を認めたようだ。


「チッ、ありゃ亜竜の一種か。あんな大物もいやがったとはシューヤがいなきゃ本格的に不味かったな」


「亜竜くらいならあたし達でも倒せたわよ!」


「まあまあ、シェイちゃん、私達は他の魔物も相手にしなきゃいけないのよぉ」


「はっはっは、我らでは厳しかったな!」


会話をしながらも油断なく武器を構えるジョーカーズと俺の前に4体のドラゴフライが降り立つ。


とても遅くなってしまいすいません!

次は早めに出せると思います!

読んでいただきありがとうございます!

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