第3話 受け入れ
やっと会話です!あれ?何故か主人公がシスコンになっている……。
「知ってる天井だ」
目を開くと俺は《異世界でチートしよう‼︎》を始めた時と同じ、自室のベッドの上で寝転がっていた。
異世界に行く夢を見ていた気がする。
どれ位寝ていたのだろう。
ドンドン
「ちょっと、返事しなさいよ!」
愛しい妹、鈴音の声がする。何だかいつもより軽い身体を起こしながら、返事をする。
「どうした? もしかしてお兄ちゃんが心配になった?」
「はぁ?何言ってんの?というか、今まで私のこと無視し続けてどういうつもり?」
今まで?どういうことだ?俺がドアを引いて鈴音を部屋に招き入れようとすると、
ズボッ!
「「えっ?」」
なんの抵抗もなくドアノブが抜けた。そして、外にいる鈴音の方にドアが開いていく。
驚いいている鈴音に内心ヒビリまくりながらも何事もないかのように尋ねる。
誤魔化さなきゃマズい。
「無視し続けてってお前何時からそこに居たんだよ?」
「え、いや、い、何時からって私が壁をけっ蹴破ってからよ‼︎」
「えっ?お前そりゃ嘘だろ。俺、今まで寝てたよ」
「はぁ?あんたの○太君にでもなったの?まだ1分くらいしか経ってないわよ」
「1分であんな壮大な夢見られないだろ。もしかして、お兄ちゃんにかまってほしくなったの?」
「もういい!死ね!」
からかっているのだろうか。それにしてはかなり本気のトーンだし、そんな奴じゃない。
とりあえず、ドアノブをそれっぽくはめて時計を見てみると正確には分からないが、ほとんど進んでいない気がする。鈴音の言っていたことが正しかったらしい。
鈴音に謝らねーと。
「鈴音ごめんな、鈴音が可愛くてチョットからかっただけなんだ!」
隣の部屋から返事は来ない。
仕方がないので鈴音が開けた穴に向かってもう一度言う。
「ごめん!」
返事はない。
「ごめん‼︎」
「うるさい!私も穴開けたのは悪かったわ。絶対覗かないでね‼︎」
「お、おう」
注意されたんだか、謝られたんだか、念を押されたのか、覗きを振られたのかわからない。
とりあえず穴を覗くとガムテープが、貼られていた。
「ご飯出来たよ!」
母親の声が聞こえて、妹が一階に向かう音が聞こえた。
その後ドスンッ!という音が聞こえたのでおそらくこけたのだろう。
「続きをやろう」
一方俺はまだスキル選びしかしていない《異世界でチートしよう‼︎》の続きを始めようと、ベッドの上でD○を探す。
うちの母は夕食が出来る前に呼んで、少しでも俺たちを手伝わそうとすることが多いのだ。
基本は俺も手伝うのだが、今回のように忙しい時は別だ。
俺がD○を見つけ出すと電源が切れていた。
それほど残念じゃないな。まだスキル選びしかしてないし、変な夢のおかげでスキルは覚えてる。
充電器にD○を差し込んでいると、再び母の声が聞こえる。
「ご飯出来たって言ってんだろ‼︎」
これはやばい。なかなか怒っている。
小学校高学年の時にオンラインゲームにハマった時期があり、イベント中にこの怒りの声を無視したことがある。
その時は、夕食だけでなく、3日後の夕食まで全部抜かれた。4日目の朝ご飯が俺の分もあった時には泣きそうになったものだ。
3日も弁当と、カップ麺だけというのは、当時小学生の俺にはかなり効いた。トラウマである。
まぁ、そういうわけで俺はD○を置いて、急いで階下へ向かう。
階段を駆け下りていくと、
ツルッ!
足を滑らせた。階段が何故か水で濡れてツルツルだったのだ。
家庭内事故の発生場所ランキングで、風呂場についで2位の階段でこけるとなると普通かなり危険なのだが俺は何故か落ち着いていた。
そしてほとんど無意識のうちに、滑った足とは逆の足で階段をけり、小学校で習う後転のように手を構えると、倒れこみながら手を上の段につき、その状態で腕を伸ばした反動で一回転してほとんど音もなく綺麗に着地した。
「えぇぇぇ⁈」
俺SUGEEE ‼︎ 今の見た?ハリウッドスター並みの身のこなし!やばくね?
マジで俺どうしたんだろう?私、自分が怖いわ〜
「おい!早くしろ!」
「はい。すいません」
ハリウッドスターもお母さんの怖さには勝てないだろう……。
〜〜〜
夕食を食べ終り、シャワーを浴びた俺は、すぐさま部屋に戻ると、D○の電源を入れる。
ドアノブと階段での動きは明らかに不自然だった。
でも、異常な夢も、さっきから変な体も、俺の仮定が正しければ、これに答えがある。
ゲームの画面は写真のようなタイトル画面に移る。
右上には「var.1.1」と、入っている。
さっきは興奮していて見逃したのだろうか。
次に進めると、
……あった。
「始めから」と「通信で遊ぶ」の上に、さっきは絶対になかった「続きから」の文字が。
このゲームにはさっきはデータがなかったのに今はある。
下の「お知らせ」もなかった気がするが、それよりも「続きから」だ。
これが俺がゲームをスキル選びしかしてないゲームを自分の体でプレイした証拠じゃないか。
3度目でやっと確信した
俺は本当に本当に異世界に行っていたらしい。
もう一度異世界に行けるチャンスが目の前にある。
しかし、行く前に色々確認しないとマズい。
まずは、今の俺の状態か。
「鑑定!」
***
名前 滝 秋夜
年齢 16歳
種族 人間
職業 学生
思考 あー、はいはい……
歴史 0歳……
ステータス
LV3527
HP:21169/21169
MP:35/35
STR:7067
VIT:7067
INT:10591
MIN:3539
AGI:10591
スキル
《鑑定眼》LV.MAX
《アイテムボックス》LV.MAX
《魔法抵抗》LV.MAX
《メテオ》LV.MAX MP15
装備
合成素材使用伸縮自在着(上)
合成素材使用伸縮自在着(下)
***
本当にこのウィンドウが出たことに最初は軽く驚いたものの、例によって例のごとく思考と歴史を高速スクロールし、ステータスを確認する。
…………へ?俺のステータス表示はバグってしまったのだろうか?
えーと、
「合成素材使用伸縮自在着ってなんだよ!」
俺が着てるのは唯のジャージだよ!なんで漢字だらけの痛そうな名前になってるのかな?
…………ダメだ。ステータスが気になって突っ込みにキレが出ない。
だっておかしいじゃん!レベルが500倍以上になるなんてあり得ないじゃん!あの《メテオ》の規模ヤバすぎだろ‼︎
どうしよう……。
あ、俺って自分以外の人のステータス知らなくね?
発想の転換で、むしろ向こうの世界だとこれ位が普通なんじゃないだろうか。
もしかしたらこの世界の人もみんな今の俺くらいなのかも知れない。
それなら、今までの人生で周りより上手くいかなかったのもなっとくだな!
そんな結論に至った俺は、自分の部屋には俺以外の人はいないので、仕方なく妹の部屋との穴に貼ってあるガムテープをカッターで切り、中を覗く。
「ふぇ?」
思わず、変な声と共に飛び退く。
俺が見た先にあったのは超どアップの目。
うちの妹の澄んだ目が俺の目を見返していた。
ゆ、夢だ。悪夢に決まっている!
愛しい妹に覗きをバレるなんて夢だ!
もう一度覗いてみると、そこには何事もなかったかのように制服のポケットから携帯を取り出している妹の姿。
良かった。やっぱり夢だったんだ。
俺は当初の目的通り小さな声で《鑑定眼》を使う。
「鑑定」
***
名前 滝 鈴音
年齢 14歳
種族 人間
職業 学生
思考 ふっふふ〜ん、けいさつ、けいさつ〜ひゃっくとうば〜ん……
歴史 0歳………
ステータス
LV28
HP 67/67
MP0/0
STR:175
VIT:94
INT:148
MIN:94
AGI:148
装備
コットンパジャマ(上)
コットンパジャマ(下)
***
「すいませんでした‼︎」
俺はその場で土下座した。
〜〜〜
鈴音には30分近く怒られた。
最初の10分は
「可愛い妹に怒られるのとかご褒美かな〜」とか、
「ショートにするのに全力で反対したけど、ロングより似合ってるかもな〜」
などと、思っていたが、20分を過ぎたあたりからいつ終わるとも知れないお説教はかなり精神に来た。
ちなみにHPが2減っていた。
今の俺からしたら気にもならないが、少し前ならそこそこのダメージになっていた。
鈴音を怒らせるのは1日1回位にしよう。
そして、俺が30分の説教を代償に手に入れたのは、鈴音の失望だけではない!
そう、小さい頃から優秀で兄として嬉しいやら比べられて悲しいやらだった妹のステータスを手にいれたのだ!
鈴音のステータスは最初の頃の俺よりかなり高かった。
しかし、鈴音のステータスを見て、やはり俺はチートな存在であることを知った。
やっぱそうだよね!そうだろうとは思ったけどね!
決めた‼︎こうなりゃ、チートぐらい使いこなしてやるよ!
そして、俺の高校生活最大の難題に対する解答と、目標を手に入れる。
「チートで高校生活を楽しもう」
ありがとうございます!
次回は今回以上に説明っぽくなるかも知れないですm(_ _)m