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第43話 黒い竜

短めです。


突然俺を見て、竜骨の拳士などと呼んできた魔王の進路上に田上が立ち塞がる。


「……何のつもり?」


「なんだこの小さいのは、死ね」


魔王の手に黒い靄が生まれ、それをメイに向かって投げつける。


「……鑑定、私が宇宙人を守る」





いやいやいや!『鑑定』じゃねーよ!俺を守ろうとしてくれんのは嬉しいけど!

魔法少女の変身の言葉じゃ無いから!相手の情報がわかって、目が光るだけだから!逃げろよ!


「逃げろ!田上!お前じゃ無理だ!」


「……大丈夫。《鑑定眼》があれば負けない」


田上が避けながら俺に向かって言葉を紡ぐ。


確かに俺から逃げた時や、テンプレの先輩の攻撃をほとんど完璧に巻いていたところはすごい。


「……チッ!」


しかし、今回は田上の避け方がいつもよりおぼつかない。

魔王の攻撃速度と言うよりはむしろ……


「どうした?目でも悪いのか?」


そう、今は夜。

あたりには戦火や、魔法陣、月による光があるとはいえ、黒い霧などがまともに見える状況では無い。


次の瞬間、田上のなびいた長い髪に黒い霧があたり、髪が消滅する。


「消滅させる能力?」


そんな呟きが田上と魔王に届くまでの間の刹那に状況はさらに悪化した。


髪の消滅に一瞬、ほんの一瞬だけ田上にできた意識の空白を埋めるように魔王は距離を詰め、足を軽く刈る。


そして、田上は見事なまでにバランスを崩し、背中から地面に落ちる。


「消滅?そんなつまら無いものではない」


「……宇宙人こいつの能力は分解!」


俺の問いに答えが返ってくる。

しかし、そんな回答についてじっくり考えている余裕はない。

魔王が田上に向けて手に黒い霧を生成し始めたのだ。


「田上!体を起こすなよ!《ウィンド》!」


メイのおかげでなんとか動けるようになった体を起こし、魔王に向かって《ウィンド》を放つ。


魔王はこちらをチラリと見ると黒い霧を俺が放った《ウィンド》に向ける。


「チッ、しかしこんなもの深き闇の前では無力」


無力などとは言いながらも、両手に黒い霧を発生させ、なんとか抑えている魔王。


《ウィンド》は威力が弱い代わりに、持続時間と燃費がいいのが特徴だ。


消滅だか分解だか知らないが、あの能力の使い方からして、確実にコストはかかる。


コスト無けりゃ出したり消したりする必要ないしな!


そして俺は未だに世界中の魔素の99パーセントを所有している。


つまり、このまま途切れずに《ウィンド》を打ち続ければ、こいつは倒せる!


「……ゴホゴホッ、宇宙人!止めて!」


田上の制止に俺は一瞬、攻撃を止めようとするものの思い留まる。


「田上!これを続ければ絶対にあっちのMPが先に尽きて勝てる!」


「……そうかもしれないけど、その前に私が、はぁ、はぁ、死ぬ」


田上が死ぬと聞き、すぐに《ウィンド》を消す……事は出来なかったので、別の方向に逸らす。

魔法の扱いは難しいんだよ!


「どういう意味だ!田上!」


「……分解」


「分かんねーよ!」


「……空気中に含まれる物質が分解によってイオン化して息ができなくなる、またはそれを避けようと、下手に動いてフレンドリーファイアで死ぬ」


「分かんねーよ!」


「……バカ。…………私が奥の手使うから、宇宙人の事はメイに任す」


なぜ死ぬのかは理論的な言葉が出すぎてよく分からないが、突然名前が出たメイの方に視線がいく。


メイは田上の方を見ながら俺の腹部に治療を施していた光る手を俺の頬に持って行き、両手で顔を抑える。


同時に後ろの方で田上が何かを言った気がして振り向こうとするが、まだ回復が全然間に合ってなく、力の入らない俺の首は本気のメイに抑え込まれてしまう。


そして何故か真っ赤にした顔で俺の顔に顔を近づけてくる。


え?キス⁉︎キスすんの⁉︎


俺とメイの顔が鼻が触れ合いそうなくらい近づく。


「ゼーッタイに後ろを向かないでください!」


ですよね〜!キスとか無いっすよね〜!


向きたくてもここまで強く首を抑えられていたらそもそも後ろを向けないからね!


というか、それ言うためだけに発動してた魔法、一旦切るレベルで言いたかったんだ!

見ないよ!別に!


グワオオオオオオン!


後ろから聞いた事があるような無いような大きな咆哮が聞こえ、つい後ろを振り向こうとしてしまうものの、メイに押さえつけられる。

前言撤回。メッチャ後ろが見たい。


「何?何が起こってんの?田上は?」


「大丈夫です。コウさんが奥の手を使っただけです。なんでも無いんでゼーッタイに後ろを振り向か無いでください!」


「貴様!なんだその姿は!どんな姿でも深き闇の前では無力……なに⁉︎」


メイはどうしても何事も無い事にしたいらしいが、後ろからは魔王の明らかにうろたえた声。


さらには何かを勢いよく燃やした時のバーナーのような音、とてつもなく大きなものが動いたような地面の揺れ、今はレーザー砲のタメのようなキーンとした音が伝わってくる。


あ、レーザー発射された。


「やったー!コウさん!やりましたね!」


メイが俺から手を離して両手で喜びを表す。


自由になった顔を後ろに向けると、見えたのは赤い点。




目だ。

黒い鱗に覆われた一軒家ほどもあるドラゴンの目が赤く光り、魔王であろう黒い影を見下ろしている。


頭の中にレベルアップのファンファーレが響き、体が軽くなると同時に白い世界に放り込まれたような錯覚を覚える。


白い光の暴力が俺の目を襲った。


ありがとうございます!


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