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第42話 魔物軍

すいません。アイテムボックス整理の時、緑竜の頭蓋骨を入れ忘れていたので修正します。


「っざけけんな!メイと田上のとこ行かねーといけねんだよ!」


部屋に断続的に響く攻撃音。

俺が壁を蹴ったり殴ったりする音だ。


ズンと地面を蹴り、天井もぶん殴るが、そこにもまた魔法陣。

さっき気づいたが、対になる天井と床の魔法陣の間に青い壁が張られているらしい。


俺の攻撃は通らず、休みもなく攻撃していたせいか完全にバランス感覚を失う。


肩から受身も取らずに地面にぶつかるが少し痛い程度でなんの問題もない。

疲れたな。


見上げる先には青い魔法陣。

忌々しいその魔法陣は青白く光り、幾何学的なその形には美しさを感じる。


「『絶対に壊せない』……か」


ギルドマスターのおっさんの言葉を復唱する。

なんか引っかかるんだよな。

確かにこれを壊せなきゃ此処を抜け出せねぇだろうし、勿論、メイたちもた助けられないだろう。






ーーー別に壊さなくても抜け出せばいいのか。


今の俺に《ワープ》なんて便利な魔法はない。

それでもギルド職員たちは俺にこの魔法陣の仕組みを教えてくれた。

中の人のMPで動いていると。


ならば無くせばいいじゃないか俺のMPを。


魔素が何かは分からないけど、あんな量を一気に出すのはやはり怖いので、少しずつ出していこうと思う。


「世界中の魔素!100分の1!」


放出、光、質量、爆音。


それらが順番に圧倒的なスケールで巻き起こり、俺の全身が悲鳴をあげる。


身体中が痛くて痛くて今にも意識が飛びそうなのに、実際に飛ぶことはない。


「あ、あぁ、あぁ、くそ!いでえよ!いてぇよ!あああああああ!……」


痛い、痛い、いてぇ!何が起こってやがる!

もう死にたい、ダメだ、こんなの無理だ。

せめて、意識だけでも飛ばしてほしい、こんなの生殺しだ!

何で俺は起きてる?

前にもこんなことがあった?


「《状態異常耐性》……か。ハァ、ハァ、ハァ」


《状態異常耐性》を思い出すと同時に耐え切れない激痛が全身の気だるさに変わる。


動ける。

麻痺したような体で俺は恐らく俺が放った魔素が原因であろうクレーターの中央から歩き出す。


周囲には街の人々が集まり始めているが、それよりも行かなきゃならないところがある。


最近で1番重い体を無理やり動かし、俺は隣家の屋根の上に跳ぶ。


そこからは街の大量の足音に向けて走るだけだ。

体も気だるさは変わらないものの慣れのせいか少しずつ動かしやすくなっていく。


屋根数個分のダッシュの勢いで街の外壁を飛び越える。

想像よりはかなり低いが、何とか街の外の地面に激突。


痛みもなく、気だるさだけが増した体で俺は立ち上がる。


目の前には怪我の治療をしている人々。


最前線からはまだ遠いらしい。


言う事を聞かない体に鞭打ってしばらく進む。


時々すれ違う撃ち漏らしであろう魔物は移動速度を下げすぎない程度に殺しながら進む。


作業ゲーってのは1回コツを掴めば半分寝ながらでも出来るし、間を空けても少し慣らせば感覚を取り戻せる。


ちょうど1度やった作業ゲーのように魔物を撃破していく。

スライム型のやつの核を掴み取り、狼みたいなやつの腹を蹴り、初めて見た空飛ぶ孔雀見たいのも近くにいる魔物を蹴飛ばして撃墜すればスピードを落とさずに済む。


勿論、殺し損ねた魔物は街の方に行く事になるが、正直田上とメイのついでである以上、これ以上深追いは出来ない。


そうやってスピードを落とさず進んでいくうちにだんだんと金属の打ち合う音や、魔物と人の呻き、雄叫びなど、戦闘音が近付いてくる。


「メ……メイィィ!たがみィィィ!」


一瞬声が出ずに突っかかるものの、叫ぶ事は出来た。

しかし、メイと田上の姿は見えない。


そもそもこれだけ大規模な戦いの中で、2人の少女を見つけ出す方が難しい。

2人とも成長がそんなに良くな……うん、これ以上は止めとこう。


まぁ、見つからないなら仕方がない。

戦いを終わらせよう。

《ウィンド》を強化するため、《アイテムボックス》から『緑竜の頭蓋骨』を取り出し、頭につける。


俺は最前線で戦っている人に当たらないよう、できるだけ高く飛びながら、魔物達の2列目以降を狙う。


飛び跳ねてみると、魔物がどれだけ絶望的な数いるか分かるな。


「《ウィンド》!」


腕を左右に振ることで、風の向きを調節し、多くの魔物を葬る。

《ウィンド》はその性質上他の魔法より攻撃の持続時間が長いのだ。


「何だ⁉︎」

「魔物の数が一気に減ったぞ!」

「お前ら!こっから盛り返すぞぉ!」

「「「「オオオオオオ!」」」」


身体中が言う事を聞かない俺は着地もできずに地面に激突する。

何とか立ち上がった俺は再び飛び上がる。


「《ウィンド》ォォ!」


2度目の《ウィンド》で更に後方に控えた敵を攻撃すると、その砂煙の先に、3つの影。


「田上!メイ!」


またもや地面に激突。

痛みを感じない俺は気にもせずに立ち上がり、走り出す。


「《ウィンド》!」


戦っている人と魔物に突っ込み、どちらからも攻撃を受けるも、人の範囲を抜けると、魔法で無理矢理道を切り開く。


痛みは感じないものの、ボロボロであろう身体を見無いように、前だけを見て走る。


ところどころ魔物を《ウィンド》で吹き飛ばしながら進むと、メイと田上が見えてくる。

魔法に反作用が無いのはこういう時に便利だ。


メイはなかなか苦戦しているらしい。相手は一体。人に近い形で二足で立っている。


「《ヒール》です!」


「愚かな人間どもめ、効かぬ!」


黒一色の二足歩行動物が、口とも言え無いような裂け目から、耳に虫が入ったような不快感を与える声を発する。


田上は岩陰に隠れ、様子を覗いている。


ヒーロー見参と行きますか!


俺は最後のつもりで思いっきり加速し、メイと戦っている黒一色の塊を思いっきり殴りつける。


「しゃらくせぇぇぇぇ!」


黒い塊の頭に当たるであろう部分は爆散し、俺は勢いを殺せずに吹っ飛ぶ。


何度か地面を跳ねたのち、なんとかスピードは止まるが、もう身体に力が入らない。


「し、シューヤさん?シューヤさん!なんて格好してるんですか!」


あぁ、傷のことか、身体どうなってんだろうな。

状態以上耐性のおかげで痛みは無いが、今くらい身体が重ければ、内臓が飛び出てても驚か無い自信がある。

……グロくて吐くかも知ん無いけど。


「いえ、裸のことです」


久しぶりに見た、メイの真っ赤な顔と隙間だらけの目隠し。

魔素が爆発した時になくなったのね。

焦るとこなんだろうけど生憎動け無い。


ついでに視界の端で田上がなんでも無いかのように目も覆わずむしろ光らせながら、こちらにやってくるのだからどうでも良くなるってもんだ。


「……無いに等しい」


え?確かに俺のシューヤはちっちゃいけどそんな⁉︎

今実際受けてるダメージよりダメージでかいよ⁉︎


「これからでっかくなるんだよ!」


まだ成長期だ、伸び代なんだ。


「……はしたない。露出狂。宇宙人のHPが無いに等しいと言っている」


良かった。そんなに小ちゃくは無いよね!


「……露出狂のミニマムの話はどうでもいいけど、HPが残り30」


ミニマムに受けたショックは置いとくとして、HP残り30ってのは割合的に見て、かなりやばく無いだろうか。

身体も動かなくなるわ。


「何をやったらこんな事に……」


「ちょっと自爆しただけなんだけど、時間的には大して立って無いからチャッチャと治してよ〜」


「変化が大きいので相応に時間がかかります。コウさん、敵は?」


「……最大の敵が出ただけ。時間は稼ぐから、メイには宇宙人を任せる」


「分かりました」


最大の敵?どういう事だ?


「メイ、俺の身体を田上の方へ……」


「ダメです」


「メイ!早く!」


メイは少し悲しそうな顔をして、俺の身体の向きを変えると詠唱を開始する。


俺の目に入ったのはさっき倒した黒いやつ以上に黒い身体。

黒光りするその身体は台所の敵を彷彿させ、生理的嫌悪感を誘う。


さっきのやつのように口を開く事もなく、一言。


「我は常闇の魔王ダラーク。そいつが竜骨の拳士か」


え?俺のこと?


ありがとうございます!

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