第40話 先輩
どうでも良い話ですが、第3回なんちゃらに記念受験したいと思います。
それに当たって不自然な点、直した方が良い点などありましたら教えて頂けると助かります。
「にーちゃんたちよぉ、あの宿に泊まってんだろ?」
「金持ってんだろ?」
「俺たちにちょーだい!」
俺たちの周りには6人のガタイの良い男たち。
こいつらやる気か?
チッ、食った直後で今動いたら横っ腹痛くなりそうだってのに!
仕方がねぇ……
「ごめんなさい!すいません!見逃してください!」
謝ろう!そして逃がしてもらおう!
「おいおい、許してほしいなら金と女置いてけよ。それが先輩に対する礼儀ってもんだろ?」
「先輩?」
「そうだよ!俺がDランク、こいつらがEランクの冒険者だ!」
「今日登録したお前らじゃ相手にもならねーよ!」
「なんでそれを知ってるんっすか?」
「冒険者ギルドから目ぇつけてんだよ!カモさん!」
なるほどな、冒険者ギルドを出た時からってなら納得だ。
つまり、こいつらは思っ切りテンプレのかませってことだな!
こんな奴らのために横っ腹痛くなるの馬鹿馬鹿しいな。
そもそもDランクとEランクって大したことねーだろ!
こんな奴らは不良と同じ扱いでいいな。
不良をビビらせた時のように石を粉々にしてやろうと、石を拾うために地面に手を伸ばし、屈む。
「ウェーイ!」
Eランクのやつの一人が馬鹿な高校生のような掛け声とともに屈んだ俺の頭を蹴飛ばす。
それを鯉口に他の下っ端も俺の身体中を蹴り出す。
全く痛くはねーよ?でもさ、ウザくね?
こいつらが蹴るの止めたとこで立ち上がって、地面にクレーターをつけてやろう。すぐに逃げれば怒られもしないだろうしな。
横っ腹なんて関係ねぇ!逃げ出すこいつらをを指差しながら笑ってやるよ!
「……やめろ!」
声に合わせてピタリと蹴りが止んだ。
声の主は田上だが、彼女の声とは思えないほど大きな声だ。
「おいおい、髪のやつも女じゃねーか。顔見せろよ!」
田上が髪を掴まれかけて、何度かは俺から逃げた時のように避けたものの、多勢に無勢。
捕まって顔を晒されそうになったところで、ようやく田上の声に動きを止めていた俺も動き出す。
遅れた!流石に連れに手を出されて黙ってちゃダメでしょ!
こっから先は俺のターンだ‼︎
「テメェら!調子にのんのもーー」
「《ヒール》!調子に乗るのも大概にしてください!」
俺と田上の間に入り、啖呵を切ったのはメイ。
メイは《ヒール》で腹を凹ませて立ち上がったみたいだ。
俺のターンは?
「あぁ、可愛いお嬢ちゃん?お前は後で可愛がってやるから今は寝てろ!」
メイに拳が伸びる。
ヤバい。これを助けて今度こそ俺のターンだ!
そう思った俺はメイを守るために再び動き出し、メイの方に向かうと、そのメイは華麗な仕草で攻撃を避ける。
「「え?」」
メイを守ろうと動いていた俺の腹に、メイを殴ろうとしていた拳が入る。
そういえばメイのステータスも異常なんだった!
痛くは無いけどさ、なんか辛くね?
メイは体でなく心を傷つけられた俺のことも、無視して唱える。
「はぁ、《ヒール》!《ヒール》!《ヒール》!……」
5回ほど唱えただろうか?
いつもの長い詠唱が無いためかメイの手が光っただけで変化は無い。
俺にも、もちろん奴ら……
「ちょっと眠っていて下さい」
その言葉に続いて変化が起こる。
4人がフラフラと倒れ、1人はヘナヘナと座り込んだ。
立っているのはDランクとか言っていた奴だけだ。
「おい!どうしたお前ら!」
「兄貴こそ、どうしたんすか?俺、今の今まで酒を飲んでいたような……」
「何寝ぼけてんだ!いいカモ見つけたんじゃねーか!」
会話が全く噛み合っていない。
何が起きているのだろうか?
「……無駄」
髪を直した田上が相手の背後から声をかける。
「このアマァ、何しやがった!」
「コウさんじゃありませんよ。私です」
振り返り叫ぶ兄貴分にまたもや背後から、今度はメイの声が届く。
「テメェは《ヒール》で手を光らせただけだろうが!」
「はぁ?《ヒール》は手を光らせる呪文じゃありませんよ?回復させる呪文です」
「何言ってやがる、何も回復させてねーじゃねーか!」
「回復したじゃないですか。その人たちを、昨日の夜まで」
「そんなことが……」
「出来てるじゃないですか。貴方はどうします?
ギルドまで行って処分を受けますか?
それとも赤ちゃんまで回復したいですか?」
兄貴分は顔を青くしてへたり込む。
大の男が小さな少女に怯えているんだから笑える。
メイはいつの間にあの能力を使いこなしてチートになってたのか!
あれ?俺のターンは?
〜〜〜
「先程登録された方ですね。ステータスプレートの読み込みは完了しましたか?」
「は?」
先輩をギルドに送り届けるために俺が受け付けのお姉さんの所でかけられたのはステータスプレートに関する確認の言葉だった。
「……終わった」
そう言って田上は皮の装備の内側からプレートをとりだす。
そのプレートには先程はなかった黒い文字が書かれている。
「すいません手をお貸しいただけますか?」
田上がプレートを渡し、手を差し出すと、指紋認証のようにタッチさせる。
えっとこれなんのやりとり?
「ありがとうございます。タガミ=コウさんで間違いないですね?」
「……うん、問題ない」
そうしてティッシュ箱ほどの銀色の箱にステータスプレートをしばらく差し込むと、田上にそれを返す。
「登録完了しました。冒険者としての成功をお祈りしております」
ちょっと待て!
まだ冒険者登録って終わってなかったの⁈
俺は小声で田上に聞く。
「どういうことだ?田上?」
「……?ステータスプレートは本人の魔力を読み込むからしばらく経ってから来るように言われた」
「あぁ、そ、ソウイエバソウダッタナ!」
「…………授業の時と同じ反応……聞いてなかったんだ」
田上の呆れた目が心に染みる。
聞いてなくっても登録できれば問題ないもんね〜!
「もう1人の女性の方も、登録のためにしっかり読み込み直す必要がありますのでステータスプレートと手をお貸しいただけますか?」
「わかりました」
メイは素直にプレートと手を差し出す。
それを受け取り、メイの手を指紋認証した所で、受け付けのお姉さんの目が見開かれる。
「ど、どんなレベルしてるんですか⁈はっぴゃ……!」
「ちょっと待って下さい!ギルドでは個人情報をどう扱うつもりですか!というかさっきも指の奴やりましたよね?」
突然メイが大きな声を出す。
あぁ、メイのレベルは超異常とか自分で言ってたっけ?
こんな反応をされるとなると俺の方も面白い反応が見れそうだな!
「し、失礼しました。
先程のはステータスプレートが本人のものであるを見分けるためだけのもので、内容までは確認しなかったのですが、今回は登録上必要でしたので……
しかしこれだけのレベルとなると、ランクシステムの性質的に、ギルドマスターと相談して、おそらく早めに昇格テストを受けてもらうことになると思いますがよろしいでしょうか?」
「す、すいません!強く言いすぎてしまいました。テストは問題無いです!」
その返事を受けて、受け付けのお姉さんはやっとメイのプレートを箱に入れる。
「まぁ、考えようによっては今で丁度良かったですよ。
最近、他の大陸にもステータスがおかしな『聖女様』とか、『はぐれ勇者様』みたいな新人冒険者達が出たらしくて、『落ち着いて、早めにランクを上げる。』
みたいな内容の『超高レベル登録者に対するマニュアル』が届いた所でしたから」
「そうなんですか、そんな人達が……」
メイがチラチラこちらを見てくる。
いや!知らねーからな!俺の境遇に似てるからって俺を疑うなよ!
そこで登録が完了したらしく、メイにプレートが返却され、俺に声がかかる。
そんなマニュアルが出たならバグステータスの俺でもなんとかなりそうだな!
「えーと、それでは最後の方ですね」
「はい!どうぞ!」
俺はプレートを渡すように言われる前に指を押し付けながら差し出す。
「はい、ありがとうございます……LV.3527…………こちらの方で新しいプレートをお渡ししますので、もう一度読み込み直していただいてもよろしいでしょうか?」
フッフッフッ、驚き過ぎて思考がフリーズしているな!
事実だよ!これでこそ俺TUEEEだな!
「えーと、同じ結果になると思うんっすけど……」
「ちょっとギルドマスターの所まで付いてきていただいてよろしいでしょうか?」
まぁ、メイでもあとでその人に相談するレベルだからな。
俺なんかは直接話さないといけないんだろう。
「……その前にこいつら」
田上が指差す先にはさっきのテンプレ先輩ども……
そういえばこいつらを届けるために来たんだったね!
「そちらは……またやったんですね。
隣の受け付けまで連れて行って頂ければ問題ありません。
お二人に任せてもよろしいでしょうか?」
常習犯なのかよ!たち悪りぃな。
「……分かった」
隣の受け付けと聞いて見てみるが、ここの受け付けとなんら変わらず、受け付けに座っているのも勿論女性で、メガネがよく似合う美人である。あの人の専門なのかな?
「シューヤさんそれでは行きましょう」
よそに気を取られていた俺はお姉さんに手を引かれて受け付けの中に引き込まれ、受け付けの奥にある廊下を歩いていく。
「ギルドの建物は随分と奥行きが広いんっすね」
俺の何気無い会話にも答えず、お姉さんの背中はどんどん離れていく。
そして階段。
地下へ続くであろう石でできた階段の底は真っ暗で何も見え無い。
お姉さんは壁に掛けてあるいかにも魔法チックなランタンを1つ手に取り、躊躇なく、階段を下りていく。
ランタンで照らされる足元しか見え無い中を進んでいき、突然、淡々と進んでいたお姉さんの足が止まる。
「ここです。この魔法陣の真ん中で少し待っていただいてよろしいでしょうか?」
ランタンで照らされたそこには直径4〜5メートルはある巨大な魔方陣が描かれている。
あぁ、分かったよ、分かっちゃっよ!
つまりあれだろ?
勇者の適性とか計っちゃうやつじゃねーの?
困っちゃうな〜、もう勇者としての仕事始めちゃってるしな〜。
まぁ、ハーレムくれるってんならやってあげてもいいかな〜
とりあえず乗ったるか!
「ここに乗れば良いんですね?」
「はい」
その返事を聞いて、俺は真ん中に向けて歩き出す。
俺が中央に立った瞬間、魔方陣の中央から外側に向かって水が水路に満ちていくように青白い光が広がってゆく。
「おぉ!すごいですね!」
「そ、そうですね、それではギルドマスターを呼んできますのでしばらくお待ちください」
受け付けのお姉さんがそそくさと去って行く頃には、光は魔方陣の縁まで到達し、縁に沿って光の壁のようなものを発生させた。
壁?
「あのー、この魔方陣ってなんの魔方陣なんですかー?」
不審に思い、お姉さんに声をかけるが、すでに去った後。
なんかヤバげじゃね?
うん、例え彼らに害意が無いとしても説明不足なのが悪いよね!
そう思い、魔方陣の真ん中から離れ、外に出ようとする。
コン!
妙に澄んだ綺麗な音が地下室に響き渡り、俺は魔方陣の中に押し返される。
マジで壁なの⁈
何か理由があるにしても突然閉じ込めるって酷くね?
そう思いながらも、とりあえず受け付けのお姉さんを信じて待つことにする。
俺は我慢ができる日本人だ。
これで魔方陣壊して怒られたらやだしね!
ありがとうございます!