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第38話 ギルド

「次!」


やっと俺の前の前まで順番が回ってきた。

やっととは言っても列の割には15分ちょいなので大した時間ではない。

不思議なほどスムーズにカラフルな列が流れていっていた。


何がって髪の色がカラフルなのだ。

金、赤、紺、緑、etc.

日本で見たら逃げ出したくなるような髪の色の人ばかりだ。


俺の前の緑の髪の人が門番のところで軽くチェックをうけ、何かのカードを見せると中に入っていく。


「なぁ、メイ、あのカード何か分かるか?」


俺の足を背もたれに、地面に座ってうつろうつろしているメイに質問をする。


「ふぁぁあ、へ?もう中に入れますか」


起こされてあくびをしながらふらふら歩いていこうとするメイの肩を掴み、質問を続ける。


「多分、身分証明証だよ。なんか銀色したカード」


「私達の村にはそんなものありませんでしたよ?」


そこでちょうど前の人がカードを取り出す。


「あれ!あれは?」


「あぁ、ステータスプレートですね。偽装不可能!正確無比!と、謳われる魔道具で、ステータスを測定できるものです。大昔の天才が作ったらしいですよ?」


「へぇー、ってそうじゃなくて、あれなくて大丈夫なのかって話だよ!」


「え?シューヤさん持ってないんですか?」


「俺たちの故郷では文書にしか載っていない」


ライトなノベルにね!


「まぁ、1人がしっかり証明できれば大丈夫だと思いますよ?

シューヤさん、バッグを出してもらえますか?」


メイに言われて《アイテムボックス》からバッグを取り出し、メイに渡す。

あの中って白昆布と刺身だけじゃなかったんだな。


「ありましたよ!私のステータスプレートです!」


「良かったぁ」


なかったらいきなり街に入る方法がないって積んだ状況になってたのか。


「次!」


どうやら前の人が終わったようで俺たちにお呼出がかかる。


「田上、街に入るぞ!」


「……ふぁぁあ、オッケー」


目をこすっている田上を起こして門番の元へ向かい、軽くチェックを受ける。


「見た所荷物が無いようだが、どうした?」


「《アイテムボックス》に入れてます」


門番のデカイ図体と、まとう鎧の威圧感につい敬語で話してしまう。

ビビりじゃないよ!部をわきまえてるだけだよ!


「ほう、《アイテムボックス》持ちか。

ということは商人か?」


「まだ国から出てきたばかりで、故郷の書物に載っていた冒険者になりたいと思っていたんっすけど……」


ライトなノベルな!


「なるほどな、冒険者というのも面白いだろう。もしかしてステータスプレートは?」


「はい、1人を除いて持ってないっす」


「良かった、1人持っているならそいつが保証人になり、中でギルド登録をすればステータスプレートは取得できる。

冒険者ギルドは入って大通りを行けば目に入る。

入門料の1人銀貨1枚さえ渡してくれれば、俺がお前らの安全を保障して、取り敢えず仮の身分証を渡すからそのまま入っていいぞ」


ギルドっすよ!異世界の代名詞ギルド!


「銀貨ってのを持ってないんっすけど、その分の魔石とかでも大丈夫っすか?」


通貨を持っていないなら物々交換すればいいよね!


「おいおい銀貨も無いなんてどんな田舎から来たんだ?まぁ問題はねぇよ」


俺は《アイテムボックス》から拳くらいの大きさの魔石を3つ取り出して門番に渡す。


「なかなかいい魔石持ってるな。これなら1つで十分だよ」


門番は見た目の割には融通の利く人らしい。

この人だからこんなにスムーズに運んでいったのかもしれない。


俺たちは門番から仮の身分証を受け取り、門の中に入る。


そこには大量の人がいる。


街並み自体は魔の街と大して変わら無いが、その石畳の上を歩くのは多種多様な魔物ではなく、様々な色の髪を引っさげた人間である。


俺は旅の疲れも吹き飛び、興奮に身震いする。

これだよ!これこそ俺の求めてた異世界の光景だよ!


「田上!メイ!街に着いたぞぉ!!」


「……いえーい」


「良かったですね。宿さがしましょう」


テンション低!

何この温度差!そもそも宿の前にギルドいってステータスプレートもらわないといけないし。


「宿の前にギルドだ!お前らちょっと背負うぞ!」


「……おう」


「さっさと済ませて眠りましょう」


棒読みで適当に相槌を入れてくる田上と、眠ることしか考えていないメイを背負って、できるだけ早くギルドへ向かう。


できるだけ早くとは言っても人と当たるだけで大怪我をさせかねない俺は歩くのと変わらないスピードで人の間を進んでいく。


そんな俺の視界に入った文字。もちろん見たことは無いが《言語理解》の効果で読むことができる。


石造りの大きな建物のいたるところに板で雑な修復がなされていて、大きな扉の奥からは騒がしい声が聞こえてくる。


「冒険者ギルド……キターーー!」


「「うるさい」」


2人の声と俺の大声にに街の人が数人振り向くが、俺が冒険者ギルドに向かって歩き出すとその顔は「またか」とでも言うように俺たちから興味を失う。


そんな周りの態度を意にも介さず俺は冒険者ギルドの大きなドアに手をかけて押しだす。


俺の耳に入るのは喧騒。

うるさいとしか言いようがなく、雑多なその音が今の俺にとっては耳に心地いい。


「おら!今日は夜から大物狩りだ!景気付けに飲むぞ!」

「よっしゃ!一昨日は大物とったんだ!祝いで飲むぞ!」

「おし!みんな騒いでんだ!俺たちも飲むぞ!」


実際のところ理由なんかなく酒を飲むアホ共。


「おいおい、テメェのなまくらが俺の剣に当たったじゃねーか!」

「あん?なまくらだぁ?テメェのツラなんかナマコじゃねぇのか?」

「あん?やんのか?」

「おう?やるか?」


「よっしゃよっしゃ喧嘩だ喧嘩!なまくらが勝つと思う奴は俺に!」

「ナマコが勝つと思う奴は俺に!」

「「銀貨1枚からかけやがれ!」」


多くの野郎共が喧嘩に、賭けに群がり、煽り、助長する。

ちなみにたまたま一部始終見ていたがそもそも何一つ当たってなかった。

結局、喧嘩したいだけのバカ共、騒ぎたいだけのマヌケ共。


そんな光景を前に俺は心から叫ぶ。




「最っっ高だな!」


「……早く済まそう」


「うるさいです。眠れ無いじゃないですか」


俺の喜びに満ちた叫びも、すぐに騒音の中に溶け込み、田上とメイの言葉も俺以外には届くこともなく、かき消されていく。


俺たちは受付らしきもののの1つに向かい、受付のお姉さんに話しかける。

街に入った時から思っていたが、この街には美人が多い。


「3人で冒険者になりたいんですがどうしたらいいっすかね」



「何か身分を証明するものはお持ちですか?」


「えっとこいつだけ持ってます、メイ、ステータスプレート貸してくれ」


「スー、スー」


寝てる⁈

今の短時間で寝るの⁈

仕方がないのでメイのバッグを漁ってステータスプレートを見せる。


「はい、そちらの方の手を貸していただいていいですか?」


寝ているメイの手を持ち上げて受付のお姉さんに渡す。

受付のお姉さんはメイの人差し指をプレートに触れさせると「確認できました」と言って手を戻してくれた。


その姿に修学旅行で、寝てる友達のスマホの指紋認証を勝手に解こうとしたことを思い出すのは現代人ならではだろう。

だいたい起きちゃうんだけどね!


「それでは、プレートを発行いたします。プレートを持っている方でも同額の登録料が発生するので、それぞれ銀貨3枚を渡して貰えますか?」


「魔石でも大丈夫ですか?」


拳くらいの魔石を3つ取り出して受付のお姉さんに渡す。


「問題はありませんが、魔石やその他の素材ははギルド登録後からは換金出来ますので、あちらの換金窓口をご利用ください。

依頼はあちらの掲示板から自分のランクに当てはまるものをとって受付まで持ってきてください」


「ランクっていうのはなんすか?」


「ランクは冒険者を実力で区分するシステムです。

FからS一応SSまであって、Fから始まり、依頼を一定数こなすことで昇格テストを受けることができます。

まぁ、ほとんどの冒険者がCランク、頑張ってBランクまで、一部の天才がAランク、Sランクはその天才が戦い続けてやっといける境地、SSランクに関しては世界に4人の化け物です。

ギルドの主要なシステムについてはこんなところですね」


「ありがとうございます」


「最後にギルドのルールになります」


「1、喧嘩は周りに被害が出ないようにする。

2、緊急時に出る臨時依頼にはできるだけ参加する。

3、ギルドの受付をナンパしすぎない。

4、犯罪をしない。

この4点を気をつけてください。

特に2点目についてはF、Eランクについては問題ありませんが、Dランク以上の方が何度も無視し続けますと除名処分も検討されますのでお気をつけください」


冒険者ギルドってのは本当にバカばっかなのか?

3はよくわかるけど、「犯罪をしない」ってルールに載せないだろ普通!


「分かりました。というかこんなに少ないんですね」


「多くすると覚えられない方がいるので、大切なところだけを残しました。

それと、もう1つだけルールがあります。

もっとも重要でもっとも守る人の少ないルールです」


突然、受付のお姉さんの周りに哀愁のようなものが漂う。


「5、依頼からは生きて帰ること」


ありがとうございます !


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