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第34話 火

昨日はすいませんでした!

まさかの23時59分投稿!

前書き、あとがきを書く余裕もなかったです。

「火を起こそう」


少しの沈黙の後、俺が言葉を発する。


「……そうしてくれると助かる」


やっぱり弔いの基本は火葬だろう。

多分多くの異世界ものと同じように、死体をほっとくと『アンデッド〜』みたいのになるだろうしな。


まだ考えている様子のメイの肩を叩く。


「メイ、ここの魔物を弔ってやりたいんだけど、どうすればいい?」


「えーと、弔いですか。

村では魔物を殺した時には食べられる部分を食べて、利用できるところをとったら残りはできるだけ細かくして海に流しましたね。

地上だと火が使えるのでそれで燃やすのも良いのでは?」


やっぱり火葬か。

海中でないと細かくしても匂いなどが残るし、そもそも弔った感じがしない。

無宗教の俺にも日本の一般的な葬式の概念は染みついているらしい。


「やっぱり火を起こそう」


「……どうやって?」


「なんか魔法的なので火を起こせばいいだろ?」


ここは剣と魔法の異世界なんだからさ!


「私は火魔法は扱えませんけど、今回はスキルで火魔法が当たったんですか?」


そういえば、俺のスキルはランダムだみたいなことを言った気がする。


「いや、ない!でもここは田上が持ってるはず」


「……いや、ないから」


オゥノー!

こんなのってあるか?

異世界に来て火魔法がないってどういうことだ?

まぁ、俺が見たことがある火属性の魔法は《メテオ》だけだから、あったところで役に立つともおもえないけどね!


「え?じゃあどうする?」


「……火を起こす方法ならわかる」


「マジか!ナイスプレイ田上!」


〜〜〜


あれから2時間くらい経っているだろう。

日は完全に沈み、薄い雲の先にモヤっとした月が空に出ている。

異世界の月も一つなんだな。

日本には三日月とか、朧月とか月を表す言葉が多いと聞いたことがあるけど、これはモヤ月かなぁ?


俺が呑気に空を眺める隣で女子2人は汗を流しながら棒を上げ下げしている。

別にエロいことをしているわけではない。

火起しだ。


もちろん、最初は俺がやってたんだよ⁉︎


でもね、田上が火起しに使う木をクロスさせて紐をつけたやつを作って持って来るたびに折ってたらね、呆れられましてね、「……私がやる」と言って主導権を奪われてしまったわけですよ。

力加減が難しいんだよ!


それで今の俺は種火ができたらそれを広げるために藁で包んで空気を送る係なんですがね、これもまた難しくてですね、面白半分で入ってきたメイが作った火種も含めて2時間で5つくらいはダメにしてるんですね。


もうやけにもなるよ!2時間もこんなことやってられないよ!昔の地球人すごすぎだよ!


「出来ました!早く!」


どうやらメイの方に火種ができたらしい。

俺は枕にしていた藁から一握り取り、お腹が空いたとか言っていたにもかかわらず、汗を掻くほど動いているメイの方に差し出す。

メイができた火種を藁の上に丁寧にのせると、優しく藁で包み込み、ゆっくりと、大きく円を描くように回す。

こうやって回すことで酸素が藁の中に供給されて火がつくらしいのだが、未だに火は付いていない。

今回も無理だろうな。


「おぉっ!きましたよ!」


メイの歓声が聞こえる中、田上は黙々と棒を上げ下げしている。

髪暑そうだなぁ、本当に切れば良いのに……


「シューヤさん!きてますって!手!手が燃えてますよ!」


メイもよくわからないことを言うな。

手が燃えてたら熱いだろうに。

こっちの世界の比喩表現だろうか。

そんなことを思いながらそろそろ火種が消えるであろう藁を持つ手に目を向ける。


「うぉぇ!えぇ⁈熱ッ……くない?

あぁぁぁ!」


おそらくこの声だけ聞いた人は何が起こったのか全く分からないだろう。

俺の気持ちとしては


(何これ!火じゃん⁈熱い……わけではない?ヤバイ落とした!)


といったところだ。

つまり、火に驚いてせっかくついた火種をダメにしてしまったのである。


「あのー、本当にごめん、メイ」


「はぁ、まあしょうがないですよ。一旦休憩しますか」


「田上も休憩しようぜ」


「……宇宙人、藁」


「え?」


「……藁!」


田上の返しの意味が分からず、聞き返してしまった俺は言葉を理解した途端に枕から新たな藁を一掴みとると田上に差し出す。


田上によって載せられた火種を包み込み、さっきのイメージでゆっくりと腕で大きな円を描く。

たった今の反省を生かして手に持つ藁から視線をそらさず、心を落ち着ける。


今まで煙だけが立ち上っていた藁から突然赤い火が出る。

ゆらゆら揺れるその優しい火が風で消えてしまわないように赤ちゃんを抱くように風から守りながら藁の枕に近づき、燃え移らせる。


火は茶色い藁を黒くしながら徐々に大きくなっていく。


「「「付いた!!!」」」


俺たち3人は喜びを分かち合い、付いた火の前で抱き合う。

2時間かけてやっと火がついた。

その事実が純粋に嬉しい。

険悪だと思っていた2人も抱き合って喜びを分かち合っているようだ。


女子たちの心暖まる光景をどんどん藁を侵略し、炭化させる火を横目に眺める。


視界の端では藁がどんどん炭化していく?

燃えるものが無くなってく!


「木とかに移らせないと消えちまうぞ!」


「……宇宙人お願い!」


田上の言葉に頷くと、俺は木材を集めようと、すぐ隣にある藁をいただいた馬小屋を狙う。


「うんりゃあ!」


定番の掛け声と共に体重の乗った一撃を馬小屋の柱にお見舞いする。

馬小屋は見事に倒壊、大量の木材を抱えて火の元へ向かう。


「取ってきたよ!」


田上とメイが取ってきた焚き木を入れていき、ようやく焚き火らしくなってきた。


「ありがとうございます!

これから魔物を焼くとなるともっと火を大きくしないといけないので、この町の木材を出来るだけ集めてもらえますか?」


それもそうか。この焚き火は弔いのための火なのだ。


「あぁ、……わかったよ。集めてくる」


町中の焚き木を集めるという返事をすると共に、俺はここへ来てもまだ目を向けることを躊躇していた魔物と人、それぞれの死に目を向ける覚悟を決めた。


明日も夜になると思います。

できたら朝、投稿します。

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