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第30話 女子力


青と赤、黒と白、その他あらゆる色がマーブルに混ざり合って混沌とした気持ちが悪い空模様、地球なら天気予報士が地図を指す指し棒をほっぽり出して逃げ出しそうな空の下、俺達の前に現れたのは邪神。


その禍々しさは言葉に出来ず、絵でも全く表現できないだろう。映像に撮ったら機器が壊れそうだ。

圧倒的な強者の存在感に俺は気圧され、動くこともできない。

普通の人なら気絶を通り越して2回は死ねるだろう。


形は人間に近い気もするが、可視化できそうなほどの禍々しさと物理的圧力を伴いそうな威圧にはっきりと姿を捉えることはできない。


隣には俺の仲間がいて、後ろからはメイの苦しそうな詠唱が耳に入る。


邪神が1歩も、1動作も動いてないうちに一瞬で最強だったはずの俺たちが満身創痍になった。

俺がこいつらを護らなきゃいけない。

俺は恐怖に震える足を無理やり動かし、邪神に近づいていく。

大したことはない初心に帰るんだ……


〜〜〜


ーーボフッ!


シリアスな場面を見ていた目が明るい光に照らされる。

痛くはないが、腹を蹴られ、布団を取られ、懐中電灯で顔を照らされた俺は普通に二度寝をしようと取られた布団に手をかけたところで首に暖かい圧迫感。多分足。


「おはよう!クズ!」


俺の目に映ったのは邪神……ではなく、笑顔の妹だった。


「お、おはよう」


状況が飲めないまま鈴音に引っ張られ、階段を降りる。

引っ張るといっても手をつないでとか、裾の端っこを掴んでみたいな可愛いものではない。髪を掴んで引っこ抜けそうな勢いだ。


「いててててて!抜ける!抜けるから!禿げるって!」


「あんたが禿げてようが禿げてなかろうが誰も気にしてないよ!」


「いや、俺が気にするから!」


こういう攻撃方法だとステータスに関係なくダメージが入るらしく、普通に痛い。

首の件もそうだが、ここまで的確に俺の弱点を攻めてくるのは鈴音くらいだ。

ガチで決闘しても負けるイメージしか湧かない。可愛い妹に攻撃はできんだろ?


キッチンに入るとテーブルの上には和風の料理が三人分置いてあった。

綺麗に盛り付けられているし美味しそうだ。


「食べていいの?」


「残したら吐いても詰め込むけどね」


この程度の量で吐くことはないと思うが……

もしかしてめちゃくちゃまずいのか……?

てか、今どういう状況?


「いただきます!」


少しおびえながらもそれを悟られないよう注意しながら味噌汁に口をつける。


「これ、もしかしてお前が作ったの?」


「そうだけど、何?文句あんの?」


「いや、スゲーな素直に」


「そこは美味しいっていうとこなんだけど、それ作ったお鍋まだ熱いよ?」


「め、めちゃくちゃうまいよ!お、オレハシアワセモノダナ!」


「気まぐれでも私がわざわざ起こした上にサービスで朝ご飯まで作ってあげてるんだから感謝しすぎなさい!」


どうやら鈴音が約束どおり起こしてくれたみたいです!

さらに本人いわくサービスでシャケ、味噌汁、お浸しに白ご飯といった和風の朝食まで作ってくれたらしい。

母は朝面倒くさがって朝食を作ろうとしないので旅館にでも来た気分だ。


どれも本当に美味しいし、ありがたいのだが、鈴音は朝の機嫌が基本的に悪く、怖い。

俺でも恐怖を抱く程度には怖い。

だって、お浸しに使ったであろう包丁持ってるんだよ?


その後とにかく素直に「美味しい」を連呼して朝ご飯を食べると、「それしか言えないの?」などと毒づきながらも鈴音さんの機嫌は良くなっていき、俺は生きて時間に余裕を持って家を出発できた。

実際に美味しかったから苦痛ではなかったものの、不味かったら死んでたかもな。

まぁ、うまかったんだけどね!


すごい悪夢を見た気がするが、朝からこんなことが起こっては俺の少ない記憶のメモリーに夢ごときが残るはずもなかった。


〜〜〜


学校が見えてきたのに自分が走ってないことに軽く違和感を感じている俺の視界にひかるが入った。



「おはよう!光!」


「おはよう……って秋夜⁈お前がこんなに朝早く来るなんて雪でも降るんじゃないか?」


「ふらねーよ!というかお前サッカー部なのに球技大会の朝練出てんのかよ⁈」


俺の時間に関する信用はそんなにないのか?

高校になってからはこの前のトイレ破壊の時は遅刻はしてないのに……

あ、中学の部活か!

俺は中学の部活は基本的に遅刻してたな!

試合に出てた記憶より、遅刻の罰として審判をやっていた記憶の方が多い気がする。

ちなみに俺の審判の動きは他の中学でも話題になるレベルにまで達していたらしい。


「いや、俺はサッカーの自主練だよ。ボール蹴っとかねーと1日が始まらないっていうかさ」


イケメンか⁈イケメンだな!


「はぁ、お前マジで努力家だな尊敬するよ」


「そうか?お前こそ最近努力してんじゃん。球技大会で朝練とかさ」


光は爽やかスマイルで返してくる。

努力してる?

やっぱり朝練とかやってんのは俺たちのクラスだけか。

球技大会で朝練とか他のクラスから見たらおかしな奴らだろうな。


そして確かに俺は去年に比べて積極的にはなってるし、高校生活を楽しむという目標もできた。

でも、努力をしているかと問われたらチートを使っている俺はノーと答えるしかないだろう。


「確かに球技大会で朝練はあれだよな。でも俺は変われてねーよ、最近の俺なんてズルばっかだよ」


「ははは、お前はそういう時は卑屈になるんだよな!もっと前向こうぜ!」


ここで校門にたどり着く。

本当に俺が遅刻してねぇ!


キキー……ガチャッ


俺の背後で車が止まる音とそのドアが開く音が聞こえる。

背後を振り返れば安い家なら一軒買えそうな高級車から透き通るような金髪が現れた。


「おはよう、滝くん。私が2Dのサッカーのマネージャーをしてあげますわ!」


そう、車から降りてきたのは中川さん通称桃李様だ。


「光、なんか状況が飲み込めてないし、ちょっと面倒なことになる予感がするからここで別れようぜ」


俺は今正に振り返ろうとしている光の肩を掴み、振り返らせずに押し出した。


「お、おう。なんだかわからないけど俺もそろそろ朝練始めたいし、じゃあな!」


そのまま走り去っていく光が視界からフェードアウトすると、中川さんに目を向け直す。


「えーとどういうこと?」


「そのままですわ。努力している皆さんを近くで応援したくなりましたのよ!」


えーと、こいつってそんなにやる気に満ち溢れたタイプだったのか?


「まぁ、俺としては頑張ろうって気持ちはいいと思うし、ありがたい。取り敢えずみんなに話そうか」


「それでは行きましょうか」


〜〜〜


みんなにその話をするととてつもなく大歓迎だった。

中には泣いているものまでいる。あいつ練習で帰宅部なのにすごい頑張ってると思ったら桃李様教だったのか。

いいとこを見せようと健気に頑張ってるんだな。

今はどうかわからないが、ちょっと前まで下僕とか思われてたのがかわいそうだ。


そう、俺の中で性格が悪いクラスメートNo. 1認定されている中川さんがなんで本当にマネージャーなんて……


もしかして名前だけマネージャーをやって男子からの好感度をあげる作戦だったりするんじゃなかろうか?

でも俺以外の男子は殆ど篭絡してるしな……



その日の朝練は俺以外、とても実のあるものになった。

みんなが中川さんが見てることでやる気になり、いつも以上に高いモチベーションだった。


そんな中俺だけはサボるわけでもなく、そこそこ仕事をしてくれる中川さんの真意がわからず練習に集中できなかった。

久しぶりにボールを2個破った。



ありがとうございます!


感想もめっちゃありがとうございます!

昨日は時間が取れたのでそこそこかけました!

2章は現代の描写を多めにするように意識したので、長めの章になるかもしれないです。

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