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第23話 浸入

評価ありがとうございます!


「行っくぜー!」


「行っきましょー!」


俺たちはハイテンションで移動している。

俺はランナーズハイ、メイはドライバーズハイってやつだ。

方向に関してはメイが地図を見ながら示してくれている。


走っている途中、かなり高い山が進行方向に見えて、超えなければいけないとのことだったので、《ワープ》を使って時間短縮に成功した。


魔王城の距離としてはかなり近い方らしいが、そうやって時間短縮して、今のペースで走り続けても半日と言うんだから驚きだ。

世界は広い!


ちなみに俺の背中にはしっかりと幸せな感触がある。

そう、おんぶといえばおっぱい、つまり胸が背中に当たってしまう現象が起こっている。

メイは自分の胸が小さいと過小評価しているが、俺に言わせれば魚人の平均が高い。

メイはC弱なのに対して、魚人の村の人達はE強はある。


「シューヤさーん!」


「なんだー!」


「休みたーいですー!」


「分かったー!」


メイの言葉を受けて止まる俺。

かなり大切なことを忘れていた。


この世界にも重力や効力はある。

ほとんどの物理法則は適応されていて、例外は魔法の作用、反作用とステータスの反映された攻撃くらいだ。

俺がわざわざ頭を働かせて物理に出てきた言葉を思い出しながらこんなことを説明したのはメイが飛んで行ったからだ。


そう、俺が突然止まったので慣性の法則によって投げ出されたのだ。


「キャアアァァ……」


俺の背中が発射台のような役割したためか、綺麗な放物線を描きながらメイが飛んでいく。


「ワープ」


見送っているわけにもいかないので、《ワープ》を唱えるが、発動しない。


「ワープ!」


しかし何も起こらなかった。


このまま発動するかわからないワープに頼っているとメイが危ない。


足を踏み込む、今までで一番力を込めて。

メイを見る、今までで一番強い眼差しで。


そして、俺は飛び出した。


砂煙りを抜けると、メイは前方を落下し始めている。


「……ァァァアアア」


そのメイの落下地点にメイのスピードと同じ位のスピードで入り込み、メイをお姫様抱っこの要領でクッションをきかせてキャッチ、更にスピードを落としながら進むことで勢いを殺す。


「あっぶねー」


「あっぶねー⁉︎ふざけてるんですか?私は危うく死ぬところだったんですよ!」


「いや、でもさ、あの状況じゃあさーー」


「言い訳の前に言うことがあるんじゃなーー」


「ごめん!マジでごめん!」


「もういいです!知りません!」


怒ってしまったみたいだ。


〜〜〜


俺たちは休憩が終わるまで一言も話さず(俺は話しかけたけどね)、「行こう」と俺が言って背中を差し出した時には乗ってくれたが全く返事もなかった。


今もメイは黙っているし、俺も無視されると分かっていて話しかけたくなんかないので黙っている。

雰囲気が重い。


そうしてお互い話さずに走っているうちに、日が暮れてきた頃俺の目に城と周りを囲む壁が見えた。


ゴールが見えて少しペースを上げる。

壁の前まで来て分かった。

この壁は城と町を護る為の壁だ。

そう、中には町があり、そこで腹を満たせるのだ。

正面突破だと、飯が食えないからダメだな。


「デケェ……」


「おっきいですぅ……」


久しぶりに言葉を聞いてメイに振り向くが、メイは惚けた顔をスッと消すとそっぽを向いてしまった。

エロ可愛いな。


壁自体の高さは学校の校舎程なのだが、それがどこまでも続いているというのは迫力がある。


門のようなところにはスケルトンの衛兵が立っている。

……どうやって町に入ろう。


今の俺たちの格好は俺が頭蓋骨と海パン。

メイがビキニの上に魔王城で借りたコートだ。借りただけだよ?


いや、異世界ならコートじゃなくてローブだな。差は分からんけど。


ローブにはフードが付いているし、一度入って仕舞えばあとは誤魔化せそうだが、さすがになんのチェックもなしに入れてもらうことはできないだろう。とりあえず


「ワープ」


衛兵に見つからないように門から遠い壁に近づき、ワープを発動させようとするが、やはり発動しない。


MPが京単位の俺のMPが切れることなんてーー




ーー俺のMP30くらいじゃね?


そうだ、俺が選んだスキルは、

《言語理解》

《ワープ》

《魔法抵抗》

《絶倫》

の4つ。


つまり、俺は今回、《アイテムボックス》を取っていないのだ。

馬鹿か俺は!

《魔法抵抗》とか、《ワープ》よりも《アイテムボックス》だろ!

《言語理解》と《絶倫》は分かるけどさ!


しかしそうなると、俺はMPが回復するまで中に入れないことになる。

そして、このスキルを選んだのは田上とのデートの為だ。

俺が確実にデートに間に合うには2日以内に戻らなければならないということだった。

そして明日の昼過ぎには2日経ってしまう。


飯とか諦めて正面突破するべきか?


グゥ……


お腹が鳴る音だ。

俺のじゃないのでメイのだ。

目をを見ると顔を紅生姜色にしながらそっぽを向いている。

無視を決め込んでるからか。

しかし、これで明日まで回復を待って《ワープ》を使う方法と、正面突破の選択肢が無くなった。


今すぐにばれずに中に入る方法……。


登ろう。


〜〜〜


城壁の隙間に足と手をかけて、メイを背中に乗せながら登り、壁の上に手をかけようとすると、見えない何かに静電気のような痛みと共に遮られる。

あぶねーな!なんだよ!あれか?結界か?

いつもならメイに聞けばいいのだが、メイは怖いのか、俺の背中に顔を埋めてしがみついている。

そもそも怒ってるから無視か。


取り敢えず《魔法抵抗》を意識すると、消えた感覚があり、今度はしっかり登り切ることができた。


相変わらずメイは目を覆っているが上からは魔物の町を一望できた。


見た直後の一瞬は普通の街に見えた。(普通とはいっても中世異世界の人の街のイメージを基準にだが)

そこには八百屋や肉屋らしきものがあり、中には干したり焼いたりする程度の加工が施されているものも売っているようだった。

大道芸のようなものをやっているようで魔物が集まるようなところもあった。


そう、人が集まるのではなく、魔物が集まるのだ。


魔物の町には1足歩行の魔物から12足歩行の魔物まで、ゴーストのような魔物から虫のような魔物まで多種多様な魔物が闊歩している。

アメリカをサラダボウルとするなら種類が多すぎて食べられそうもないこっちはゴミ箱だな。


その町の一画で俺はステータスが上がってから心なしか良くなった気がする目で衝撃的な光景を見た。


人だ。


ありがとうございます!

まだしばらくは悪足掻きです!

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