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閑話 魚人姫のお話

評価ありがとうございます!ちょっと頑張りました!

そして長くなりましたm(_ _)m

私はシンドー=セイル=メイ。魚人の村の長の孫です。


小さい頃からずっと地上に憧れていました。


〜〜〜


友だちのハルフとメロとも地上のことはよく話しました。


「地上はどんなところでしょうか?」


「大したことはないんじゃないか?だから先祖様は海底に来たんだろ?海底は美しいし、地上は過酷な所だと聞いたぞ」


「いえ、きっと素晴らしいところよ!妖精が星を降らせてその星が当たった木には美味しい木の実というものがなるのよ!」


7歳〜10歳の頃はこんな話ばかりしていた気がします。

ハルフは海底が素晴らしい所だと言い、メロは地上を楽園のように語りました。

私はーー何か明確なイメージがあったわけではないですが、漠然と地上という未知に興味を持っていた気がします。


10歳の頃からは海底で村人が生きるために必要な槍術を習いました。

海底では、近場に行くつもりでも海流に逆らえず、流されたりしてしまう事もあるために、生き残るために武力が必要になるのです。


私は槍術が苦手でした。しかし、お祖父ちゃんは私に回復魔法の才能がある事を教えてくれました。


私は槍術はおろそかにしないようにしながら、回復魔法のイメージや感覚を教わりました。

《ヒール》を唱えて初めて回復の光が出た時は喜びすぎて泣いたものです。

その頃には槍術で2人に完全に置いてかれてしまっていたんですけどね。


そして、15歳の誕生日。お祖父ちゃんは私にある話をしました。


「メイよ、お前はユニークスキルというものを知っておるかの?」


「いえ、固有のスキルですか?」


「まぁ、大体それであっておるの。ユニークスキルというのは極端に所有者が少ないスキルの事じゃ。

まぁ、同じ時代に1人じゃから固有といっても間違いではないの。

異なる時代に同じユニークスキルが現れた時、ユニークスキルは世界の中で似たような役割を担うそうじゃ」


「どうして突然そんな話を?」


「お前がセイル様の子孫である事は話したの。

そのセイル様はあるユニークスキルを持っていたんじゃ」


昔話の続きが始まったものだと思いました。セイル様のお話も私がその子孫である事も、小さい頃に聞かされていましたが、ユニークスキルという言葉が出たのはあの時が初めてでした。


「その名は姫の声マーメイドビクティム自分のスキルを犠牲にそのスキルを他人と24時間だけ共有できるという特殊なものじゃ」


なんだかあんまりしっくりこない話だと思いました。

私の中での勇者様の伝説というのは勇者様とその仲間が勇気と絆で魔王を完全に倒していく話だったからです。

勇者様が仲間から犠牲を出すなんて考えられませんでした。


「これは普通の人は知らない話だが、セイル様が街で見つかったのは少し変だと思わんかったか?」


「たまたま通り掛ったのでは?」


「もともといた住民が、友好的に明け渡した程になっているにも関わらず、表でそんな扱いをされていては国として疑われてしまうじゃろう。

ましてや、外交の中心として想定された港町じゃ、他国のものも多い中、理由もなくそんな扱いはできんよ」


「じ、じゃあどうして」


「ある《鑑定眼》持ちの男にばれたんじゃよ、スキルの事を。

醜い地上人どもはその能力によって《水中耐性》を手に入れれば、自分も海で金を稼げるとでもと思ったんじゃろう。

その頃は人魔大戦の真っ只中で普通の人間が海に近づくなど自殺行為じゃったそうじゃ。

それで海には何かしら宝のようなものがあると思われとったんじゃろう」


「そこに勇者様が?」


「そうらしいのじゃ。そしてセイル様が勇者様について行って『水煙の魔王』と戦った時には……」


「勇者様は水煙の魔法にによる幻術を見事見破り、仲間を守ったんですよね!」


「あぁ、そうなっておるが、実際は1度目の攻撃は見切れずに受けてしまったそうじゃ。

勇者様が幻術にかかり、水に閉じ込められてしまった時、セイル様が姫の声マーメイドビクティムを発動したんじゃ。

それにより、セイル様と《水中耐性》を共有した勇者様は閉じ込められた水から脱出し、更に水煙の魔法の見破り方を知ったのじゃ」


おかしいと思いました。

その話が伝えられていない理由がわからなかったのです。


「不思議だという顔をしておるの。

勇者様が『三大魔王』を倒したのちに世界の人々は勇者様を祭り上げたんじゃ。

その中で勇者様は完璧な人物として語られるようになっていったのじゃ。

『勇者様は相手に不覚など取らない』『勇者様は全てを守った』というようになったのじゃ」


「で、でも、なんで魚人の私達もそのことを知らないのですか?」


突然に語られた歴史の真実に私は動揺していました。


「村人が誇りに思っているものは何かわかるかの」


「それは、勇者様にいただいた永遠の太陽エターナルシャインと、魚人特有の青い髪。そして魚人なら誰でも持っている水中…………そういうことですか」


「そうじゃ。今もまだ村おろう。

ときどき髪の色の濃さで他人を見下すようなことを言う輩が。

それと同じことじゃ。

セイル様はその時に魚人の誇り《水中耐性》を失ったのじゃ」


私の中にやるせない気持ちが広がりました。

自分の誇りを捨てて、勇者様を救ったセイル様の苦渋の決断による立派な姿は、後世の人間のエゴによって覆い隠されたのです。


「そんな歴史があったんですね」


「そうじゃ。

そして最後に伝えなければならないことがある。

メイよ、お前はセイル様の子孫であり、姫の声マーメイドビクティムを持っているのじゃ」


「 え?つまり私は…………」


ーーユニークスキルが異なる時代に現れた場合世界に対して同じような役割を担う。


つまり、ユニークスキルを発動せざるを得ない状況が間違いなく訪れ、私は誇りーー《水中耐性》を失う可能性が高いということでした。


「そうじゃ。

メイは地上にも興味があるようで安心したが、その覚悟が必要になるのじゃ。

お前はこの世界の人間を救う人物をその能力で救うことになるだろう」


この世界を救う人物。


その頃の私にはそんな人物は想像もつかなかったし、なんの根拠もなく、『まだ時間はあるでしょう』などと思って、気にしないようにすることにしました。




16歳になると、いつも槍術の稽古で一緒のメロとハルフがお互い思いを寄せ合うようになりました。


私はハルフに対してはそんな感情を抱きそうになったことはありましたが、はっきりと持ったことはなく、親友2人の恋が成就することを願っていました。


「メイ、ハルフはどうやったらもっと私を女としてみてくれるかしら?」


「そんな大きなもの持ってるんだから使えばいいじゃないですか!」


「そんなに怒んなくてもいいじゃない。私はメイのおっぱい好きよ」


「やっやめてください!あ、ダメ!あ、あん!」


こんなことを言いながらお互い胸を揉み合ったり、


「メイ、俺には男としての魅力が足りないのだろうか?」


「全、然足りませんね!そんな女々しい質問を私にする暇があったら、メロを七色珊瑚の群生地にデートにでも誘ってください!」


「七色珊瑚の群生地か。どのように誘えばいい?」


「普通にストレートに誘えばいいじゃないですか」


「そ、そんなことできるわけないだろ!」


「はぁ、いつも一緒に遊んでるじゃないですか?」


「あれはメイもいるし、村の近くだし……」


こんな話をしながらハルフの背中を押したりしていましたが、2人とも私への遠慮なども感じているようで、なかなか進展しませんでした。


そして、そんな日々が続いたある夜、永遠の太陽エターナルシャインが光を失いました。


村長はとりあえずの策として暗闇の中で魔物に襲われないように村の警備を強化し、エターナルシャインに魔石を使うために村にいた私達をあの沈没船に向かわせました。


メロのテンションはやたらと高かったです。

それは船に入ってからも続いて、私は周りを警戒しながら、答えるのにはかなり神経を削られました。


スケルトンの魔石を取りに来たにも関わらず、全然スケルトンの姿は見えなかったので、どんどん先に進んでいき、ある部屋に入りました。


私は一瞬この部屋の壁が白いのかと思いました。

しかし、その白は大量のスケルトンによる白色だったのです。


「槍を構えろ!」


メロとハルフの槍術は村の戦士とでも十分に打ち合えるレベルでしたし、私も村で一番の回復魔法の使い手である自信はありましたので、スケルトン程度ならいくでも倒せると思いました。


実際、倒せたのです。



ーーそこにいたのがスケルトンだけだったら。


「メイ!後ろにもスケルトンがいるわ!気をつけて!」


メロの忠告に従って後ろを向くと、そこにいたのは後ろを向いたスケルトン。

迷わず突きを放ちました。


「ーーイテ!」


スケルトンは基本弱い魔物なので、私の突きでも余裕を持って倒せると思いました。


「うそ、このスケルトン硬いです!」


「まったまった!俺スケルトンじゃ無いよ?まだ生きている健康な人間だよ?」


「え?今スケルトンが喋った?」


驚きとそのシュールさに気を取られ、つい話をしてしまいました。

そして後ろから悲鳴。


「うわぁ」

「キャア」


振り向くとそこにはシーカイザースケルトンがいました。

海の危険としてよく話に聞いて、会ったら逃げろと言われるような魔物です。


メロとハルフはそれぞれ弾き飛ばされていました。

スケルトンもどきの男は逃げようなどと言っていましたがメロはまだ向こうにいました。


「でも!メロがまだ向こうにーーいえ、なんでも……」


知らない人を巻き込むわけにはいきません。

私はでかけた言葉をすんでのところで止めました。

にも関わらず、私の制止も無視してスケルトンもどきの男は軽い言葉とともにスケルトンと戦い始めました。


彼が時間を稼いでくれるならそれでもいい。


そう思って私はハルフに全力で《ヒール》を詠唱しました。


「ちょっくら本気出すかな、もう少し下がってろ」


ふざけた言葉に目を向けると彼は無傷でシーカイザースケルトンと戦っていました。

私は彼を信じて更に詠唱に集中しました。


「《ヒール》!」


私がハルフに回復魔法をかけ、戦いに目を向けると戦いは終わっていました。

シーカイザースケルトンを倒していたのです。


「シ、シーカイザースケルトンを倒した⁈」


一言で言うと彼は強者でした。

私達を救ってくれた彼はまるで勇者様のようでした。


村一番の強さのローレさんを手加減して倒し、抜けたところは多いものの、私や村のために動いてくれました。


そんな彼が魔王を倒した後に倒れた時に始めて、私は彼を見誤っていたのだと感じました。

彼は確かに強いけど、無敵では無いのだとわかりました。


私はある感情を抱いていました。

それはハルフには一度抱きかけた感情ーー恋とでも言えば良いのでしょうか。


そして《ワープ》。


直前に説明を受けたのでわかりました。

彼の《状態異常耐性》が他のスキルに変わってしまったのだと。

もがき苦しむ彼を見て、とても困惑しました。


ーー彼は無敵ではない。死んでしまう。


そんな想像が頭をよぎった時、覚悟が決まりました。


私は彼ーーシューヤさんに顔を近づけキスをしました。

女の子のファーストキスがなんたらといった迷信じみたものではありません。


姫の声マーメイドビクティムを発動したのです。


村に戻り、お祖父ちゃんのところに向かいました。


お祖父ちゃんは一瞬驚き、目を見開くと、全て分かったような温和な笑みを私に向けました。


小さい頃からそうです。

お祖父ちゃんは全て分かっていました。


「お祖父ちゃん。私は村を出ます」


「知っとるよ。自分の信じた道を進みなさい」


私の目からは海水とは違う暖かい塩水が溢れていました。




夜、目覚めたシューヤさんには霊薬ということで説明することにしました。

実在するものらしいのですが村にはありません。

だって、村に訪れるものが《水中耐性》を持ってないなんてありえないじゃ無いですか。

私の犠牲がなんだなんて恩着せがましいことを言いたく無いですし、シューヤさんは引きずりそうですから。


そして、地上に向う準備をしていきます。


16年間過ごしたこの部屋とも今日で最後です。


ハルフとメロに関しては白昆布に手紙を書きました。

直接話せば間違いなく泣いてしまうし、決心が鈍ってしまうからです。

2人は昨日にはもう完全に治っていたそうです。


私の希望を聞いて、シューヤさんはできるだけ早くに出発することに決めてくれました。


お祖父ちゃんと、シューヤさんの気配の動きに気づいたローレさんだけが見送りに来てくれました。


他の人はエターナルシャインの方に気が行ってしまっているのでしょう。


〜〜〜


私はシンドー=セイル=メイ。魚人の村の長の孫です。


小さい頃からずっと海底に住んでいました。


今までありがとう、みんな。


これで話数的にも内容的にも区切りがつくので、一章終わりかなと思います。

そして、閑話が今までで一番長いという事実……。

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