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第20話 寝ぼけ

2週間ぶりの異世界でまず俺が気になったのは臭いだった。

鉄のようだが吐き気がするような臭いーー大量の血の臭いだ。

それに口の中のミントの香りが合わさり、最悪のテイストだ。

とりあえず飴を吐き出す。


臭いは強すぎると身体に害を及ぼすというが、俺の場合は頭に来たようだ。

頭全体が何かに覆われているように重たい。


ーーそうだ、俺たちは魔王に戦いを挑もうとして勝ってたんだ。


文章にするとおかしなことこの上ないが、隣にいるメイの憐れみと呆れと驚きが混じったような顔はそれが事実だったことを伝えている。


俺には2週間前のことでも、メイにとっては今起こったことなのだ。


「魔王、倒しちゃいましたね」


「あ、あぁやっぱり大したことなかったな!」


「さっきまで真剣に覚悟を決めたような目をしてたのに何言ってるんですか?」


「あはは、そりゃそうだ」


危ない危ない。

楽勝だったらから軽いノリで行こうと思ったけど、そういえば魔王の姿を見るまではそこそこ警戒してたんだった。


「エターナルシャインってのはどれだ?」


「どうやらこの部屋には無いようですね。宝物庫のようなところに置かれてるのでは?」


宝物庫か、場所が分からないな。

転移ものだと大体王の部屋のどこかに隠し通路みたいのがあるイメージなんだけど……


だめだ、眠くて頭が働かん!


「メイ、俺もうだめだ。おやすみ」


俺は膝から地面に崩れ落ち、地面に横たわる。眠い。


「どうしたんですか⁈シューヤさん!シューヤさぁぁぁん!」


「いやごめんな!眠いだけだから!しばらくしたら起こしてく……」


言葉の途中で俺の体は言うことを聞かなくなった。床冷たいし、血生臭いけどどうでもいいわ。


〜〜〜


目覚めると枕など敷いてないはずなのに、俺の頭は適度な高さでとても眠りやすい姿勢だ。


こ、これはもしかして伝説のーー



ーー膝枕か⁈


ここで慌てて飛び起きてしまえば驚かれてこの夢の状態を保てなくなる可能性がある。


俺は出来るだけ細めで片目だけを開けてメイの顔を探した。


膝枕の姿勢ならばメイの顔は俺の上になければおかしいのだが、見当たらない。


ということで、俺は『寝返りに見せかけてメイに抱きつきちゃう作戦』を実行しようと思う!

作戦内容はその名の通り!

寝返りに見せかけて隣にあるはずのメイの身体に抱きつくのだ!


寝返りの振りというのは、慎重さと大胆さの両方を必要とする高等技術だ。


俺は細心の注意と最高の探究心で持ってそれを補い、隣にあるはずのメイの身体に抱きつこうとした。


コツン


空虚な振動が俺がメイだと思って、抱きつこうとしていた空気にこだまする。


その音は例えるなら石で骨を叩いたような、はたまたその逆のような……


「頭蓋骨かよ!」


俺の頭を支えていたのはメイの色白な太ももではなく、真っ白な緑竜の頭蓋骨だった。


「んぁあ、あ!起きたんですねシューヤさん!本当に心配したんですから」


可愛らしい欠伸が聞こえた方を上半身だけ起こして見てみると、なんだか黒いコートのようなものを毛布代わりにしたメイがいた。

一言で言うと、エロい!

寝起きの女子っていう存在がそもそもエロスなのに、更に魚人の普段着であるビキニの姿なのだ!


メイは俺の視線から何か感じたのか、皿のような目でこっちをみると、コートで身体を隠してしまった。


「2、3時間ほど寝てしまったみたいですね。シューヤさんの速さなら今からでも日が落ちる前に村につけますよ」


「えーとなメイ、実は俺のスキルは時間が経つと入れ替わるんだ。今回は《ワープ》を手に入れたから、すぐに帰れるぞ」


適当に考えた嘘としてはなかなかうまいと思う。

スキルが入れ替わるスキルとかありそうだしな。

というか、ついメイにも転移者?であることを隠してしまっているが必要なのだろうか。


「聞いたことも無いスキルですね。ユニークスキルですか。でもまぁ、それがあの強さでスキルをうまく使え無い理由ってことなら納得ですね」


俺に言っているのか独り言なのかわから無いトーンでメイは考察している。

ユニークスキルとかあるのか!

ちょーカッケー!

スキルの 選択肢の中にもあんのだろうか。


「その《ワープ》でこれも運べますか?」


「いや無理だ」


「そうですか、どうやって《ワープ》を使わずにこんな大きくて持ちにくいものを運ぶかですね」


なんの話だ?

俺が運べ無いと言ったのはメイのコートの話だ。


当たり前だが、俺は今のメイのエロい肢体を覆ってしまうダサいコートを持って行きたくないのだ!


「脱げばいいだろ」


ミスった。このセリフちょっとやばいな!


「はぁ?何言ってるんですか?何で私がこのエターナルシャインをどうやって運ぶか考えてる時に、服を脱ぐ話が出るんですかね?」


メイは俺の後ろ辺りを指さしながら、微妙に怒っているらしい。

突然脱げばって言われたらそうなるか。

指の先には直径1メートル半位の球体。

持ちにくすぎだろエターナルシャイン!

というか、エターナルシャインの話をしてたんだね!


「いや、エターナルシャインは《ワープ》で運べるんですがね、そのコートはちょっと無理かなと思いましてね、それならコートを脱いでもらおうかなと……」


「はぁ、エターナルシャインを持って帰れば私はシューヤさんにも、も、もらわれるんですよ?そんなくだらない嘘はやめてください」


「あれって本当なの⁈」


「おじいちゃんはやると言ったらやる人なので、おそらく……」


「よっしゃ!帰るぞ、メイ!」


そう言ってメイの言葉をさえぎってやっと立ち上がり、メイとエターナルシャインに触れる。

メイもやれやれといった感じで起き上がった。

俺のいせ充生活は近い!

異世界で充実でいせ充だ!


「《ワープ》!」


光が2人を包み、次にその光が晴れた時には俺たちは海底に来ていた。


ありがとうございます!

異世界に行くとどうでもいいこと書き始めるから話が進まない……


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