第10話 勇者
初評価ありがとうございます!
こんな時に心苦しいのですが、説明回に近いです。ゴメンなさい。
しばらくの間話しているうちにメイとはかなり打ち解けることができた。
話の内容はお互いの友達のこととか、大した話ではない。
なんでも、ハルフとメロとメイは幼なじみで、ハルフとメロは好き合ってるらしい。
両方から相談は受けているが、どちらもメイに遠慮して上手くいかないらしい。
なんか俺の状況に少し似ているな。
そんな話をしながら人魚の村を目指すが、沈没船からはなかなか遠いようだ。
「メイたち人魚はどんな生活をしてるんだ?」
今までほとんど間なく俺の質問に答えてくれていたメイの口が止まった。
「あ、すいません。シューヤ、じゃなくて、シュウヤさんは地上の人間でしたね。私たちは人魚ではなくて、魚人なんですよ。人魚はお爺さんたちがとても嫌がるので村では注意してくださいね」
「そうだったのか、知らなかったんだ。ごめんな。それと、俺のことはシューヤでいいぞ?魚人ってのはどんな種族なんだ?」
人魚というのは嫌がられるらしい。
まあ、よく考えたら、ある意味魚扱いしてるようなもんだな。
可愛いメイやメロが魚なわけないからこれからは気をつけよう。
「私達魚人は元々は小さな漁村の住人だったんです。ずっと魚を獲ってるうちに、私達の村の子供は自然と《水中耐性》を持って産まれてくるようになって、同時に今の水掻きや、鱗を得たと言われています」
なるほどな。地球でいう進化のようなものか。
進化にしてはスパンが短いのは魔法のある世界ならではなのだろう。
「私達の先祖様はその水掻きや鱗、《水中耐性》をさぞ喜んだのですが、500年くらい前にひっそり暮らしていた先祖様たちの村に大国の使者が現れて、その国と大々的な貿易を始めるとともに、先祖様の村を元に、他の大陸との連絡をする港町を作ろうと言ったんです。
そうすれば、先祖様の暮らしはもっと良くなると。
先祖様は反対しました。ただひっそり暮らしていれば良かったからです。
しかし、大国の力は強く、ついに言われたとうりになってしまいました。
『言われたとうり』というのは正しくないですね。
先祖様の暮らしは悪くなりました。
新しく入ってきた多くの人間に人魚として人の扱いもされず、虐げられ、差別されました」
人間ってのは強欲なもんだな。
日本の開国も似たようなものだった気がする。
「しかし、今から330年前でしたかね。
先祖様の村だった港町に勇者様が訪れました」
「勇者⁈」
突然の勇者登場に声を上げてしまった。勇者なんているのか。
「勇者ってのはあの勇者か?」
「はい!知っての通り、320年前突如として現れ、特に好戦的だった『三大魔王』を倒すことで人魔大戦を終息させたあの勇者様です」
勇者の話は有名らしい。現代から来た俺は知らなかったのだが勘違いしてくれたので知ってたことにしとこう。
「そして、その勇者様は余りにも酷い扱いを受ける魚人の少女、セイル様を街で見つけ、セイル様に話を聞くと、魚人の差別を無くそうと動いて下さりました」
「質問。セイル様は可愛かった?」
「それはもう、10人中10人が振り返るような美少女だったと言われています」
勇者はセイル様の扱いじゃなくて顔を見ていたんじゃないか?
「話を戻しますよ?結果を言えば、勇者様の考えた『俺、魚人マジリスペクト!計画』では、一部ではご先祖様の扱いは改善されたものの、人々の間に根付いた強い差別意識は取り除ききれませんでした」
勇者頭悪いだろ!
計画の内容とか名前だけで大体わかったけど、絶対頭悪い!
名前もダサいし、そんな計画でよく一部改善できたな!
メイは話を続ける。
「勇者様は考えました。どうにか魚人達を救う方法は無いのか、と。
そうして賢明な勇者様は思いつきました!
魚人達はみんな《水中耐性》を持っているのだから、『魚人達を海底に逃がしてやろう!』と」
解決放棄⁉︎
ここへきて人類と魚人の友好関係諦めましたよ⁉︎
「もちろん、私達の先祖様も悩みました。住み慣れた地上を離れて暗い海底で暮らすなんて嫌だという声もあったのです。
そこで賢明な勇者様は仲間のドワーフ、に頼み、あるものを作らせました」
「ちょっといいか?勇者が賢明だとか言うけど、最初の計画失敗してるし、その場合もすごかったのってそのドワーフじゃね?」
「何を言ってるんですか!
勇者様は当時まだ使われていなかった混合魔法をすでに使っていたり、地形によって小さな消費量で大きな魔法と同じ様な効果を発揮するなど、頭を使う魔法使いの中でも更に頭のいい部類だったそうですよ!
同じ世界の住民とは思え無いくらいです!
勇者様の伝説も知ら無いなんて、シューヤは何処の出身ですか?」
何だかどっかで見たことあるような勇者だな。
「ちょっと遠くて戻るのは大変なんだけど、ニホンって国だよ」
「ニホン?冗談もほどほどにしてくださいよ〜勇者様と同じ出身地なわけ無いじゃ無いですか〜」
「イヤ、ゴメンウソ。マチガッタワ。オレノ、シュッシンハ、ニッポンダヨ」
わかったわ。俺の大好きな異世界転移のテンプレ勇者に似てたんだわ。というかそれそのものだわ。
危なかったわ〜。
勇者に祭り上げられるところだった。
俺の誤魔化し上手いわ〜。
「やっぱり冗談だったんですか。
遠い外国の人だったなんて言葉が上手だから気づきませんでしたよ。
最初にあった時の格好もニッポンの文化だったんですね!」
「も、モチロンソウダヨ。そんなことより勇者は何を作らせたの?」
ニッポンの皆さんゴメンなさい。
あなた方はマッパで生活していることになりました‼︎
「あぁ、話が脱線してしまいましたね。
勇者様が作らせたのは永遠の太陽です。
永遠の太陽は空気中の魔素を原料に、昼と夜にそれぞれ相応しい光を今も私達の村に届けてくれる魚人の宝とも言うべき魔道具です」
魔道具ぅぅぅ!
やっぱりあるんですね魔道具!
それがあれば俺もバカ威力の《メテオ》とか、なんでだか何も起き無い《ウォーターブレット》なんかでは無い実用的な魔法が使える!
「そして、永遠の太陽の話を聞いた先祖様は覚悟を決め、海底で住むことにしました。
ざっとこんな感じが私達魚人の大きな歴史でしょうか。
そのあとセイル様が勇者様のパーティで活躍されて、魚人が地上の人間に認められたり、それでも住み慣れた海底を魚人は離れなかったり、魔王が永遠の太陽を狙ったりはありましたが、まぁ、話してもあんまり面白くは無いですね」
「ん?魔王が永遠の太陽を狙ったことがあったのか?」
「はい。しかし、魔王自身は海に入るのを嫌い、一部の眷属だけで攻めてきたようです。
『少し興味を持った』といった程度だったんだと思います」
「その魔王って、『神速の魔王』だったりする?」
「そうですが、よく知っていましたね」
「いや、さっき死んだデカいスケルトンがその魔王の手下らしいんだけど……」
「え?まさか!そんなはずは……」
メイは驚いているが、今の俺には大したことでは無い。
何故なら、俺の目には暗い海底で、ほんの僅かな太陽の光だけで照らされた幻想的な村が写っていたのだから。
ありがとうございました!
テンション上がってるので、今日中に出来たら今日中、遅くても明日の朝には次話投稿します!