第9話 人魚
明日からしっかり書き溜めます(フラグ)
ここは沈没船。
今、シーカイザースケルトンとかいうなんかやたら強いらしい魔物を一撃でノしたところだ。
そうしてお姉さんを助け出した俺は勝利の余韻と男のロマンである沈没船の損傷による喪失感、スケルトンが喋ったことへの驚きに浸っている。
ふと下を見れば助け出したお姉さんはかなりの傷ついて倒れている。
俺は自分の感傷の時間を少し後悔して、さっきから男の看病に集中して、俺がスケルトンを倒したことにも気づかない様子の少女のところへ連れて行こうとする。
あれ?お姉さんどうやって連れて行こう?お姫様抱っことか?
困った俺は側に倒れるお姉さんの顔をまじまじと見つめる。
さっきまで暗くて見えなかった顔が衝撃によって空いた穴から差す光によって照らされる。
「び、美人!」
メッチャ綺麗だった。
そして俺はずっと彼女らを海底人などと呼んでいたことを後悔する。
彼女らは海底人など野蛮なものではない!
そう!彼女らこそ本物の人魚だ!
「シ、シーカイザースケルトンを倒した⁈」
お、あれだけ大きな音を出していたのに、気づかなかった少女が俺がスケルトンを倒したことに気付いたようだ。
「すまないが、治療を頼んでもいいか?」
「は、はい!分かりました!」
少女は眩しそうに目を細めながら俺の方に向かってくる。逆光か。
そして俺の側まで来ると目を瞑り、俺に向かって詠唱を始めた。
「……ヒール!」
「いや、ごめん。俺が治して欲しかったのはお姉さんの方なんだけど……」
「え?…………キャァァァ!」
少女が目を開けた瞬間、何故だろう、逃げられた。
あ、そうか、俺は今緑竜の頭蓋骨を被っているんだった。
さっき誤解は晴れたはずだけど、さっきまで戦ってた敵にそっくりだったんだもんな。驚くのも仕方ない。
隣の部屋まで逃げていった少女を追いかける。
「ごめんな、これ外せないんだよ」
「外さなくていいです!しっかり隠して下さい‼︎」
仕方がないので沈没船の定番の樽を拾い、被る。
ちょうどよく、目のところに片方分穴が空いてるのが落ちていたのだ。
おそらく、そこから中身を出していたのだろう。
「よし、隠したぞ!」
恐る恐る少女は後ろを向く。
「……キャァァァ!馬鹿ですか?下を隠してください!」
俺をみて、顔を真っ赤にして隠してるのか隠してないのかわからない様な隙間だらけの手で目を隠す少女。
どこかで見た様な光景に、とても嫌な予感と共に下を見ると、
「全裸ぁぁぁぁ⁈」
スッポンポンでした!
〜〜〜
俺は今、海藻のような緑の物で俺のモノを隠しながら人魚の村に向けて歩いている。
隣には疲れた顔の少女がお姉さんを背負いながら歩き、背中には俺より大きな男をおぶっている。
大変そうに見えるかもしれないが、俺の方はステータスからすれば大したことはない。
しかし、そのステータスにない精神体力みたいな物がもしあったらかなり削れているだろう。その理由は
俺は2回目の転移からずっと裸だったのだ!
ちなみに紳士な俺が少女にお姉さんを任せてるのもそれと同じ理由だ。
おそらく、原因は前回ドラゴンの胃液で初期装備が溶けたことだろう。
ドラゴンを倒して目覚めた時俺は裸だった、魔王を倒して世界に戻った時も裸のままだったのだ。
そして俺は前回の場所から、同じ装備のまま転移した。
俺は今まで全く人に会わなかったし、気づく機会が無かったのだ。
ん?俺は転移してから誰かと話した気がする。
ーー神様‼︎
あのジジイィィィ!
と、いつもなら叫んでしまうところだが、今はできない。
何故なら、ただでさえ下がりまくっている隣の美少女人魚の好感度をこれ以上下げる訳にはいかないからだ。
俺が裸であると発覚した後、俺はすぐに近くの箱に入っていた緑の海藻の様な物で前を隠して謝った。
少女は表面上は許してくれたものの、俺の3メートル以内には決して近づかないようにしているらしい。
近づいてもさりげなく離れられるし、明らかに大変そうなお姉さん人魚も俺には一回を除いて近づかせなかった。
その一回というのは、俺が治療をした時だ。
もちろん俺に医学の心得なんてない。
しかし、船から出るために男を担いだ時、男の意識が戻ったのだ!
男は、
「すまないがMPがもうない。後は頼む」
と言うと、目を開くこともなく眠ってしまったが、『気絶』は状態異常に入るらしく、《状態異常耐性》は俺が触れたものの状態異常を回復するらしい。
そのことを、少女に伝えた時に渋々お姉さん人魚の爪先に触れることを許してくれた。
その時に分かったことだが、人魚の足は水かきがついていて、腕や足の一部に鱗があること以外はほとんど人間と変わらないようだ。
そこで、目を覚ましたらしいお姉さんは男のように何かしゃべることもなく気持ちよさそうに眠ってしまった。
今も少女の背中で「ンン、ハルフ恥ずかしいよむにゃむにゃ」とか言いながら少しにやけている。
そんな気の抜けたお姉さんとは対極のようななんとも話づらい雰囲気を少女は纏っている。
裸だったしな。
水の中なのに悪い空気が流れている。
仕方がないとはいえこのまま何も喋らずに歩き続けるのは辛い。
場の雰囲気をよくしようと俺は少女に話しかける。
「君たち名前なんて言うの?」
失敗した!警戒心を和らげようとして二人称が『君』になってしまった!
ナンパっぽくなってる。海でナンパとか洒落になるな。
すいません。
「その人がハルフ、この娘がメロ、私はメイです」
この娘?なんか違和感がある。メイの方がメロよりかなり小さいのだ。
「何歳なの?」
「3人とも16歳ですけど?」
え?3人とも同い年じゃん?というか3人同じ歳なんだ。
「今、驚いた顔しましたね?」
メイがジト目で見てくる。
「い、いや?……すいません、しました」
「え?本当にしてたんですか!」
しまった。俺は今緑竜の頭蓋骨で顔が隠れてるんだった。
メイは明らかに落ち込んでいる。
コンプレックスだったのか。
「俺は小さい方が好きだし、メイは可愛いよ」
言っちゃった!
イケメンにしか言えないようなことを異世界に来たこととその場のノリで言っちゃったよ!
また俺の好感度が下がる!
「え、そ、そうですか?ほ、褒めても何も出ませんよ?」
ーーチョロインでした‼︎
ありがとうございます!
見直しの時間が減ったので、誤字脱字等増えていると思います。
すいません。