89話 俺が一騎当千のショタ野郎だったらどうするんだよ!!!
死んだ魚の様な虚ろな目で呆然とする俺にアスラは色々説明していたが、俺の頭にはサッパリ入って来なかった。考えている事と言えば、また増えた人員をオリビア達にどう説明しようかという、隠し子が見つかった時の間抜けな父親の様な事だった。
「ようオリビア!! 出かけたついでに奴隷を買って来たぜ!!! ハハハ、いい尻してるだろ?」
いかん、明るく切り出す作戦はねぇな。どう考えても魔法を連打される未来しか浮かんでこん。
「実は孤児を見つけてな。見捨てて来るのもアレなんで拾って来ちまった。情けは人の為ならずって奴さ」
悪くないが、ハイアが黙って従うとは思えない。こっちも却下か。
「ドラゴンに道を教えたらお礼にくれたんだ」
……なんで本当の事なのに一番嘘クセェんだろう……。やっぱりこっちの懐事情を話してアスラに連れ帰って貰って――
《リュウセイ、リュウセイ!》
「……あ? ああ、悪ぃ、考え事してた。何だ?」
《あのドラゴン、行ってしまったぞよ?》
「え?」
慌てて周囲を見回したが、そこにもうアスラ達の姿は無かった。あるのはそろそろ窒息して痙攣し始めているフローラだけだ。
「ちょ、待てよ!! 弟を殆ど見ず知らずの人間に預けて行くとか正気か!? 俺が一騎当千のショタ野郎だったらどうするんだよ!!!」
いや、命に賭けて俺は一騎当千のショタ野郎では無いが。男の娘とかそんなモン都市伝説でしかないと信じているのだ。
《何を言っているのか分からんのじゃが、リュウセイは勘違いしておるのぅ》
「何をだよ!!」
《それ、雌じゃぞ?》
…………メス? 雌だと?
いや、いやいやいや、待て待て、あんな口調でメスはねぇよ。ガサツで乱暴で向こう見ずなあの性格はどう考えても小学生男子のソレだろう? 全く、ラギも耄碌したもんだ。そんなモン、こうしてひっくり返せば一目瞭然に……
俯せのハイアの腹の下に足を突っ込み、ゴロンと仰向けに転がして俺はハイアの股間をチェックした。
…………
……
ねぇな。雌だ。
「って尚更マズイだろうが!!! 妹を殆ど見ず知らずの人間に預けて行くとか正気か!? 俺が万夫不当のロリ野郎だったらどうすんだよ!!!」
勿論、天地神明に誓って俺は万夫不当のロリ野郎では無いが、倫理的にヤバ過ぎる。幼女を絶対服従の奴隷にするとか、社会的に抹殺されてしかるべきサイコ野郎だ。しかも実の兄からの贈答品。そう考えるとアスラとの友情が急速に冷めて行く気がした。
《しかし、この小娘を置いて行く訳にはいかんのじゃ。せっかくドラゴンの偉いのを見つけたのに、リュウセイは『六魂珠』の事を聞きそびれたからのう。こやつから聞き出すしかあるまい?》
「そうだったーーーーーッ!!!」
不覚!!! こんなロリじゃなくて『六魂珠』をくれってんだよ!!!