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88話 大平原のど真ん中で全俺が泣いた。

第三次(大惨事?)イケメン大戦はイケメンの血を流す事もなく、両者の固い握手によって講和へと至った。これは俺史の中でも革新的な出来事だったし、この世界での初めての同性の友人に俺はテンアゲ状態だった。少なくともフローラが加入した時の17倍(当社比)は嬉しいね。なんならここからは『リュウセイとアスラの友情フォーエバー ~時々魔王と勇者みたいなの~』に改題してもいいくらいだ。


「さて……あのたわけにも詫びをいれさせねばならんな。我が友に対しての無礼、身内であっても見過ごせぬ」


うむ、若本ボイス(雰囲気)で愉快な容姿のアスラはやっぱ胸熱だぜ。


威厳たっぷりのアスラはまだ地面でゼイゼイと息を荒げていたハイアの正面で腕を組み、見下したまま言い放った。


「ハイア、リュウセイに謝るのだ。喧嘩を売って負け、命まで救って貰っておいて何も言わずに済まそうなど俺は許さんぞ!!!」


いい兄貴だなぁ。その弟はどうしてこんなんなんだろう? 反抗期か?


はたして、やはりハイアは素直に謝らなかった。


「イヤだ!! なんでオレが人間なんかに謝らないといけないんだよ!! オレは助けてくれなんて頼んでねえ!!!」


「貴様……ドラゴンが一族の誇りを汚す気か……?」


「う……」


うお、愉快な外見してんのにすげーこえーよアスラ。なんか怒りのオーラに反応して空気がビリビリしてんだけど? 小石とか浮いてるし。


「わ、若、確かにハイアシンス様は先走ったかもしれませんが、所詮相手は人間ではありませんか。そう頭ごなしにお怒りになら――」




ドゴッ!!!!!!!




ハイアを取りなそうとしたお付きのドラゴンが瞬時に俺の視界から消え去った。いや、見えてはいたが、ちょっと信じられない光景に脳が理解を拒否したんだろうな。


だって、人間に殴られてドラゴンが地面を水切り石みたいにポンポン撥ね飛ばされる光景なんて非現実的過ぎるだろ? あんな事、俺でも出来るかどうか……


「我が親友リュウセイを軽んじる発言は断じて許さぬ。次は殺すぞ」


……いつの間にかマイン親友フロイントになってる……。


つーか、あれでも手加減してたんだ……。アスラを怒らせるのは止めよう。たとえたぷたぷとした腹がチャーミングでも揉んで遊んだりしちゃダメだな。親しき中にも礼儀ありだ。


ちなみに、怒るアスラを見てもう一匹のお付きのドラゴンとハイアはガタガタ震えながら尻尾を丸めていた。多分、ドラゴンの服従のポーズだと思う。


アスラだけ世界観が違うよな。ここだけシリアス空間になってやがる……。


「……どうやら長く戦いの無い時代が続いてはドラゴンと言えど自惚れるのは免れんか。ならば俺が罰を与えてやる。リュウセイ、手を貸してくれないか?」


「あ、ハイ」


俺まで怒られては堪らないので、俺は反射的にアスラに手を差し出した。け、決して怖いからじゃねぇぞ!! オトモダチに手を貸すくらい当然の事だろ?


「あ、アニキ、何を……!」


「最早貴様と話す事は無い。償いを終えるまで精々後悔するがいい!! 『天と地と竜のことわりを持って人の器と成し、ここに隷属の契りを結ばん!』!!」


アスラの口から長い呪文と共に膨大な魔力が迸ったが、うっかり手を貸してしまった俺は吹き飛ぶ事も出来ずに翻弄された。アババババ!! もう呪文なんか聞こえねー!!!


呪文は聞こえないが周囲に巻き起こった変化は甚大だった。ハイアを中心に地面に魔法陣の様な文様が浮かび上がり、緑色の雷が檻となってハイアを包み込んだのだ。噴き上がる暴風と轟音に俺の聴覚までおかしくなりそうだった。


そんな風と音の嵐の中でもアスラは最後の一節を唱え終わったようで、緑雷が収束し、ハイアをメキメキと締め付け絶叫させた……と思うが俺の耳には届かない。


それでも緑雷は収束を止めず、やがてハイアの体の方が縮まり始め、その身を完全に覆い尽くしたかと思うと最後に大音響を放って弾け飛んでしまった。


しばらく耳鳴りがして動けなかったが、急速に静寂を取り戻した平原の真ん中で俺はそっと目を開いた。


「終わったぞ、リュウセイ」


「終わったって、お前……何も殺さなくても……」


あっさり言い放つアスラに俺は呆然と呟くしかなかった。目を回しているお付きのドラゴンはまだ健在だが、ハイアの白い巨体はもうどこにも見当たらなかったのだ。恐らく、あの緑雷で粉々に――


「殺す? 物騒な勘違いをして貰っては困るぞリュウセイ。ハイアならここに転がっているだろう?」


「そこ? ……あ……」


アスラが指差したのは俺達の足元だった。そこにはどう見ても人間の子供にしか見えない、白い髪の子供が俯せで目を回していた。白い尻が眩い。いや何言ってんだよ俺は。


「これ……ハイアなのか?」


「ああ、強制的に人化させて従わせる隷属魔法を掛けた。精々扱き使ってやってくれ」


「……ん?」


いや、何言ってんだ? 隷属? 扱き使う?


俺の中に嫌な予感がムクムクと大きくなっていく。この流れはまさか……!


「ハイアをリュウセイの下僕にしておいた。どんな命令であろうとも絶対服従を余儀なくされる超強力な魔法ゆえ、俺でももう解く事は出来ん。ハハハ、こやつにはいい薬よ」


「厄介者を押し付けられたーーーーーっ!!!」


大平原のど真ん中で全俺が泣いた。全然運なんか良くなってないじゃん!!!

気が付いたら書き終わっていました。質問されても何も答えられません。アババ。

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