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86話 …………殺っちゃった?

「…………イッテェ~…………」


まるで遊園地のジェットコースターが途中で脱線したみてぇだ……。普通死んでるぞ……。


逆説的に言えばこうやって考える事が出来ると言う事は生きてるって事だな。我思う、ゆえに我有りだ。生死確認の為のセリフじゃねぇと思うが。


とはいえ、やはりショックは大きかったらしく、一瞬だが俺とした事が気絶していたらしい。草が30メートルほど根こそぎ抉り取られているのは、どう考えても俺とあの白竜の墜落痕だろうな。


しかし、その角度から察するに落ちた時は大分高度が下がっていたようだ。じゃなかったら俺でももうちょっとダメージを受けていただろう。草が生えてたのもショック緩和に一役買ったのかもな。草生えるわとか馬鹿にしてスマン。


「っと、そういやあの白竜は……お、いたいた」


俺より質量があるせいか遠くまで滑っていった白竜はどうやら完全な失神状態らしい。無理もねぇな、完璧に決まっていなかったとはいえ、俺のステータスほどの力で首を絞められた事はねぇだろ。ついでに言えば失神に加えて失禁もしている。ん~、ドラゴンの尿……漢方薬とかの材料にならんかな?


「ハイアシンス!!」


おっと、そう言えば兄貴らしいドラゴンが残ってたな。それと取り巻きっぽいのがもう2体。……今の奴が最弱だとすると、3体同時は厳しいか……オリビア召喚した方がいいかなぁ?


……やめとこう。昼からドラゴンの事を調べるはずなのに、当のドラゴンとバトってるなんてどう言い訳していいのかワカラン。


それにしてもあの白竜、口からダラーンと舌なんか出しちまってブッサイクなツラしてやがんな。家族がみたら泣くぞ。あ、見てるな家族。


「ハイアシンス!! ハイア!!! くっ、ダメだ、呼吸が完全に止まっている!! 心の臓も今にも止まりそうだ!!!」


……ん?


「若!! このままでは……!」


「言うな!! こ、こんな所でハイアが死ぬはずが無いのだ!!! 起きろ、ハイア!!! ハイアーーーーーッ!!!」




…………殺っちゃった?




いや、別に俺は悪くないよね? だってのんびりツーリングしてた所を殺しに来たのはあの白竜だし? 100歩譲っても正当防衛であって過剰防衛じゃねぇよ。しかも殺すって宣言してたから。ま、まぁ、本気で殺そうというよりはその場のノリで言ったんだが。


…………はぁ、そんな言い訳しても空しいか。仕方ねぇ、兄貴はいい人、いや、いい竜みたいだから出来る限りの事はしてみっか……。


「おーい、そこの竜さんよ」


「……人間、今俺はお前を引き裂きたいのを必死に堪えているのだ。ハイアがこうなったのは自業自得だが、それでもお前に対する怒りは抑え難い!!! 俺が正気でいられる内にここから消えろ!!!」


うへっ、案の定スッゲェ怒ってらっしゃる! でもやっぱ稀に見る人格者だな、この竜。普通は家族の仇だったら身内が悪かろうが問答無用で殺しに来てもおかしくねぇのに我慢してやがる。この精神力は尊敬に値するぜ。


「早とちりすんなよ、まだ死んだワケじゃねえ。ちょっとどいてくれ」


「何をする気だ!?」


「話したって理解出来ねぇよ。時間が無いから失礼するぞ!!」


俺は上に飛び上がり、そのまま仰向けになっている白竜の胸を踏み付けた。最初はそっとだけどな。思い切りやったら多分貫通するし。


「な!? ききき貴様!!」


「話し掛けるな!! 結構加減が難しいんだよ!!」


兄貴が切れているがそれどころじゃない。ドラゴンの蘇生限界点なんぞ俺は知らねぇんだからな。事態は一刻を争うのだ。


「もう少しだけ強く……オラッ!!」


ドムッという音に不安を覚えるが、一瞬手ごたえがあった。多分これで……。




「……ガハッ!!!」




「ハイア!?」


おう、間に合ったか……活を入れたのなんざ、高校の時に柔道の時間に習った時以来だったからなぁ。なんとか蘇生したようだ。体育の遠藤先生に感謝しよう。もう顔も思い出せないけど。


「ハァ、ハァ、ハァ……」


「よー、死んでねぇんだから俺は行くぜ? 元々そっちが売って来た喧嘩だけどよ、理由は知らんがその白いの以外は別に俺と揉める気もねぇんだろ? あばよ」


「待て!! いや、待ってくれ!!」


白いのを見ていたデカイのが俺を呼び止めた。あーあ、やだなー、やっぱりオリビア呼ぼうかな~?


「……なんスか?」


不機嫌な顔で振り向いてみたが、どうもこれから死ぬまで戦おうぜって雰囲気でもなかったのでちょっと様子を見て見る事にした。


「出会い頭に暴行を働いた事を許して欲しい。ドラゴンは普通は縄張りを侵す者以外は襲わぬ物なのだ。しかし、こいつは生まれてから一度も縄張りから出た事が無い世間知らずでな。本来、闘争に敗れたのなら殺されても文句は言えん所をこうして命まで救って貰った。見た事もない方法だったが、貴殿は医者か?」


おお、育ちがいい感じ。家族の白いやつはなっちゃいないが、フローラ曰くこのデカイのは1000年生きてるらしいし、その分礼儀を知ってるのかもな。


「いや、俺は医者じゃねぇよ。散歩してた冒険者だ。誤解が解けたんならいいさ。もう会う事もないだろうが、元気でな」


「冒険者? それならば一つ聞きたい事があるのだが……」


「俺に分かる事なんてねえと思うけど、何だ?」


何たって異世界人だからな。数日しか過ごしていない俺よりあんたの方がずっとこの世界には詳しいだろうよ。


「この辺りで我らの同胞が大量にゾンビ化している場所の情報はないだろうか? そこで少々調べたい事があるのだ」


……なんで俺に質問する奴は俺が知ってる数少ない情報を聞いて来るんだろうね?

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