85話 全く、こんなスタントなんて二度とやりたくねぇぜ
まるで爆撃でも受けたかの様な砂煙を上げ、後方を飛んでいた白いドラゴンが呵呵大笑した。
「ハーッハッハッハッ!!! ノロノロしてんじゃねーっての!!!」
「ハイアシンス!! 俺は攻撃しろなどとは言っていないぞ!?」
「へっ、あの程度でおっ死ぬ程度の奴じゃ聞いても無駄だろーがよ!! アニキはドラゴンの癖に一々細かい事を気にし過ぎなんだよ!!!」
「この戦闘バカが……! 人間といえど、無闇に殺すなど……」
「弱い奴は死んで当然だろ? 死ぬのが嫌なら群れて街から出るなってんだ!!!」
「つまり、ここでテメェが死んでも弱いからって事でいいんだよな?」
「「「なっ!?」」」
俺は急降下して他のドラゴンから見れば大分小さい白い竜の背中にしがみ付いた。全く、こんなスタントなんて二度とやりたくねぇぜ。
「ば、バカな!? どっから湧いて来やがった!?」
「バカはテメーだろうが!! んなもん、爆風に乗って飛んで来たに決まってんだろ!!」
ブレスが直撃する前にラギの剣閃で穴を掘ってフローラを叩き込み、シューティを指輪に戻して爆風で上空に飛ぶと思った以上に高い所まで上がってびびったけどな。落下コースにこの白竜が居て良かったよ。しかもコイツが元凶くさいし。
「一体どういうつもりだよ!! 返答次第じゃその首叩き落としてやらぁ!!!」
「ま、待て人間!! 今のはそのバカ者が先走っただけで我らの本意では……」
「先走ったか先走り汁かなんて知るか!!! それに俺はコイツに聞いてんだよ!!!」
「う、うるせぇ!!! 人間がオレに指図するなっ!!!」
そう言って俺を振り落としに掛かる白竜だったが、生憎俺は健脚でね。その程度で振り落とされるなんて思うなよ!!
「こ、コイツ、人間の癖にオレの動きに耐えられるのか!?」
「よし、良く分かった。テメェはじわじわと恐怖を与えてから殺す!! バカは死ななきゃ治らねぇんでな!!!」
俺は白竜の首に向かってじりじりと移動し、足で首を挟み込んだ。あのバカデカいドラゴンじゃいくら俺の足が長くても巻きつける事は出来なかっただろうが、この小柄なドラゴンならなんとか8割くらいはイケるな。そらよっと!!
「ぐあっ!? ガアアアアアアアアアッ!?」
「ハイアシンス!!」
どうだ、たとえドラゴンでも呼吸してる生物なら首を締め上げられると苦しいだろ? 外そうにも、お前らの手じゃ届かねぇもんな!! そのままくたばりやがれ!!!
ガムシャラに暴れて拘束を解こうとする白竜だったが、俺のステータスを見くびるなよ。あのデカい奴相手じゃヤバイかもしれんが、この中で一番小さい奴に外せるか!
それでも流石はドラゴンと言えばいいのか、そのまま2分くらいは俺の締め付けに耐えやがった。やっぱり肺活量が段違いなのかね? 空を飛んでるし、薄い空気でも運動出来る様に進化しているのかもしれん。人間なら3秒以内に落とす自信があったんだが……。
「ぐう、う…………」
ようやく抵抗出来なくなって全身から力が抜けていくドラゴンだったが、そこで俺ははたと気付いたよ。熱くなっていたせいで忘れてたけど、俺、今空に居たんだった。そんなトコで乗ってる奴を落としたら、まぁ、俺も……ね?
「うおわーーーーーっ!!!」
シューティ並みの速度で俺と白竜は地面に向かって墜落していったのだった。
自滅。南無。