81話 ・・・もう俺は女の涙を信じない・・・!
無事部屋を変えるまでの経緯はさっくりと省かせて貰おうか。とりあえずもう夜になってる事で全てを察してくれ。俺は思い出したくねえ。
「さて、今後の方針だが、何か意見がある奴は?」
「ハイハイハイ!!! そろそろご飯の時間だと思うので下に行きたいです!!!」
「よし黙れ。出来ればもう一切口を開くな」
俺の辛辣な言葉にフローラは涙目になってベッドの上で体育座りして口を噤んだ。このパーティーに入ったからにはもうこれまでの様に暮らせると思うなよ?
「リュウセイ、そもそもソイツには何も説明してねぇですよ。意見の出しようがねぇです」
「ああ・・・宝石頂いたらポイする予定だったからなぁ・・・」
「ヒュー♪ あ、扱い悪~い・・・アハ、アハハハハ・・・・」
コテンと横になり涙で枕を濡らす様は少々同情を誘うな・・・
「・・・マロン、簡単に説明してやってくれ」
「ふん、リュウセイは異世界人で帰るのには六魂珠が必要です。ちなみに残り後3つです」
見事に簡潔な説明だぜ。流石理論派・・・
「異世界? 六魂珠? 後3つって何が?」
「チッ・・・アホは口を開くなです。喋るとアホがうつるです」
「・・・うえぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・」
幼女に泣かされるなよ・・・
「・・・もういい、メシだメシ。腹が減ってるからいい案が出ねぇんだよ。行くぞフローラ」
「わーい!!!」
・・・待て、さっきまでの涙はどこ行った?
「リュウセイ、女の涙を信じるんじゃないわよ」
「そんなの女なら誰だって出来るです」
「あら失礼ね。悲しいと思ったら自然に出て来るだけよん」
「・・・もう俺は女の涙を信じない・・・!」
また一つ知りたくも無い世界の真理に傷付いた俺の心を癒してくれる物はないのだろうか・・・
「そういやお前の付き人はどこ行ったんだ?」
「シーッ! ・・・仲間って言ってよね! 姫だっていうのは秘密なんだから・・・」
多分誰も姫とか信じねぇから構わんと思うが。俺だって六魂珠を持ってなけりゃ見開きで嘘だッ!!! と叫んだよ。
「で、そのお仲間はどこだ?」
「みんな城に帰っちゃった。じゃあね姫って」
それ姫じゃなくてダチ扱いじゃねぇか。
「あ、リュウセイによろしくってさ。出来れば娶ってあげて下さいだって!! きゃー♪」
ギャーッと断末魔を上げたいのは俺の方だな。不良在庫を押し付けられたとしか思えん。返品窓口くらい教えてくれ。
「そうか。それは置いといて、マロンは何かいい案は無いのか? お前の知恵袋の知識からよ?」
「んむ・・・なら明日は今日行くはずだった図書館に行くです。他の種族を尋ねるにも、まずは情報を集めておかないといけないです」
「そうね・・・私も長い事あの洞窟に住んでたからあんまり世情に詳しくないし・・・」
「皆・・・もっと構ってよぉ・・・」
知らん。
「それに、無駄飯喰らいが入って来たからお金も稼がないと。部屋代も食費も上がるんだから、今のままじゃ旅をするには心許ないわ」
チクリ。
「依頼でもう少し稼ぐですよ。内容はマロンが見てやるです。新しく入ったのは役に立たなそうですし」
チクリチクリ。
「はぁ・・・手間ばかり増えるわねぇ・・・」
チクチクチクリ。
「・・・涙って・・・何で塩味なんだろう・・・」
もう騙されんよ?
「その辺にしとけ、せっかくのメシが不味くなる。じゃあ明日は図書館な。魔族は当てがあるからいいとして、ドラゴンとピクシーの事を中心に調べてくれ」
「どっちも滅多に人前には姿を現さない種族だしね」
「そうなのか?」
ドラゴンゾンビは一杯居たじゃん。殺しちゃったけど、その事がバレたら怒るかな?
「怒らないわよ。リュウセイは顔も知らない人間のゾンビをドラゴンが殺したからといって怒るの?」
「・・・怒らねぇな。ただの魔物だし」
「おかわり!」
そういう事なら良かった良かった。
「でも・・・あの場所はちょっと変です。単なるゾンビならまだしも、ドラゴンゾンビなんて中高位の魔物があんなに居るなんておかしいです。もしかしたら、あそこはドラゴンの埋葬場なのかもしれないですよ」
「埋葬場・・・墓場か?」
俺の質問にマロンは頷いた。
「ドラゴンは人気の無い場所で仲間の遺骸を埋葬する習性があるです。それが何らかの理由で蘇って大量発生に繋がってるのかも・・・」
「いきなりホラーかサスペンスだな・・・」
「おかわり!!」
おかわ・・・違う、じゃあボスみたいなのに出くわさない為にもあの場所には近付かない方がいいか。
「交渉の基本として、そいつらが好きそうな物でも調べて手土産にすりゃ好感触かもな。その辺も注意して調べ――」
「おかわり!!!」
「「「うるさい!!!」」」
ひたすらにメシを詰め込むだけのフローラに切れた俺はフローラを羽交い絞めにし、オリビアとマロンに目で合図した。2人は俺のアイコンタクトを察し、飲み終わったお冷の氷を手に、フローラの服に流し込む。
「あひゃあン!!! あっ、はあっ!? は、入っちゃダメなトコに入っちゃう~!!!」
床でビクビクとのたうち回るフローラを見て、俺は真剣に今晩コイツが寝たらどこか遠くに捨てて来ようかと吟味したのだった。
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