7話 右脳から息を吐くような感じだ
「だからぁ~、右脳で息を吐く感じよ!!」
こんな説明で魔力を扱えるようになった俺には魔法使いの素質があるのかもしれんな。30まで童貞でいる気はないが。
地球では使えない技術だろうと思うが、俺は魔力の扱いを覚えた。
ちなみにコツは、右脳から息を吐くような感じだ。
そんな俺のステータスはこんな感じだった。
名前:佐々木 流星
レベル:81
生命力:1280/1280(+470)
魔力:834/835 (+430)
筋力:79(+24)
知力:72(+22)
敏捷:79(+27)
器用:64(+17)
運:145(+57)
【習得スキル】
『言語理解』『聖剣使いLV1』『称号習得率上昇』『スキル習得率上昇』』『運LV上昇』『要訣』『魅了無効』『精神耐性』
【習得魔法】
『召喚魔法LV1』
【称号】
異世界より来たりし者・魔王を倒せし者・勇者を倒せし者・幸運の星・早熟・愛に殉じる者・傍若無人・走り屋・ラッキースケベ野郎
・・・うん、意味が分からんな。特に【称号】がな。
「なぁ、参考までに聞くんだけど、【称号】って何?」
・・・アレ? グリューネ(仮)は何で鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔してんだ?
「ちょ!? まさかリュウセイ・・・【称号】持ちなの?」
あー、これって相当レアなのかね?
「らしいぞ? 何の意味があるんだ? 威張れるのか?」
「そんなチンケなものじゃ無いわよ!! ステータスの能力の欄の横に何か付いてない?」
この()の事か?
「ああ、あるぞ。何か+24とか+22とか書いてあるが」
「何ですって!?」
さっきからグリューネ(仮)がやかましいな。ここ、洞窟だから声が響くんだぜ? もう少しレディの慎みを持ってはどうだろうか?
「何だよさっきからうるせえな。驚くのはいいから解説キャラとして早く嬉々として解説しろよ」
「解説キャラって何よ!! もう・・・いい、リュウセイ? アナタ、ステータスの事は絶対に他言しちゃダメよ。間違い無くやっかいな事に巻き込まれるわ」
グリューネ(仮)がなんだかちょっとマジな顔で俺に注意して来た。
「どういう事だ?」
「それは【称号】によるステータス修正よ。普通は1か2がプラスされるのが精々で、リュウセイみたいに+24なんて・・・しかも複数なんて、英雄クラスのおとぎ話でしか聞いた事がないわ」
ステータス修正か。多分この倒せし者とかいう2つが主な原因だろうな。
「・・・なあ、お前さんを信頼して俺のステータスを地面に書くから、アドバイスをくれないか?」
俺の見た所、グリューネ(仮)は相当な善人だ。俺がこの世界で1人で生きていくのは正直厳しいだろう。
どこかで賭けに出なければならないが、グリューネ(仮)以上の善人にすぐに出会えるとは限らないし、それ以前に俺はお尋ね者になっている可能性が高い。街に迂闊に近寄ろうものなら、問答無用で手が後ろに回りかねない。
ならばここでグリューネ(仮)の助けを得る事に賭けてみるのがいいんじゃないかと思えた。
なに、それでグリューネ(仮)が協力出来ないってんなら仕方がない。笑ってアバヨと出て行くさ。万一襲ってきたら、もう一度腰の聖剣を抜く必要があるかもしれんが。まさに聖剣使いだな。
「・・・私をそんなに信用していいの? リュウセイを利用するかもしれないわよ?」
何でコイツは暗い顔してるのかね? 名前を隠してる事といい、こんな場所に1人で暮らしてる事といい、何か訳ありなんだろうが、俺にゃ関係無いな。それに利用しようとする奴はそんな事言わねぇよ。
「今更だろ? お前が悪人なら、俺が寝てる間に身ぐるみ剥いだり殺す事だって出来たはずだ。それなのにお前さんは俺にメシまで食わせてくれたからな。だから・・・」
適当な言葉が浮かばねぇな。・・・ああ、シンプルでいいか。
「アレだ、イイ奴だと思ったんだよ」
そう言ったらグリューネ(仮)がエラくビックリした顔で俺を見たかと思ったら、次の瞬間、見開いた目から大粒の涙をこぼした。
「お、おい、どうした?」
魔王といい勇者といいなんだって女ってのはすぐに泣くんだろうね?どこに地雷が埋まってるのか分かりゃしねえ。
「こ、これはちがうの!! な、泣いてる訳じゃないの!!」
いやぁ、その言い訳は無理があるだろ。ちょっと泣き過ぎて鼻水垂れてるじゃねぇか。
仕方ねぇ。キャラじゃねぇのは分かっちゃいるが、目の前で女が泣いてちゃ居心地悪くて敵わんからな。
・・・あくまで俺が居心地悪いからグリューネ(仮)を慰めるだけだからな!他意はねぇぞ!!
「泣くなよ・・・全く、グリューネ(仮)は泣き虫だな・・・」
そう言って俺がグリューネ(仮)の頭を撫でると、コイツはさっきよりもビックリした顔で俺を見て一瞬泣き止んだが、次の瞬間には顔をくしゃっと歪めて本格的に泣き始めてしまった。
「に、兄様と同じ言葉で、私を慰めないでよ!!! う、う、うわぁ~~~ん!!!」
・・・また地雷かよ。俺は爆発物処理班にゃ就職は出来ねぇなぁ・・・
結局俺はグリューネ(仮)が泣き止むまで頭を撫で続けたのだった。