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70話 ・・・・・・・・・もう、俺キレていいよね?

何事も無かったかのように更新。

「うあ゛~~~~~~っ。ちかれた」


金を稼ぐのが大変なのはどこの国でも変わんねぇんだな。いや、世界か。


「みっともないわよ、リュウセイ」


「うるへー・・・俺はもう今日は何もせんぞ・・・」


「・・・・・・リュウセイ、疲れたです?」


「みりゃあ分かるだろ? 汚れと臭いを落とすのにエライ苦労したぜ・・・特にラギが臭ぇんだ・・・」


《ししし失礼な事を言うでない!! 誰のせいで妾が臭くなったと・・・!》


あの後、宿に戻った俺はオヤジに湯桶を3つも注文し、裏庭で体を清める作業に没頭したのだ。とても1つではキレイにはならないと思ったからなのだが、何を勘違いしたのかオヤジは俺達3人が洗いっこする風呂プレイを連想したらしく、頼みもしないのに変な形の椅子やヌルヌルの何かが入った瓶まで用意してイイ笑顔で送り出してくれた。・・・どうもオヤジは俺を性獣か何かと誤解しているとしか思えないが、その瓶に入っているヌルヌルのナニカは擦って流すと消臭の効果があったので、俺はありがたく使わせて貰った。絵面は思い出したくねぇな・・・オイリーだったとだけ言っておこう。


オリビアとマロン? ああ、アイツらも衝立の向こうで体を洗ってたが、別にそんな事はどうでもいいだろ? 小学生と中学生が体を洗ってたからって俺には何の関係もねぇんだから。


「・・・り、リュウセイ、ちょっとそのままにしてるです・・・」


「あん? おっ?」


「ちょ、ちょっとマロン!!!」


オリビアが何故叫んだのかは分からんが、マロンの行動には俺も若干驚いた。だってコイツ、寝てる俺に急に後ろから抱き付いて来るんだもんよ。何だ? 人恋しくなったのか?


「ちょっと黙ってるです! んんっ、・・・天なる神に願い給う、地なる神に祈り給う、羽ばたき疲れた迷える小鳥に安らぎの一枝を貸し賜らん事を・・・」


む? 何だ、子守唄か? そんなモン無くても俺は・・・・・・ん? 何だか疲労が抜けて行く様な・・・?


「エッ!? じ、呪歌!?」


オリビアが呪歌とか何とか言ってるが、これも魔法の一種だろうか? 肩越しに見たマロンの体がぼんやりと光を発している。なんというか、目に優しい光だ。マイナスイオンでも出てんのか?


問い質したい気持ちになったが、俺の背中にしがみ付いて唄う・・・いや、謳うマロンの顔に現れる神聖な何かに俺は口を噤んだ。別に背中にしがみ付いて自爆しようってんでもねぇなら好きにさせとくか。体も楽だしな。


そのまま何小節か続いた所でマロンの歌は終わった。その頃には俺の体の疲労はスッキリと抜けていたのだ。


「おい、マロン、今のは・・・」


「くー・・・」


それを察した俺は早速マロンに今の歌の事を聞こうと思ったのだが、当のマロンは呪歌とやらが終わると同時に眠りに落ちてしまったようだ。


「寝ちまったのか・・・じゃあオリビア、今のは何だ? 魔法とはちょっと違うみてぇだが?」


「・・・今のは呪歌よ。各種族の『巫女』と呼ばれる者だけが使える奇跡と言われているわ。それぞれの種族にだけ伝わる呪歌があって、他の種族に対してそれを聞かせる事は厳禁だって言う話だけど・・・まさかマロンが『巫女』だなんて・・・」


『巫女』ねぇ・・・俺が想像する巫女は千早とかそんなモンを見に着けてる巫女しか思い浮かばねぇから、このチンチクリンが巫女だって言われてもピンとこねぇな。ジュニアアイドルの一日巫女体験みたいなコスプレ染みた物しか想像出来んぞ。


だけど一つ分かった事がある。マロンはマロンなりに自分の失地を回復したいと思って、門外不出一子相伝らしい呪歌を俺に聞かせたのだろう。それは相応の覚悟が必要だったに違いない。


「『巫女』でも何でもいいよ。マロンなりのケジメだったんだろ。そんな事はいいからもう寝ようぜ?」


「結構大変な事なんだけど・・・いいわ、リュウセイがそう言うなら私もこれ以上聞かないから」


「じゃ、そう言う事で、お休み」


そう言って俺は目を閉じた。明日は久々に爽快な朝になりそうだなと思いながら。





















「・・・何を寝ようとしてるの、リュウセイ?」


そんな俺の爽やかな気持ちは地獄から響く様なオリビアに破られた。


「・・・何でお前そんな悪鬼みたいな声出してんの?」


《マスター、僭越ながらそろそろ学習して頂かないと・・・》


《リュウセイは相変わらずリュウセイじゃのう。一人で話が終わったつもりになっておるとは》


ま、またか!? どうしてお前らは俺をチョイチョイ一緒になって責めるんだよ!?


「何だってんだ!! 分かる様に言え分かる様に!!」


「・・・ソレ」


光彩の消えたオリビアが指を指す方にはスヤスヤと眠るマロンの姿があった。


「・・・マロンが何か?」


俺が不用意に発現した途端、シューティとラギからは溜息が、オリビアからは烈火の如く怒りが押し寄せた。


「何か? じゃないわよ!!! そんな所にマロンを寝かせておいたらマロンが明日の朝にはお嫁に行けない体になっちゃうじゃない!!! どうせ皆が寝静まった後に「へっへっへ、コロッと騙されやがって、馬鹿な小娘だぜぇ!!」って言って、え、え、え、エッチな事するつもりでしょ!? 私には分かってるんですからね!!!」


・・・・・・・・・もう、俺キレていいよね? よしキレたぁっ!!!


「じょーーーーーとーーーーーだよコノヤロウ!!! 一回オリビアとはサシで語り合わねぇと理解出来ねぇってこったな、このド貧乳露出狂エルフが!!!」


「ど、どひっ!? ・・・ゆ、許さないわリュウセイ!!! さっきまでなら跪いて私の足の裏を舐めながら「私が間違ってましたクフゥーン」って言えば許してあげない事も無かったかもしれなのに!!!」


こ、コイツ、なんてエゲツナイ妄想してやがる!? しかもそこまでしても許して貰えねぇのかよ!


「誰がんな事やるか!!! 大体お前はだな・・・!」


「何よ!!! そもそもリュウセイが・・・!」


・・・結局、俺の願った爽やかな朝はやって来なかったとだけ言っておこう。

少しマロンの正体に迫りました。でも、2人にはそんなのはどうでもいいようです。

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