69話 刺されるんと違うか?
街に戻った俺達はサッサと冒険者組合で換金を行ったが、そこでマロンが粘り強く交渉し、予想外の高収入を手に入れる事が出来た。なんと金貨24枚だ。
なんでかと言うと、倒した個体の大きさと魔核の合計の値段だからなのだが、実はまだ依頼に対する悪辣な罠が残っていたのだ。
「この報酬の金貨10枚っていうのは一番小さい奴を倒した時の値段です。経験の浅い冒険者はどれを倒しても報酬が変わらないと思っちまうですが、そういう時はちゃんと報告して報酬を上乗せさせるですよ。それに気付かない冒険者は最後までぼったくられるです」
とことん汚い連中だと思うが、向こうも慈善事業じゃ無いって事だろう。とりあえず何も知らないビギナーからは搾取して、痛い目に遭いつつ成長して色々覚えて行くしか無いんだな。
だがこちらにはマロンお婆ちゃんが居るのだ。お婆ちゃんの知恵袋よろしく俺達の知恵袋として活躍して欲しい。
ちなみに、討伐報酬は金貨16枚、魔核は金貨8枚まで交渉で吊り上げる事が出来た。無交渉だと合計で金貨15枚だったらしい事を考えれば、マロンの価値は計り知れない。きっと俺とオリビアだけではその15枚の報酬だけで儲けた儲けたとアホの子の様に喜んだに違いねぇ。
懐が温まり、意気揚々と組合を引き上げる俺達がふと隣の巨乳美人の姉ちゃんの居たカウンターを見ると、そこにはあの呪いの意図を感じさせる人形では無く、良く分からない四足の動物に背後からのしかかる熊みたいな人形が置かれていた。どう見ても交尾的な何かだが、恐らく組合長とあの冒険者を表しているのだろうと思う。四足の動物の目はどこか虚ろで焦点が合っておらず、熊モドキは舌を出して歓喜の表情なのがこの人形を設置した奴の悪意というかセンスを感じさせる。刺されるんと違うか?
「リュウセイ、まず服を買いに行きましょう。一応流したけどまだ臭いわ。その服は諦めた方がいいわよ」
「ああ、それには賛成だ。いい洗剤でもありゃあいいんだが・・・」
この世界の洗剤がどんなのか知らんが、この強烈な臭いを簡単にどうにか出来るとは思えねぇ。そもそも俺は洗濯なんぞコインランドリーでしかした事がねぇんだ。金を入れて洗濯物を入れて洗剤を入れてスイッチを入れる。で、バイトしてる間にキレイになってる便利な生活しか知らない俺に、手洗いは無理だ。・・・そういやコイツら洗濯とかどうしてるんだろうな・・・?
俺は服屋までの道すがら、オリビアとマロンのパンツがあの後どうなったのかを考えたのだった。