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67話 ま、また妾を汚そうというのかえ!?

「ウエッ!? んだよこの腐汁は!?」


畜生、肉弾なんて俺は軍国主義末期の日本兵かよ!?


《ひぃ、ひぃぃ、ばばばバッチイのじゃ!! リュウセイからゲロ以下の匂いがプンプンするのじゃ!!》


「ざけんじゃねーッ!! お前だって腐汁塗れじゃねぇか!!」


《ヒギャァァアア!! 誰か、誰か洗ってたも!! 洗ってたもーーーー!!!》


ラギが壊れて廓言葉と公家言葉が混じり合った変な言葉遣いになったが、洗ってくれというその意見にだけは賛成したい。とにかく鼻が曲がりそうなほど臭いのだ。クソ!! 予定では首の横をすり抜けてラギで首チョンパするはずだったのに!!


「ホラホラ、動かないで!! 今水を出してあげるから・・・」


「オリビァァァアアア・・・」


「キャアア!! ち、近寄らないで!! 今のリュウセイは宿屋の残飯より臭いんだから!!」


こ、こ、この野郎!! 俺達がどんな苦労をしてコイツを倒したと思ってんだ!! お前も腐汁塗れにしてやろうか!?


俺の中にオリビアを抱きしめて2人で汚汁に塗れるというマニア垂涎の選択肢が浮かんだが、それを阻止したのは目の前に現れた白い布だった。


「うぷっ!?」


「・・・ごめんなさいです・・・マロンがヘマをしたせいで・・・」


泣きそうな顔で吐き気を堪えて俺の顔を必死に拭っているのはマロンだった。見た目幼女で普段毒舌なマロンがションボリしていると、泣きそうな小学生にしか見えず、俺も渋々矛を下ろさざるを得ない。その後ろではオリビアも空気を読んで水を手の平から出してラギに掛けてやっていた。どちらかと言えば俺もそっちの水の方がいいのだが、顔中に罪悪感を露わにして自分の手が汚れるのを厭わず俺の顔を拭くマロンを跳ね除けるのは如何にも薄情に見えるだろうし、マロンの罪悪感も収まらないだろうと思ったので、俺はしたい様にさせる事にした。・・・ま、顔にさえついてなけりゃ多少は我慢出来なくもねぇし。別にマロンの為じゃないんだってばよ。


「んぐ・・・で、何があったんだ?」


鼻の穴に布を突っ込まれて悶絶しかけたが、俺はどうにか平静を保ってマロンに問い掛けた。


「・・・スカートが枝に引っかかったです・・・。引っ張ったけど、取れなくて・・・そしたら足元にも枯れ枝が・・・それを踏んだら、大きな音が鳴って・・・それで、頭が真っ白に・・・なって・・・グス・・・」


・・・ま、要するにマロンは鈍臭いんだな。理論的な思考は得意だけど、いざ実行に移して想定外の事態が発生するとパニックを起こすんだろう。秀才タイプの奴に多いクチだ。


何でだろうね、俺の仲間にはどうも精神が脆い所がある奴ばっかりだ。シューティ以外全員俺より長生きしてるはずなのに、ラギに至ってはただのアホの子としか思えない。オリビアは無計画だし、シューティは俺以外の人間の言う事を聞きやしない。脳内の2人は隙あらば俺に歯向かいやがる。こんな事で俺は元の世界に帰れんのかよ?


と、愚痴を言ってみても始まらねぇか。それに脳内のバカ2人以外にはそれなりに助けられている事も事実だ。情けは人の為ならずって言うもんな。


「・・・何でもかんでも上手く行く事ばかりじゃねぇよ。それよりマロンの出番だろ? 角の採取方法を教えてくれよ。汚れてるついでに俺がやる」


「あ・・・で、でも・・・」


「いいからサッサと教えてくれよ。また他の個体が来ても困るからな」


俺は極力マロンの方を見ずに言った。一応成人してんだから、泣き顔は見られたくないだろう。


「・・・分かったです。角は引っこ抜くだけでいいですが、魔核は胸の辺りを切り開かないと取れないです」


「・・・魔核って何?」


聞き慣れない言葉に俺の手が止まる。角だけでいいんじゃ無いの?


「知らないです? 魔核は魔物の心臓に当たる物です。討伐報酬だけじゃ無く、魔物には色々その体から使える素材が取れるです。ドラゴンゾンビは腐ってるから、せめて魔核だけは手に入れるですよ。結構いいお金で買って貰えるです」


流石秀才タイプ。理論の話になればこれ以上頼りになる存在は無いな。オリビアとは大違いだ。


「サンキュ、・・・と、通じねぇんだったな。助かったぜ、マロン」


「・・・さ、先に迷惑を掛けたのはマロンです。・・・り、リュウ、セイ・・・」


「お互い様って事にしとこうや。オラ、ラギ、いつまでも優雅に水浴びしてんじゃねえ。ドビーの胸を切り開かなきゃならねぇんだからな」


マロンが顔を真っ赤にしながら俺の名前を呼んだが、特にリアクションは返さない。別に仲間なんだから名前くらいで一々騒がなくていいのさ。


《ヒィィィッ!? ま、また妾をその汚汁で汚そうというのかえ!? ゆ、ゆる、許してたも、許してたもーーーーーっ!!!》


俺は飛んで逃げようとするラギを掴むと心の準備も無くサッサとドビーの胸にブッ刺した。「ムグッ!?」とか何とか聞こえた気がするが、俺には何も聞こえない。キコエナーイ。


こうして俺達は無事角と魔核を手に入れたのだった。




・・・ちなみに帰りは俺はトランクス一丁で帰った。水洗いした服が中々乾かなかったんだよ!

一番ワリを食ったのは間違い無くラギ。

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