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66話 ・・・ほーら、酷い目に遭っただろう?

「探し始めると中々居やがらねぇ。最初に会えたのがラッキーだったのか・・・」


「ラッキーだったんでしょ、リュウセイなんだから」


あ、そうか、俺の運って異常に高いんだっけか。そんなら適当に俺が方向を決めて探せばいいか。


そう思って俺は地面に落ちている木の棒を真っ直ぐに立て、はぐれたドビーはぐれたドビーと念じながら手を放した。


すると木の棒はパタリと右に倒れたので俺は自信満々に右を指した。


「俺の第六感では右に居るぜ!! 付いて来いお前ら!!」


「・・・うさんくせぇです。何の根拠も感じられねぇですよ」


「非常に遺憾だけど、リュウセイの勘は当たるのよ。怪しいのは言わなくても分かるから、我慢して付いて行きましょ?」

 

テメェら・・・そういう事は本人の居ない所で言えやゴルァ!




「ほら見たか!」


「・・・理不尽です。なんで居やがるんです?」


「深く考えるのは止めましょ。それよりも2人共静かに包囲して。幸い相手はこっちに気付いてないみたいよ」


右に進む事5分、そいつはあっさりと見つかった。しかも後ろから見つけたお陰でそいつは俺達に気付いちゃいないおまけ付きだ。流石は俺の幸運だな。


俺のドヤ顔を見て心底嫌そうな顔をしたマロンだったが、無理が通れば道理が引っ込むのだ。精々悔しがるがいいわ!!


「ほらリュウセイ! いつまでも変な顔してないで離れて!」


あ、相変わらず失敬な女だな! 普通の顔してるっての!!


だがここで時間を食ってまた取り逃がすのもシャクなので、俺はラギを構えて右側に、マロンは左側に回り込んでいった。オリビアは慎重に後方から進みながらドビーに狙いを付けて行く。


(いいぞ、今度こそ上手く行くはずだ・・・)


足元に細心の注意を払って進む俺の頭に確信めいた言葉が浮かんで来た。周囲には何の気配も無い。ドビーもこちらに気付かない。オリビアは準備万端。これのどこに失敗する要素が――




・・・バキ!!




静まり返った森の中に枝を踏み折る音が響き渡った。その音は思いの外大きく響き渡り、ドビーが瞬時に首をそちらに巡らせる。それは左の後方で・・・マロンか!?


思わず俺もそちらに目を凝らすと、何だかバタバタしているマロンの姿が目に入った。ついでに錯乱したマロンはそのまま近くの茂みに倒れ込み、先ほどより更に派手なバキバキと枝を折る音が連続して鳴りまくった・・・って何してんのぉぉおおおおお!?


「ガル・・・!」


ヤベ、ドビーが完璧に気付いた!?


「オリビアッ!!!」


やむを得ず、俺が大声を出してドビーの注意を引く事にする。今マロンが襲われたら一たまりも無いのだから仕方が無いが、一体どうしたってんだ?


「ゴアアアアアアアッ!!」


マロンから俺に目標をチェンジしてくれれば良かったのだが、残念ながら一瞬だけ俺を見て、ドビーはマロンに向かって走り出した。クソッ!! こっちに来いよ!!


「『穿て矢よ!! 『魔法のマジックアロー』!! 『追尾ホーミング』!!」


だがそこにオリビアの魔法が完成し、ドビーの四肢に突き刺さった。よし!! これで動きが・・・


「ギャオオオオッ!!!」


止まらねぇ!? 確かに効いちゃ居るが、ドビーは穴の開いた四肢から腐った血を撒き散らしながらマロンに迫っている。コイツ、さっきの奴よりタフなのか!?


オリビアの次の魔法を待っている暇は無い!! 俺は走り続けながらラギとシューティーを呼び出した。


「シューティ!! 俺をあそこまでブッ飛ばせ!! ラギ!! 不本意だが直接斬るぞ!!」


《了解!!》


《後で綺麗に拭くんじゃぞ!?》


少し前に召喚したシューティに飛び乗った俺は全力で前に体重を掛け、そしてシューティに全開で魔力を注ぐと、その場から俺の姿が掻き消える。一気に300キロのトップスピードに達した為だ。


「ぐううううっ!?」


キツイ。俺の常人離れしているはずの筋力を持ってしても浮き上がろうとするシューティの前輪を抑えるのが精一杯だ。だがこうでもしなけりゃ間に合わねぇんだから仕方ねぇ!!


が、現実は非情だ。俺とマロンを隔てる様に倒木があったりする程度には。シューティなら前輪を引っかければ空中ジャンプくらい出来るが、それでは高過ぎる。今は木の上で宇宙人を籠に入れて空中散歩している場合じゃねぇんだ!!


「シューティ!!! ブレーーーーーキッ!!!」


《はい!!》


タイヤを倒木に掛ける直前、俺は魔力の供給を切り、ブレーキを引き絞った。


・・・さて、ここで物理の時間だ。いや、そう構えなくてもいい。俺も物理の時間なんぞは起きてた試しがねぇんだから。


だが慣性の法則くらいは今時小学生でも知っている事だ。つまり、移動する物体にはその方向に進もうとする力が掛かっているって事さ。だから自動車運転では3つの「きゅう」を戒めているのだ。


ここで3つが分からない運転手は免許剥奪だ。正解は「急ブレーキ、急発進、急旋回(急ハンドル)」。そして俺はその問題に「急ブレーキ、急発進、・・・休憩!!」と答えて周囲の失笑を誘った事がある。おま、休まねぇのかよwwwと。今思い出しても赤面ものだ。だから俺は今でもチャリに乗ってんのさ。


閑話休題。


つまり今の状況は俺が急ブレーキを掛ける→シューティ減速→倒木にぶつかる→俺慣性で射出←イマココ!! って事だよ。妙に色々な事を考えられたのはきっと走馬灯ってヤツだと思うね。ハハハ。


捨て身の人間魚雷みてぇな事も、自分のタフさに自信があればこそだ。恐らく俺はこの後酷い目に遭うだろう。遭うだろうが、だからと言って人の命が掛かっているのに全力を尽くさないのは俺の流儀じゃねぇ。ああ、馬鹿野郎だな、俺は。


だがそれで拾える命もあるって事よ!!


「食らえぇぇぇえええッッ!!!」


俺はラギを横に突き出し、そのまま首を刈り取ろうとして、




「ウボァッ!!!」《ヘギャア!?》




特にラギは関係無くちょっとだけ目測を誤ってドビーの首に自分から直接突っ込んでブチ抜いた。


・・・ほーら、酷い目に遭っただろう?

超級覇王流星弾と名付けよう。

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