6話 空気読みなさいよーーーっ!!!
「そういえばまだ名前も聞いてなかったな。何て言う名前なんだ?」
俺は膨れた腹をさすりながら女の子のエルフに尋ねた。恩のある相手にいつまでも不確定人称も礼を欠くからな。
「私? 私はオリ・・・いえ、ま、間違えたわ!ぐ、グリューネ! そう! グリューネよ!!」
「そうか、ご馳走さん、オリなんとか」
「グリューネだって言ってるでしょ!?」
えー、だってそれ明らかに偽名じゃん? もうちょっと上手く隠してくれないと、俺鈍感系じゃないから気付いちゃうよ?
まぁ、隠したいと言うなら俺も深くは聞かねぇよ。俺は空気の読める男だからな。エアリーダーと呼んでくれ。
「分かった。ご馳走さん、グリューネ(仮)」
「空気読みなさいよーーーっ!!!」
ヤレヤレ、難しいお年頃なのかね。
「で、正直に言うが、実は俺はこの世界の人間じゃないんだ。お前、異世界への行き方とかって知らない?」
「何言ってんのアンタ・・・頭おかしいの?」
おいおい、信じがたいのは分かるが、もう少しオブラートに包んではどうかな? 俺が紳士だからいいようなものの、変態という名の紳士だったら今頃お前パンツ食われてるぞ?
「嘘をつくならもう少しまともな嘘をつくっての。こんな服だって、この世界には無いだろ?」
「そんなの作ったら出来るわよ。確かに変な奴だとは思うけど・・・」
うーむ、どうやったら信じるんだろうね? ・・・あ、そうだ。
「じゃあさ、この世界の絶対誰でも知ってる常識とか聞いてみてくれよ。それが分からなかったら証拠にならないか?」
咄嗟に思い付いたにしてはいいアイデアなんじゃないか?
「そんなの、嘘ついたら分からないじゃない」
「いやいや、出来ないとおかしい事とか、知らないとやばい事とか、色々あるだろ?」
「そんなの急に聞かれても・・・あ、そうだ!」
グリューネ(仮)は何か思い付いたらしい。よし、バッチコイ!!
「魔王の名前はなーんだ?」
・・・・・・それ、俺が唯一知ってるやつじゃねぇか・・・
「チェンジ」
「チェンジって何!?」
おっと、英語は通じないんだったな。
「魔王とかじゃ無くてさ・・・ホラ、えーっと・・・」
いかん、何も思い付かん。確かこういう世界に付き物の何かって無かったかな・・・
・・・あ、そうだ!
「アレだ、この世界にはステータスとか無いのか?」
あ、ステータスって英語か?通じるかな?
「何言ってるの? あるに決まってるじゃない?」
キターーーーー!!! それなら楽勝じゃねぇか!!
「それだよそれ!! それを見せればグリューネ(仮)も俺が異世界人だって分かるじゃねぇか!!」
「(仮)ってゆーーーなーーー!!! ・・・でも、今ので本当にアンタが異世界人なんだって分かったわ」
「へ? なんだ? この世界じゃ人にステータスを見せるのは駄目なのか?」
もしかしたら、相当恥ずかしい露出行為に当たるのかもしれない。
「高度な露出プレイが趣味なグリューネ(仮)が言うくらいなんだから、相当な露出レベルって事か・・・」
「き、聞こえてるわよ!!! ステータスは自分にしか見れないの!! 人のステータスを見るには、何か特殊なスキルや魔法、魔眼でも持ってないとダメなの!!」
ああ、そういう仕様か。まぁ、別に証明出来たんならいいか。
「そうか。じゃあどうやってステータスって開くんだ?」
「目を閉じて、魔力を流しながら『ステータス』って思うだけよ?」
「待った!!」
「何よ?」
何? 魔力? そんなもん流した事ねぇぞ! 力を入れても流れるのは爽やかな汗だけだぜ?
「・・・魔力ってどうやって流すんだ?」
「・・・・・・知らないわよ。ステータスを開けない人間なんて見た事無いもの」
・・・あー、先は長そうだな~・・・