63話 何その語尾!?
「話が違うだろうがああああああッ!!!」
「そんな事言ってる暇は無いでしょ!? くっ、『穿て矢よ!! 『魔法の矢』!!』
「こんなに居るなんて聞いてねぇですよ!!!」
俺とオリビア、マロンの3人は早速西の森へとやって来た。シューティの事をどうマロンに説明したものかと悩んだが、最新式の乗り物だとか何とか言って強引に言いくるめた。どうせ確かめる方法なんて無いんだから多少怪しまれても構いやしない。
むしろ実際に移動するに当たって、どこにマロンを乗せようかと悩んだが、後ろが駄目なら前に乗せるしか無く、マロン、俺、オリビアの順で何とか乗り込む事が出来た。
人間の足では何日も掛かるのかもしれないが、そこはシューティのトンデモ性能が火を吹いた。悪路隘路もなんのその、高性能なサスペンションは平地を走っているのとさほど遜色無いドライブを俺達に提供してくれた。
マロンも特に怖がる様子も無く、途中で失禁でもしてないかと座っている場所に手を滑り込ませたら頭突きを食らって顎を割られかけ、更にそれに気付いたオリビアにサンドイッチで後頭部に頭突きを食らって事故りかけた以外は順調な旅路と言っていいだろう。
だが罠とは油断した時こそ効果を発揮するのだ。幸先良く西の森に着いた途端に5メートルほどのドラゴンゾンビを見つけ、オリビアの魔法を食らってドラゴンゾンビが逃げ出した。当然もう倒せる確信があるソイツを俺達が逃がす道理が無いので追いかけてトドメを刺したのだが、ふと気付くと、倒したドラゴンゾンビの横にもう一体ドラゴンゾンビが居たのだ。
いや、正確には俺達がその時気付いたのが1体だっただけで、そこからはもうドラゴンゾンビによるドラゴンゾンビの為のドラゴンゾンビ祭りが盛大に開始された。・・・つまりはドラゴンゾンビがそこら中からウジャウジャ湧き出して来たのだ。いい加減もうドラゴンゾンビって言い疲れたのでこれからはドビーと呼ぶ事にする。ドビーがドゥバーって感じだな。
「クソッ、ラギ!!」
《はいなのじゃ! じゃが、リュウセイ、妾であやつに斬りつけるで無いぞ? あんなぐっちょんぐっちょんの奴は斬りたくないのじゃ!!》
「分かってるよ!! 俺だってあんなモン近くで斬りたくないわい!!」
そう言って俺はオリビアが押さえている隙にラギを後方に大きく振り被った。
「ブッ飛べドビー!!!」
「何その語尾!?」
すかさずオリビアがツッコミを入れて来たが後にしてくれ!!
「「「シギャァァァアアアッ!!!!!」」
ラギの剣閃を受けたドビー達が次々に吹き飛ばされて行く。だがその更に奥からは他のドビー達がまだまだ湧いて出て来ているのが遠目でも確認出来た。
「チッ!! 一端態勢を立て直す!! シューティ!」
《了解、離脱します!!》
距離が空いた隙にシューティを呼び出し、俺達は戦略的撤退を敢行した。・・・要は逃げたって事だよ。
ドラゴンゾンビって一々打つのが大変だからドビーです。こう書くと何となく最初の方に出て来る固有の雑魚モンスターみたいですね。