61話 だからついこんな事を言っちまった。
「ふあぁ・・・朝っぱらからうるせぇんですよ・・・」
「ん~・・・はぁ、良く寝たわ」
「お代わり!!」
その後俺達は起きて朝飯を食ってる訳だが、シレッとビッチ姉ちゃんが混ざってるのはもう心底どうでもいい。殆ど寝た気がしなくて俺は疲れてんだ、注意するなら他の誰かがやってくれ。俺は知らん。
「ところでマロン、お前さんどうすんだ? 何かアテでもあんのか?」
なし崩し的に昨日は俺の部屋に泊まったが、良く考えれば不用心極まりない話だ。俺はドワーフのロリボディに一片の興味も無いが、会った当日に異性の部屋に泊まるなんてのは普通は無しだろう。そのつもりだったんだろ? と言われても文句は言えんぜ? 一応大人らしいからな。
「・・・ねぇです。今日稼げなかったらまた野宿するです・・・」
・・・チッ。見た目がガキだってのは反則だな。見捨てたら俺が悪人みてぇじゃねぇか。
「・・・目的もアテも無いんなら俺達と来るか?」
だからついこんな事を言っちまった。
「えっ!?」
マロンは一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに顔を俯かせてしまった。
「・・・マロンはあんまし強くねぇです・・・お前らの足手纏いになるです・・・」
そんな事を言いながらフォークでサラダを突っつくマロンはどう見ても小学生にしか見えなかった。・・・コイツ、外見だけじゃ無く中身までお子様なのな。
「俺達にはこれ以上戦力なんざいらねぇよ。俺とオリビアが居りゃあ魔王だって倒して見せるさ。・・・っと、魔王はもう居ねぇんだったな」
その言葉を聞いてオリビアは嬉しそうにメシを頬張り、マロンはじーっと俺の目を見ている。・・・あんだよ、文句あんのかコラ。
「・・・お前、マロンに惚れたです?」
「断じて違う!!!」
何言ってんのコイツ? 何言ってんのコイツ!? 思春期特有の自意識過剰なのか!?
「じゃあ何でマロンを仲間にしようとするです? ・・・役立たずなのに・・・」
出たよ自己完結。勝手に思い込んで勝手に落ち込みやがる。俺の嫌いな思考法だ。
「役立たずかどうかなんてやってみなけりゃ分かんねぇだろうが。やってもいねぇのに出来ねぇって決めつける奴は俺は好かねえ。一人じゃ出来ない事だって他の誰かとなら出来るかもしれねぇじゃねぇか・・・って何で俺が朝からお前に説教せにゃならん!」
「でも・・・」
あーもー面倒臭い!! 傍若無人かと思ったらウジウジしやがって!!! 少しは俺の隣で口一杯に食い物を頬張ってるビッチ姉ちゃんを見習えってんだ!! コイツ今の所俺にメシをたかる以外の行動をしてないのにまるで悪びれねぇんだぞ!!!
「いいからしばらく俺達に付いて来い!! 何が出来るかなんざ俺は知らん!!」
「悪人顔なのに妙な所で甘いんだから・・・」
うるせーぞ、オリビア。
「・・・・・・・・・分かったです、そこまで言うなら付いて行ってやるです・・・」
言葉では憎たらしい事を言っているが、俯いたマロンの口元はもにゅもにょと緩みそうになっているので本心ではそこまで嫌じゃねぇんだろう。やれやれ、お子様の相手は苦労するぜ。
「フフフ、そこまで言われたからには私も付いて行かない訳には行かないわね!! お代わり!!!」
・・・いや、アンタには言ってないからな、ビッチ姉ちゃん?