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60話 人間はいつもそうやって妾達を騙すのじゃ!!

復活アピールの連日投稿。シリアスにならない話は書いていると落ち着きます。

目の前にタコが居る。急な事で何を言っているのか分からないだろうが俺にだって何故なのかは分かりはしない。そのタコは徐々に俺に顔を近付けて来て、後一秒後には俺の顔に密着するだろうという所で俺は布団から手を出してそのタコの顔を掴んだ。


「ブヒュ!? ふ、ふうへい(リュウセイ)!?」


「朝っぱらからナニをしてやがるキサマーッ!!」


タコ(ラギ)は目を泳がせながらタコ口のまま必死に言い訳を探しているようだった。が、悲しいかな、昔のファミコンにすら劣るラギの頭でそんな上手い言い訳がそうそう組み立てられるはずも無く、汗を滴らせつつフリーズしてしまった。ついでにタコ口からヨダレも垂れて来て俺の手に付きそうになったので俺は慌てて手を引っ込めた。


「うわっ、キタネッ!」


「き、汚く無いのじゃ!! 出る所に出ればきっといいお金に・・・」


そりゃ裁判やったら負けるって意味か?


「んなこたぁどーでもいいんだよ!! ラギ、もう一度だけ聞くぞ? お前、俺に何をしようとしやがった? 今回の事については怒らないから言って見ろ」


「う、嘘じゃ! そう言って本当の事を言っても結局リュウセイは妾に痛い事をするのじゃ!! 痛いのはイヤなのじゃ!!」


コイツ、ラギのクセに学習してやがる。が、ここで更に怒ってもラギは口を割らないだろう。だから俺は努めて優しい口調でラギに語り掛けてやった。


「男流星、一度口にした事を曲げるなんてこたぁしねぇよ。今回、何をしてたとしても正直に言えば水に流してやる。誓ってもいいぜ?」


「・・・ホントか? ホントにか? 例えばリュウセイに毒を盛ろうとしてたとしても許しくれるのか?」


例に毒殺をほのめかすのは如何かと思うが、俺は首を縦に振った。


「ああ、何であろうとだ。だから話せよな?」


それでもしばらくの間、ラギは迷っていたが、やがてポツリと話し出した。


「実は・・・その、な? ・・・く、口付けの練習をな?」


はぁ? と、思わずラギに詰め寄ろうかと思ったが、今回は何があっても怒らないと言ってしまったので、俺は静観を貫いた。 


「前に精神世界でした時には失敗して流血沙汰になってしまったからの。次こそは大人の口付けを実行すべく、シューティに口付けのやり方を習っていたのじゃ! こう、舌をレロレロって」


そう言ってマヌケ面で舌を動かすラギは親が見たら軽く落涙するレベルの残念さだったが、なるほど、シューティもグルだったか。バラされた瞬間、カタカタとシューティの指輪が震え出したので恐らく本当だと判断出来る。


「それで今日も俺にキスしようとしてたってワケか」


コイツ、俺の唇を全快魔法か何かだと思っている節があるな。ガシガシ頭を掻いたが、怒らないと言ったのだ。真相を聞けて良しとすべきだろう。


「・・・お、怒らないのかや?」


「怒らねぇよ、そういう約束だしな」


一息付いて意識してラギに笑顔を向けてやると、ラギも釣られてニヘラっと顔を溶け崩れさせた。単純なヤツ。ま、今回の件はこれでチャラだな。


「ったく、いつの間にか人型になれる様になってるしよ。・・・で、今回で何回目だったんだ? 今日が初めてってワケじゃねぇんだろ?」


正直に話すと何でも許されると思い込んだラギの口は軽い。


「まだ2回目なのじゃ!! 徐々にディープな口付けに移行して行って、最後には口付けしただけでお互いの心と心が通じ合う様に・・・ひぎっ!?」


そこまで聞いた俺は有無を言わさずラギの頭を掴んだ。驚いたラギが必死に俺の手を剥がそうとするが、非力なラギにそんな事は不可能だ。そして俺はもう一人の戦犯に呼び掛けた。


「シューティ、お前も人型になれるんだろ? こっちへ来い」


「・・・ま、マスター、これには深い訳が!! いえ、むしろ深い愛が・・・ヒッ!?」


観念したのか、瞬時に人型になったシューティの顔を俺はもう片方の手で掴んだ。


「り、リュウセイ!! 約束が違うのじゃ!! こ、今回は水に流すと言ったではないか!!」


「かかったなアホがッ!! 俺は今回の事は怒らないとは言ったが、前回と次回の分を怒らないとは言ってねぇよ!!」


「なっ!! ず、ズッコいのじゃ!! 人間はいつもそうやって妾達を騙すのじゃ!!」


「うるっせえ!! 頭に直接躾てやるから反省しやがれ!!」


「「ヒギィイイイイイイイイイイイ!!!!!」」


こうして無機物2人に朝早くからお仕置きをしてやった事で、俺はまた宿屋のオヤジに「朝からお盛んだな!!」と嬉しそうに話し掛けられるなんて事は別に語るまでも無い事だな。

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