54話 俺の恨み、晴らさせて貰ったぜ・・・
「くかー・・・・・・・・・ふぇぷしッ!」
ん・・・なんだ? ここどこだっけ?
俺は胡坐をかいたまま周囲を見渡したが、そこは薄暗い森みたいな場所だった。何で俺はこんな所で寝てるんだ? 背中がヤケに温かいな・・・って、思い出した!
「オリビア? おい、オリビア!?」
「ふぇっ!? な、何よリュウセイ?」
はぁぁぁ・・・良かった、こんな場所で寝ちまうなんてどうかしてるぜ。
「起きろ、こんな場所で野宿をする予定はねぇ。宿に帰ろうぜ?」
「う、うん・・・ごめんね」
「謝るなよ、次からまた頑張ればいいんだ。正直、俺もちょっと冒険者ってのを嘗めてた。また明日だ明日」
うっ、変な姿勢で寝てたから足がバキバキだ。いてて。
「今からなら夜になる前には街に――」
「きゃわーーーーーー!!!!!」
俺がそう言い終わる前に向こうの方から女の子の悲鳴が聞こえて来た。声の感じからして子供か?
「チッ! 行くぞオリビア!!」
「うん!」
俺とオリビアは瞬時に判断してその悲鳴の方へと駆け出した。間に合ってくれよ!!
「ひぐ!? や、やーーーーー!!!」
俺とオリビアがその場に着くと、そこにはサワリ草に絡まれている10歳くらいの小さい女の子が苦しげにもがいていた。三つ編みにした長い髪をブンブンと振り回して逃れようとしているが、あんな少女に引き千切れるほどサワリ草はヤワじゃない。なんとかしねぇと!
俺は二次災害を防ぐ為にオリビアにこの場に留まる様に指示を出し、そーっと女の子に近づいて行った。
「おーい、動くな、騒ぐな、余計に絡みつくぞー」
俺は小声で女の子に忠告したが、女の子はパニックになっていて聞いちゃいねえ。ひたすらわーきゃー叫んで更に深く絡みつかれている。
・・・仕方ない、助けるか。
せっかくなので、俺はサワリ草をもう少し確保する為に女の子の足元の根を掘り始めた。誰かが囮になってると採取も楽なんだよな。
「ちょっとアナタ!? な、何を見てやがるんですか!?」
女の子の声に頭を上げて見ると、持ち上げられた女の子のスカートの下から縞模様のパンツが俺の目に飛び込んで来たが、特に異常は無い。何だよ、ビックリさせやがって。
俺は興味を無くして掘削作業に戻った。
「ちょ、何事も無かった様に作業に戻らな・・・ひゃうぅぅぅん!!」
だから大声を出すなっての。動いて掘りにくいじゃねぇか。
結構大物なので、これだけで5キロ以上はありそうだ。へへ、最初に取ったのと合わせて銀貨8枚くらいはいけそうかな?
「こ、この・・・!? 人の下着を見てニヤニヤするなです!!」
「ぶおっ!?」
こ、このガキ、俺の鼻に蹴りをくれやがった!!
「へーんだ、ザマーミロです!!!」
・・・・・・・・・ぷちん。おっと、俺の堪忍袋の緒が切れたぜ。古典的な表現なのは勘弁な! 爺ちゃんの影響で俺の脳内表現はまだ昭和なんだよ。
とりあえず、この勝ち誇ったガキにゃーちとお仕置きをしなければならんだろう。これは大人の義務だ。俺がここで叱る事で将来この子は無用なトラブルを回避する事が出来るかもしれない。だから俺がやる事は未来に対する投資なのだ。
と、自分を騙せた所で俺は半分以上掘り起こしていた根を両手でしっかりと握り・・・
「あっ、りゅ、リュウセイ、だ、ダメ・・・!」
離れた場所でオリビアが何か言ったが、サワリ草にビビッて小声なので俺を止める事は出来なかった。えい。
ズボッ!
「はひ? ふ、へ、ホォォォォォォオオオーーーーゥッ!!!!!」
サワリ草はオリビアの時と同じ様に高速振動して女の子の口から奇声が飛び出した。武士の情けだ、目だけは閉じておいてやろう。
最後に俺がサワリ草の蔓をピンと指で爪弾くと、女の子かビクッと体を仰け反らせて動かなくなった。
決まった。気分は江戸の町で悪を裁く仕事をする三味線屋の気分だ・・・
俺はニヒルな笑みを浮かべて言った。
「俺の恨み、晴らさせて貰ったぜ・・・」
・・・何かゲスみたいなセリフになった気がしたが、きっと気のせいだと思う。
新キャラです。名前は次回に。