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51話 次出会ったらもう一発顔面に膝を入れてやろう。

「冒険者にはランクがあるみたいね」


「ああ、俺達は一番下のFだな」


冊子を読みながら俺とオリビアは街を歩いていた。そんなに複雑じゃないから助かるぜ。


冒険者にはA~Fまでの6段階がある様だ。その上は無いが、Aランクのトップ付近のヤツがSランクと呼ばれたりするらしい。


そして驚く事に、Fランクだからと言って上のランクの仕事を受けられないという事は無いそうだ。偉い人からの依頼は例外らしいが、基本的に依頼は早い者勝ちでFランクがAランクの依頼を受ける事も出来る。が、普通はしない。理由は簡単、死ぬからだ。


よく考えなくても分かるが、わざわざランク分けしてあるのはAとFでは危険度がケタ違いだからだ。自分の実力を弁えずに依頼を受けて死ぬ様なマヌケはサッサと死んで淘汰されちまえという事だ。厳しいが、当たり前でもあるな。


その点、俺とオリビアは恐らく戦闘能力的にはAランクなのは間違い無い。魔王と勇者を倒したんだからな。


俺の理想としてはFランクのままそこそこのランクの依頼をこなして目立たずに金を稼ぐ事だ。ランクアップすると買取価格が上がったりするみたいだが、上に行けば行くほど目立つ事になる。精々上げてもCランクくらいで止めておきたい。凄く頑張ればCランクは不可能じゃないってのが世間の認識らしい。


安全マージンを大きく取ってそこそこ稼いで暮らすってのが俺の目指す所だな。


「私とリュウセイならもっと有名になれるのに・・・」


「なっちゃ困るんだよ。見ただろ、あの手配書」


オリビアは不満そうだが、俺の考えは変わらない。悲鳴を聞き流しつつ依頼を漁っていると、その横に賞金首の手配書も張ってあったのだが、その真ん中の手配書を見て俺は肝を冷やしたのだ。


そこにはこんな事が書いてあった。




《指名手配:最重要》


名前:不明


種族:不明だが恐らく人間


罪状:勇者殺し


特徴:黒髪、黒目。髪は短い。目付きが悪い。口調が汚い。妙な服装をしている。非常に野蛮かつ好戦的。輪の二つ付いた鈍器を使用。


報酬:金貨500枚(生死問わず)


備考:勇者殺害の際に魔王までも殺害しており、少人数で挑むのは非常に危険と思われる。魔王城にて勇者の仲間と魔王の部下も一蹴して逃走中。


場合によっては組合、もしくは国への発見報告だけでも報酬の一部を支払う用意あり。


見かけた方は最寄りの組合、国家への連絡を優先されたし。




・・・いやー、ガチだなコレは。だって他の賞金首とか見ても賞金の額がケタ違いだもんよ。俺の次点のヤツで金貨50枚だ。罪状は・・・連続下着泥棒だった。凄いぜ、貴族だろうが王族だろうが気に入った下着があったら誰からでも盗むド変態野郎だ。これまでに1000人以上が被害に遭っていて、その賞金の累計でここまで膨れ上がったそうだ。


おっと、下着ドロはどうでもいい。問題は俺の手配書なのだが、肝心の似顔絵が酷い出来だった。「男は殺して女は犯すのが三度の飯より大好きだぜヒャッハァ!!」ってツラをした男の絵が書いてあるんだが、俺の面影が10%くらいしか残っていない。誰だよコレ。


下に似顔絵を描いたらしいヤツのサインがある。ジークか・・・これ、多分あのエルフだな。こんな所で恨みを晴らそうとは陰険なヤツだ。次出会ったらもう一発顔面に膝を入れてやろう。




「少なくとも、勇者と魔王が復活するでもしなけりゃ俺の手配が解ける事は無いだろうが、俺は帰るまで復活なんぞさせる気はねぇからな。というより、あれ以来出てこねぇし・・・」


俺が目を閉じてもシリューもセルフィも姿を現さない。もしかしたら本当に消滅したのかとも思ったが、セルフィもシリューも殺してないから消える事も無いだろうと思う。今は充電期間なのかもな。


「じゃ、今はお金を稼ぐ事を考えましょう。まずはサワリ草の採取よ。ちょっと取り方にコツがいるみたいだけど、買い取り額はかなり高いわ。1キロで銀貨1枚だって。今日だけで金貨1枚分くらい稼げるわね!」


「おお、それなら何日かやればすぐ金が貯まりそうだな!」


俺とオリビアが初心者丸出しの意見を言ってはしゃいでいるのを止める者は居なかった。そんな効率のいい仕事に裏が無いはずが無いという事を、俺とオリビアはこの時はまだ知る由も無かったのだ。

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