46話 ・・・宿変えてぇ・・・
「いよう!! 兄さん、昨日はゴキゲンだったみたいだな!! 宿中に兄さんのヤってる音が響いてたぜ!!!」
・・・違う、違うんだオヤジ。俺はそんな性的な戦いをしていたワケじゃないんだ。本当に戦ってたんだよ。それに人前でそんな事を言うのは止めてくれ。朝飯食いに来た人達が凄い目で俺を見てるじゃねぇか。って、殆ど昨日昼に居た奴らかよ。暇人か?
「特に最後に兄さんが叫んだ「尻か! お、俺の尻を狙ってるのか!?」ってセリフには俺も思わず手に汗を握ったもんさ! エルフの嬢ちゃんが最後の反撃に出たみたいだが、その様子だと返り討ちにしたんだな!! それでこそ俺が見込んだ男だぜ!!!」
・・・・・・違う、それも誤解だオヤジ! 俺の尻の穴を狙っていたのはオリビアで間違いは無いんだが、そういう性的な話じゃねぇんだよ!! ・・・あ、でも結果としてはそういう事なのか? ・・・もう俺には何が正しくて何が間違っているのか分からねぇよ・・・そして俺はどれだけ大声で暴れていたのだろうか。宿中? 勘弁してくれよ・・・
「どうだい? エルフの性欲は凄かっただろ?」
「あ、それは本当に凄かった。部屋に入ったらもう準備万端で焦ったぜ」
「何を人に言ってるのよッ!!!!!」
思わず素で返した俺の後頭部に赤い顔をしたオリビアの肘がめり込んだ。イテーな、そんな本気でど突くなよ。普通の人間なら失神してんぞ?
「さ、朝飯がまだだろ? 今から作るからテーブルで待っててくれや。今特製の朝飯を・・・」
「「普通のヤツで!」」
俺とオリビアがハモって普通のメシを求めたのは言うまでもない事だな。
オヤジは散々渋ったが、俺達はあくまでも普通のメシを頼み込んだ。高いメシをタダで食うのは気が引けるという事で押し通したが。
「ますます気に入ったぜ!! 必要な時にはいつでも言ってくれよ!! 俺はいつだって兄さんの味方だぜ!!」
俺はごく普通の裏の無いメシを食わせてくれる仲間が欲しいね。
しかし周囲の奴らは別の意見があるようだ。
「おい、アイツ、オヤジさんに気に入られるなんてスゲェな・・・」
「ああ・・・オヤジの料理にゃAクラスの冒険者達も一目置いてるってのに・・・未だにパーティ加入の要請が毎日あるくらいだからな。オヤジの料理の加護で命を拾った奴も一杯居るからよ」
「月金貨10枚の話をこの間は蹴ってたぜ? 「俺は宿屋でメシを食ってくれるヤツが好きなんだよ!」だってさ」
「料理人の鑑よね・・・おかわり!」
「お前まだ食うの!?」
そうか・・・オヤジの料理にはやはり何らかの力があるみたいだな。そしてビッチの姉ちゃんは食い過ぎだ。そりゃあ痩せないだろうよ。ここは回転寿司じゃねぇんだから皿を積むな。
「オリビア、ここは騒がしいからさっさと食って出ようぜ。今日は色々やらなくちゃいけねぇからな」
「そうね・・・私も恥ずかしいし・・・」
「色々ヤる!? やっぱり兄さんは一晩くらいじゃまだまだか!! へへっ、俺も腕が鳴るぜ!!」
オヤジ! どこから湧いて来やがる!! 迂闊に喋れねぇぞこの宿屋!!
俺とオリビアはやっぱり俺に特製メニューを食わせようとするオヤジと、何故か俺のテーブルの横で待機するビッチ姉ちゃんを説得するのに30分掛けたのだった。
・・・宿変えてぇ・・・