45話 《*おおっと*》
「・・・んぐ・・・?」
呼吸に困難を感じて眠りが浅くなり、俺は薄らと目を開いた。散らかった部屋にはすっかり高くなった太陽の光が燦々と差し込んでおり、俺の覚醒を促して来る。こういう日くらい休業してくれないもんかね?
「ふぁ・・・」
それにしても今の寝苦しさは何だったんだろうな? 誰かの残像が見えた気がしたが、オリビアも頭から布団を被って寝ているし、ラギやシューティの指輪も机の上に置かれたままだ。寝惚けたんだろうか?
「おーい、オリビア、起きてるか?」
俺はオリビアに声を掛けてみたがオリビアからの返事は無い。返事が無い、ただのオリビアのようだ。なんてな。
《マスター、おはようございます。良い朝ですね?》
《お、おはようなのじゃ!》
「ああ、おはようさん。ラギ、何でお前キョドってんの?」
《マスター、ラギは照れているのですよ。昨日のキスの事を丁度話していた所ですから》
「・・・・・・」
可及的速やかに忘れたいぜ、俺は。
「って言ってもな・・・アレはオリビアもチョロっと言ってたが生身の肉体とは違うんだろ? ならノーカンだノーカン」
キスする妄想みたいなもんさ。生身の俺は浮気なんかしてませんよ、晴子さん。
《ええ・・・本当に残念ですがその通りです。マスター、もう一度私と熱いヴェーゼをかわしませんか?》
「かわしませんわい。そもそも治療の為にした事だろうが。お前は舌まで入れやがって・・・」
《わ、妾だって次はもっと上手く出来るのじゃ!! その為に今もれんしゅ》
《*おおっと*》
《ヒギャァァァァァアアア!!!》
突然シューティが発熱して隣のラギを熱し始めた。ナニソレ、拷問ごっこ?
《ふぅ・・・済みません、精神世界から戻ってから制御が甘くて・・・ラギ、あまり余計な事を喋らないで?》
《あいぃ・・・》
仲いいなコイツら。それとそんな危険な指輪、俺付けたくないんだけど・・・
それはそうと、そろそろ動きださなければならないだろう。本当は2時間程度の睡眠じゃ疲れが抜けないから寝ていたいが、買い物もあるし金も稼がなければならない。調べ物だってまだなんだ。それに部屋の片づけもしないとだな・・・面倒くせぇ・・・
「俺一人じゃ手に余るな。・・・おい、オリビア。オリビア! オーリービーアーッ!!」
・・・微動だにしやがらねぇ・・・
「チッ、ホラ、起きろよっ」
俺はオリビアが被っている布団を力任せに引き剥がした。すると、中から真っ赤な顔をしたオリビアが転がり出て来る。お前、何してんの?
「ぷはっ! な、何するのよっ!!」
「いや・・・お前が何してんだ? 真っ赤じゃねぇか」
「わ、私は・・・そ、そう! 久しぶりのベットを満喫してたのよ! あー堪能したわー!」
オリビアは色んな業を抱えているらしいな。それと仁王立ちで汗を拭うのは今は止めておいた方がいいと思うぜ?
「あー・・・オリビア、言いにくいんだけどさ・・・」
「な、何よ? わ、私は何もしてないわよ!?」
「いや・・・とりあえずさ・・・スカート履けば?」
「えっ!?」
オリビアはパンイチで仁王立ちしていた。流石にこれだけ堂々としていると俺も指摘しがたいぜ・・・
「み、見ないでよっ!?」
残像を残してオリビアは再び布団の国へ帰って行った。と、思ったら手だけがニョキっと生えて何かを探していた。多分スカートを探してるんだろうな・・・冬の朝のOLみたいだ。
はぁ・・・今日も騒がしい一日になりそうだな・・・たまには嫌な予感くらい外れて欲しいもんだぜ。