43話 「ハピネスッ!?」
「うぐっ・・・我を倒しても・・・やがて第二、第三の我が・・・キサマの倒した我は・・・我の中で・・・一番の・・・小物よ・・・ふへへ」
・・・寝言は寝てから言ってるからある意味正しいんだろうが・・・コイツ分裂でも出来んの? その内2Pカラーとか3Pカラーのシリューとかが出て来たらどうすんだよ・・・
「おい、起きろ、小物魔王」
「あ、だ、ダメ・・・それは我がとっておいたおかず・・・むふぅ・・・」
魔王所帯染みてねぇ? いつも誰かと食卓囲んでんのか?
・・・ちょっと悪戯してみよう。あ、エロい意味じゃねぇぞ、念の為。
俺はシリューの耳元でボソボソと囁いた。
「ククク・・・貴様のおかずはこのリュウセイが頂いた。貴様はそこで指を加えて見ているがいいわ・・・」
するとシリューの顔が顰められ、手を伸ばして呻いた。
「あっ、ダメだよ! わ、私の大好物のナナイロドクガエルのから揚げが・・・ぐす」
・・・なんで俺にはちょいちょいナナイロドクガエルが絡んで来るんだろう・・・オリビアの露出並みに縁があるとしか思えない。・・・考えるのは止めておこう。
しっかしコイツ、口調が幼くなってんじゃん。こっちが素か?
「・・・おっと、遊んでる場合じゃねぇな。おい、シリュー!! 起きろっ!!!」
「・・・やだもん。から揚げとったリュウセイなんて知らないもん・・・」
お前実は起きてるだろ?
「・・・・・・てい」
俺は伸縮素材らしいビキニアーマーの肩紐をグイッと引っ張って放してみた。
パチンッ!
「ハウスッ!?」
肌に弾ける痛みでシリューの体がビクンと震えた。チッ、粘るつもりだな。そうはいくか!
次は両方いっぺんにやってやる。にゅいーーーーーん・・・てい。
パチンパチンッ!!
「オアフッ!?」
更にシリューの体がビクビクと跳ねた。
ほほう、オアフと来ましたか。へへ、何か面白くなって来たな!! んじゃあこの尻の紐でやったらどんな声を・・・
「・・・何してるの、リュウセイ・・・」
俺がシリューの尻に指を突っ込もうとした瞬間その声に振り向くと、ゴミを見る様な目でオリビアがすぐ後ろに立っていた。ラギとシューティは明後日の方向を見て気付かないフリをしている。た、助けろよお前ら!!
「ま、待て、オリビア。誤解・・・そう、誤解なんだよ! 俺はシリューを起こそうと・・・」
「嘘よ!!!!! さっきから体をまさぐって何かしてたじゃない!!! リュウセイは寝ている女の子に悪戯するのが大好きな変態ね!!! ド変態ね!!!!!」
「ちょ、ば、バカ! 俺はこんなチンチクリンに興味はねえ!!」
「じゃあ何でその子のお尻を触ってるのよ!!!」
・・・ん? おお、オリビアに止められても俺の探求心は止まらなかったみたいだ。無意識に手がシリューの尻を掴んでいる。でも俺が意識して触ったワケじゃねぇから無罪だな。てい。
パッチン!!
「ハピネスッ!?」
ハハハ、シリューも喜んでいるじゃないか。ハピネスだってさ。笑っちゃうよな?
「『穿て矢よ。『魔法の矢』『最大化』『追尾』『永続化』』」
返事として返って来たのは視界を埋め尽くす様な大量の魔法の矢だった。しかも最後に唱えた呪文のせいか途切れる事が無い。
対魔王勇者戦にすら使わなかった魔法を前に俺は必死こいて矢をかわし続けたのだった。
――ちなみに、極悪極まりない事に、その矢は全て俺の尻の穴を目指してホールインワンしようとして来た事だけは追記しておこう。後世にこの悲しみを伝える為に。