39話 ナイトメアバトル(前篇)
そして場面は突然のバトル回へと入るのです。疑似シリアス風で。
いつもより長いですよ。
「よく来たな、リュウセイ!」
「ここで会ったが百年目、これまでの卑猥な行為を反省させてやろう!」
・・・・・・アレ? なんでシリューとセルフィがここに居るんだ? 俺は確かオリビアに謝ってからベットに横になって・・・イカン、そこから記憶がねえぞ・・・
「待て待て、ここはどこだ? なんでお前らは復活してる? 生身で見ると一段と酷いなお前ら」
俺はとりあえず疑問に思った事を全部口に出してみた。最後の一言はこいつらを見たら自然と出て来ちまった。他意は無いと言っておこうか。
「お、おのれ!! 何度セルフィの胸を貶せば気が済むのだ!!」
「ちょ、シリュー! お前も含まれているに決まっているだろうが!!」
「何故我が含まれるのだ? セルフィより「大きい」我が」
「い、一度だけのマグレをいつまでも・・・」
まおゆう漫才とか新しいな。いや、小説サイトを探れば多分もう誰かがやっているだろう。人間、考える事なんてそうそう変わらないもんさ。それと、そういうのを団栗の背比べって言うんだぜ? 目糞鼻糞を笑うでもいいけど。
「おーい、俺の質問に答えろよ貧乳姉妹」
「「誰が貧乳姉妹だっ!!」」
息ピッタリじゃねぇか。もうコンビ組んで世界を慰問してろよ。いつの間にか名前で呼び合うほど親しくなってんだからさ。
「で、ここはどこだよ?」
「フン、ここは貴様の精神世界の中だ。我らもようやく精神に馴染んで来たのでな。貴様の精神を寝ている間に引っ張り込んだまでよ!」
「ここではあの妙な術は使えんぞ!! さぁ、一体どちらに協力するか今ここで決めて貰おうか!!」
こいつらまだ諦めて無かったのかよ。どこに行けば除霊して貰えるんだ? 教会で聖水でも飲めばいいのか? 是非大きな心と胸を持つシスターにやって頂きたいものだ。
「俺はどっちにも付かねぇよ。というよりさっさと元の世界に帰りたいんだ。俺が帰った後にいくらでも2人でタイマンでも何でもしたらいいだろうが」
「馬鹿め、復活する前に帰られたら我までそちらの世界に行ってしまうかもしれんではないか!」
「私の故郷はこの世界だ。私にはこの世界を救う崇高な使命がある! だからリュウセイを帰す訳にはいかん!」
うぜぇぇぇぇえええ!!! 勝手に連れて来て自分本位の事ばっかり言いやがって!!
「そもそもなんで俺がこの世界に連れて来られたかも分からねぇのに協力なんぞ出来るか!! オリビアが言うにはシリューの魔法が原因らしいじゃねぇか!!」
「ああ・・・エルフの娘め、余計な事を。・・・フン、確かに我の『召喚魔法』が原因だ。空より降る流星を召喚するはずだったのに、何故か貴様の様な目つきの悪い下男が召喚されてしまった。恐らく流星とリュウセイを取り違えたのだろうな。これで満足か?」
こ、この貧乳ロリがぁぁぁあああ!!! 反省する気も無いってか? 上等だよっ!!
「・・・ここでお前を退治すれば今度こそお前はこの世界から消えて無くなるかもな・・・」
俺の呟きにシリューの目が細められた。
「ほう・・・勇者でも無い、タダの人間の分際で我に挑むか? クックックッ、愚か、愚かなり人類!!」
「止めろリュウセイ!! こんなチビ助でも一応魔王だぞ!! キミでは太刀打ち出来ん!!」
「うるせえ!! 勝てなくても俺の自由の為だ!! 力の限り抗ってやる!!」
「魔王を倒すのは私だ!! 横取りするつもりなら痛い目にあって貰うぞ!!」
なっ、コイツ、俺に味方せずに魔王の味方をするつもりかよ!?
「何て自分勝手な奴らだ・・・」
「何とでも言うがいい。それともリュウセイ、貴様は戦う術を持っているのか? 魔法も無く、武器も無い貴様が我に勝てるか? ・・・安心しろ、殺しはしない。だが、貴様は我の傀儡になって貰おう。精々我の為に働かせてやろうではないか!! ハーッハッハッハッ!!」
「苦言は甘んじて受け入れよう。だが、私はここで諦める訳にはいかないのだ。私が勝ったらリュウセイ、キミの名は共に戦った勇士としてこの世界に記録しよう。安心して意識を手放すがいい!!」
くっ、絶体絶命ってやつか! 俺の意志はここで潰えてしまうのか・・・
・・・否だ!! 俺は絶対に地球に! 日本に!! 帰るんだぁぁぁああああ!!!
「晴子さん!! 俺に、俺に力を貸してくれ!! うぉぉぉぉおおおお!!!」
俺は悲壮な決意で握り拳を固めて2人に殴り掛かったが、セルフィは既に迎撃態勢を整えていた。
「さらば、リュウセイ!!」
その拳は俺の腹へと吸い込まれて行き、俺の視界は闇に落ちた。
「・・・ん?」
おっと、思わずビビッて目を瞑っちまった。予想以上に軽い衝撃で驚いたがな。
「な、私の拳が効いていないのかっ!?」
実はそうじゃないかと思っていたのだが、案の定セルフィの攻撃は俺には効かなかった。いや、正確には少しダメージはあったぜ? 10くらいな。
俺の中では毒>>>(越えられない壁)>>>セルフィって感じだな。むしろナナイロドクガエル>>>>>>>(越えられない壁)>>>>>>>セルフィ(笑)でもいい。
「残念だったな。お前達を倒したおかげで、俺もレベルアップしたんだよ。素手で俺にダメージを与えられると思わない方がいいぜ?」
ほんとは少し痛かったが、ここはハッタリをかますべき場面だ。「ん~? 今何かしたか?」って態度を崩しちゃいけねぇ。服のホコリでも払うフリをしておこう。パンパン。
「どけ、セルフィ!! いくらリュウセイが強くなっても魔法に耐性は無いはずだ!! 一撃で決めてやる!! 『万物の理を翻してここに奇跡を願う! 力を食らいて出でよ! 『魔炎召喚!』」
やべっ、あれは流石に俺でもかなりのダメージは避けられそうにねぇ!!
調子に乗った代償として黒い炎は俺を飲み込み、今度こそ俺の視界は闇に落ちた・・・。
「なんてな! そいつを待ってたぜぇぇぇぇえええ!!!」
「「何っ!!」」
俺に物理でダメージが通らないなら魔法に頼ると思ったぜ!
俺は熱さに耐えながら今シリューが唱えた魔法の呪文をそのまま唱え始めた。俺にだって魔法は使えるんだ!! 魔力の扱い方はオリビアに習ったんだからな!
「確か右脳から息を吐く感じで・・・『万物の理を翻してここに奇跡を願う! 力を食らいて出でよ! 『聖剣召喚!』』」
体から何かが抜けていく気配と共に、俺の前に光が集まり、やがてそれは12、3歳の少女の姿になった。
「・・・む、なんじゃここは?」
「ラギ・・・か?」
「ん? 主殿ではないか・・・って、何故妾はヒトガタになっておるのじゃ!? そ、それにはだ、裸では無いか!?」
どうやら無事に召喚出来たようだ。裸なのはなんでだろうな? まぁ、ロリの裸なんぞどうでもいい。俺が用があるのは人型のお前さんじゃ無いんでね。
「今魔王と勇者に襲われてピンチなんだ。とにかく剣になれ」
「言われなくてもこんな恰好ではいられないのじゃ!!」
ラギは真っ赤になって光り始めると、即座に聖剣の形態を取り戻した。よし、これで戦えるぜ!!
「チッ、だがダメージは隠せまい!!もう一度我の魔法で・・・」
「どらぁぁぁぁああっ!!」
「「!?」」
シリューが再び召喚魔法を唱えようとしたが、俺はラギから剣閃を放ってそれを阻害した。フン、お前が魔法を唱えるより俺が剣を振るう方が速いぜ!!
「クッ! 仕方ない、一端距離を取るぞ、シリュー!! 『我が背に宿れよ翼! 『飛翔翼』』!」
せっかく追いつめたと思ったら、セルフィが背中から光る羽を生やしてシリューを掴んで高速で飛んで逃げていった。チッ、ここで逃がすと厄介だ。もう一枚切り札を切らせて貰おう!
「『万物の理を翻してここに奇跡を願う! 力を食らいて出でよ! 『乗騎召喚!!』』」
俺が呪文を唱え終わると、再び俺の前に光が集まり、やがてそれは人の形を取り始めた。へへっ、今度はシューティか。コイツも人型になるんなら、是非裸の巨乳美女で頼むぜ!
やがて光の中からシューティが現れたが・・・何故かモビルスーツみたいなのが出て来た。
「何でだよ!!!」
俺は怒りでラギを思いっきり振り下ろした。それは遠くを飛ぶセルフィ達に当たりそうになったが、辛くも避けた様だ。
「ガガ・・・マスター、ワタシ、ヒトガタニナリマシタ。ヤクソクドオリ、セイコウシマショウ!」
「しかもまた機械みたいな合成音声になってんじゃねーか!! そんなモンを人型とは言わん!!」
俺はラギの剣の腹でシューティの頭を叩いた。すると頭部にヒビが入り、それが砕け散ると中からメガネを掛けた秘書風のお姉さんが出て来た。ん~~~~惜しい!! 体が機械じゃなければイケたのに!! メー〇ルーーーー!!! 生身の体を返してくれーーー!!!
「・・・はっ、そうじゃねえ!! シューティ、お前も早く元に戻れ!! 俺に楯突いた奴らをブッ飛ばすぞ!!」
「了解です、マスター!!」
ヘルメット? が割れたら普通に喋れる様になったみたいだ。良かったー。
「さ・・・いっくぜぇぇぇっぇええええ!!!!!」
俺は素早くシューティに跨ると、ラギを片手にセルフィとシリューを追い始めたのだった。