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37話 ありがとう爺ちゃん!

「よっと」


再び俺は雨樋を伝って宿屋の中に入っていった。うーん、まるで本職の泥棒並みに身が軽いな。落ちる気配をまるで感じないぜ。


「・・・っ・・・リュウ・・・め・・・」


ポケットからカギを取り出して自分の部屋の前まで来た俺の耳にオリビアの声が微かに聞こえて来た。多少時間も経ってるし大丈夫だよな?


俺がそう思って鍵穴にカギを差し込んでグルっと回し、部屋の中に入ると・・・


「えっ!?」


「えっ!?」


オリビアが・・・その・・・手が下腹部に伸びていて、もう片方の手は胸を揉んでいて・・・いわゆるナニをしている所に突撃しちまったらしい。当然服なんか着ちゃいない。


入ってみて気付いたが、部屋の中に女の匂いが充満している。うわ~・・・リアル・・・


いや、そうじゃねぇ! 思わず現実逃避しちまった!!


「わ、ワリィ!!」


俺は固まるオリビアをそのままに高速で身を翻すとドアを後ろ手にバタンと閉めた。直後、




「キャァァァァァァァァアアアアア!!!!!!!!!!」




部屋の中からオリビアの大絶叫が聞こえて来た。


オリビア、その気持ちはよく分かるぞ。俺も中二の頃、従妹の九蘭くらんに部屋突撃された時に同じ悲鳴を上げた経験があるからな。その時は相手も同じ悲鳴を上げたが。おかげで俺は若さが暴走して従妹を襲おうとした鬼畜野郎だと家族に認識されかけたもんだ。


そんな俺を庇ったのは爺ちゃんだった。


「やめんかお前達! 流星だって悪気があった訳じゃないんじゃ!」


俺はその時爺ちゃんに対する認識を改めたね。普段はアホだと思っていた爺ちゃんだが、いざとなれば俺の味方で居てくれるんだ! ってさ。


「流星は無垢な従妹にちょっとイタズラして新しい刺激を開拓したかっただけなんじゃ! 儂にも経験があるわい。そうじゃろ、流星?」


俺はその時爺ちゃんに対する認識を改めたね。普段はアホだと思っていた爺ちゃんだが、もう手遅れだったんだなってさ。


その後俺と爺ちゃんの殴り合いを経て、家族会議からオカンと婆ちゃんによる爺ちゃんの追及会議へとシームレスに移行し、俺は部屋の隅で九蘭に謝り、九蘭も俺に勝手に部屋に入った事を謝って事なきを得た。最初からこれで済むんなら家族会議なんていらなかったよな?


今にして思えば、爺ちゃんは自分に注目を集める発言をする事で俺を助けてくれたのかもしれないと最近では思い始めた。捨てられたら子犬みたいな目で俺を見ていたのも爺ちゃん一流の演技だったんだろう。ありがとう爺ちゃん!


後ろから聞こえるオリビアの悲鳴を聞き流しながら、俺は過去に現実逃避を続けたのだった。

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