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31話 お前は自分のメシがあるだろうが!!

「よお、兄さん。どうしたんだい?」


「早速メシを食わせて貰おうと思ってな。食えるか?」


「おっ!! あいよ、テーブルで待ってな!!」


宿のオヤジは何故かハイテンションで奥の厨房に入っていった。何なんだろうな、あのオヤジは。


宿の食堂に行くと丁度昼に近い時間のせいか、テーブルも8割方埋まっていた。流石異世界、人間じゃない種族もちらほら居るな。周囲をチラ見しながら、俺とオリビアは奥の方にある2人がけのテーブルを見つけたのでそこに腰を下ろした。


「ん、メニュー・・・献立表が無いな」


俺は英語だと伝わらないかもしれないので日本語で言った。でも俺は日本語を話してるつもりは無いけど、きっと異世界の言葉になってるんだろうな。どういう原理だか知らんが、便利なのはいい事だ。


「それはそうでしょ。こういう場所の献立は基本的に固定よ?」


ああ、ランチメニューってヤツだな。そういや俺達の周りにいる奴等も皆同じ物食ってるもんな。定食屋とは違うのか。


それでもこれだけ客を呼べるこの宿のオヤジの腕は確かなんだろう。ちょっと楽しみになって来たぜ。


他所のテーブルを見るに、パンと野菜と肉が入ったスープ、それとサラダみたいなのが付いている。よく食う方の俺には少々ボリュームが足りないが、中々期待出来そうな見た目と匂いがするな。


「あいよ、兄さん待たせたな!!」


残念ながら可愛いウェイトレスさんが給仕してくれるのでは無く、相変わらず何が楽しいのか分からんがテンションが上がっているオヤジが笑顔でメシを持って来た。


「おし、じゃあいただきま・・・アレ?」


「どうしたのよ、リュウセイ? ・・・あら?」


俺とオリビアは同時に食卓に目が釘付けになった。オリビアのメシは他のランチメニューと変わらないんだが、俺のメシだけが何故か妙に豪華なのだ。


何かのステーキにオリビアの物とは若干匂いの異なるスープ。サラダらしき物には赤い粒が振り掛けてある。パンにはハチミツの様な物が掛かっているし、おまけに頼んでもいない黄緑色の飲み物まで付いて来た。


周囲の客も俺の食事を目を丸くしてみている事から、この宿でよく出る食事ってワケじゃないらしいが・・・


「・・・オヤジ、俺はこんなの頼んでないぞ?」


「へへっ、気にするなよ兄さん! これはウチの宿から兄さんへのサービスだ! ・・・これ食って、今晩は頑張るんだぜ。エルフは普段は澄ましちゃいるが、夜は激しいからな」


・・・昼から強精メニューとかこのオヤジ頭腐ってんのかな・・・


「俺も若い頃は娼館のエルフにゃ散々絞られたからなぁ・・・負けるなよ、兄さん。勝つコツは回数と・・・根性だぜ!」


オヤジは握り拳を俺の胸にトンと当てた。そんなカウンターの極意みたいな事を言われても俺は知らん。それに結局最後は精神論じゃねぇか。


「オヤジ~、常連の俺等にもソレくれよ。凄え美味そうじゃん」


「私も食べたい! 夜食べると太っちゃうんだもん」


「ダメダメ、これはこの勇気ある兄さんが最後まで戦う為の戦闘食なんだ。食いたいなら銀貨7枚だぜ?」


オヤジの言葉に聞き耳を立てていた連中が軒並み噴き出した。なんだよ、コイツ等訓練された芸人集団か?


「ちょ、正気かオヤジ!? 俺達の食ってるメシの100倍以上もするじゃねぇか!!」


「当たり前だろうが。オークのステーキにナガラの実を加えたスープ、ナナイロドクガエルの卵入りのサラダとハインフルの蜜を掛けたパン。飲み物はママイの果実を摩り下ろして濾したもんだ。どれも単品で銀貨2枚は下らないシロモノだぜ? 惜しむらくは、ドラゴンの食材が無い事だが、そこは我慢して貰うしかないな」


おい、また出たぞ、ナナイロドクガエル。しかも今度は食わされそうだ。何で俺の周囲には俺に毒を盛ろうとするヤツばかりなんだろうな・・・


俺がげんなりしているのと裏腹に、周囲の奴等は俺の食事を涎でも垂らしそうになってガン見していた。実際、さっきオヤジにねだってた女は既に垂らしている。おい、人のテーブルに何すんだよ。


浅ましい欲望の視線にうんざりして俺はオリビアに視線を移した。おいオリビア、ここは一発、ガーンと言ってやれ――


「もぐもぐもぐもぐもぐ・・・・・・ハッ、り、リュウセイ!!」


――そこには横から俺のメシを盗み食いする育ちの悪い長耳貧乳娘がいらっしゃった。お前は自分のメシがあるだろうが!!

ご飯の値段の倍率が違っていたので直しました。


普通のご飯の値段は銅貨5枚でリュウセイの特性(特精)メニューは銀貨7枚。


通貨の単位は詳細に出ていませんが、大銅貨を間に挟んでいるので100倍以上が正解です。


銅貨1枚100円として、普通のランチが500円だとすると、リュウセイのご飯は70000円です。高級フレンチ並みでした。

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