28話 義理と人情は大切にしろって爺ちゃんが言ってたしな。
「上手くいったわねリュウセイ、アンタ演技も出来る・・・ってな、何よ!?」
俺は無言でオリビアを路地に連れて行き人目から隠すと、左手でアイアンクローをかましてやった。
「ふぎゃ!? ちょ、痛、や、熱っ!! 熱い熱い熱いーーーー!!!」
《・・・何か言い残す事はありますかこの長耳糞ビッチ。あるなら言いなさい。誰にも伝えずに聞き流してあげます。体はバラバラの挽き肉にして街道に放置してあげましょう。物好きな犬が綺麗に掃除してくれるかもしれませんね? 覚悟はいいですかいいですね?》
・・・シューティのこういう流暢な毒セリフはどこで覚えたんだろうな? おかげで俺の頭が少し冷えたよ。でもアイアンクローは止めないよ?
「ごめ、ごめんなさいーーーっ!! ちょっと調子に乗りましたーーーーっ!! あついぃぃいいい!!!」
オリビアが俺の左手を掴んで本気で謝って来たので、俺も手を離した。フン、少しは反省したか?
「うぅ~~~~~、おでこがヒリヒリする・・・」
バカ野郎、俺なんて生命力をまた200も削られたんだぞ? なんで一度も戦ってないのに俺の生命力はどんどん減っていくんだよ。普通の人間ならここまでで余裕で10回くらい死んでるぞ?
「おい、シューティ、お前もいい加減落ち着け、熱いんだよ!」
《・・・・・・マスターがそういうなら・・・オリビア、2度目はありませんよ?》
そうシューティが言うと、発熱していた指輪が常温に戻った。全く、闇属性の上呪いの装備とか止めてくれ。俺の装備品そんなんばっかだな。
「で、これからどうするんだ、オリビア?」
「いたた・・・えっとね、まずは宿屋を取りましょ。それから街に出て図書館なり資料館なりに行けばいいわ」
おでこをさすりながらオリビアが答えた。そういや金ってどのくらいあるんだろうな?
「オリビア、お前って金はどのくらい持ってんの?」
「え? そうね・・・銀貨が8枚に、大銅貨が5枚、銅貨が・・・24枚ね。私も森で暮らしてたから、たまに採った山菜や狩った獣を街に売りに来るくらいでそんなにお金は持って無いの」
「そうか・・・」
よく考えるまでも無く貨幣価値が分からん。銀貨一枚が1万円くらいか? 宿屋で一泊いくらか聞けば分かるかな?
俺の財布はしばらくはオリビア頼みだろう。一応財布はあるが、ここで日本円が使えるとは思えない。それでも諭吉の顔を見ると安心するのは、きっと同じ故郷を持つ同志だからだな。頑張ろうぜ、諭吉。
「なるべく安い宿がいいわね。さ、リュウセイ、行きましょう?」
・・・こいつはやっぱり善人だな。いずれ何らかの形で返さなければならないだろう。義理と人情は大切にしろって爺ちゃんが言ってたしな。
俺が空を見上げると爺ちゃんが笑顔で親指を人差し指と中指の間に突っ込んでる映像が流れた気がした。ハハハ、爺ちゃん、指間違ってるぜ?
そんなこんなで、俺とオリビアは無事に街に入る事が出来たのだった。